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国際会計基準(IFRS)がやってくる。 連載第16回
「『包括利益』の開示はどのような影響をもたらすのか?」

vol.16

以前(連載第7回)、『包括利益』の概念について触れたことがありましたが、
2011年3月期より、連結ベースで日本の会計基準においても、その『包括利益』の開示が
始まるにあたり、もう一度この『包括利益の導入』によって発生する影響について、
もう少し具体的な例を用いて考えてみたいと思います。
(コラムバックナンバーはこちら)

以前にお話したとおり、『包括利益』とは今まで『利益』の中に表現されていなかった
『(時価ベースでの)含み益』の概念を加えることで、その企業が将来的にいったいどれほどの
キャッシュを生み出すことができるのか?という点を明確にしましょう、という考え方です。

IFRSにおいては、この概念を踏襲した『包括利益計算書』と呼ばれる財務諸表を開示する決まりですが、
実は包括利益の導入は収益認識の変更等と共に、IFRS適用において非常に大きな影響をもたらす
変化だと言われています。

では、なぜこの包括利益の導入が大きな影響があるのでしょうか?

例えば、IFRSにおいては『のれん』は非償却、日本基準では償却対象ですが、
M&Aなどが多い企業においては、仮に本業での利益が5億円、のれんの償却費が6億あれば、
現行の会計基準では利益は1億のマイナスになってしまいますが、
IFRSではのれんが非償却になり、加えて買収先の企業の評価を加味した包括利益が含まれるため、
5億円以上の利益が出ているように開示されることになります。

つまり、IFRS適用にあたっては、現行の財務諸表の数値からIFRSベースに
うまく数字を置き換えることができた、ということが重要なのでなく、
上述の例のように、赤字か?黒字か?というほど『開示数値の見え方に大きな変化がある』
というポイントを、現時点でしっかり見極めたうえで、経営方針を定めなければなりません。

言い換えれば、IFRSベースになるだけで開示する数値が変わるということであり、
それはまさに市場においてその企業を評価する目線が変わるということでもあるのです。

これは、今まで『PERS(一株あたりの利益)』のようなひとつの投資基準が変わる
可能性があることを意味しており、例えば包括利益の導入によって数値が好転し、
株価に割安感などが出れば当該企業の株価に対しても
多大に影響する、なんていう状況は十分に考えられるでしょう。

逆に言えば、市場での評価においてIFRSベースの開示をうまく味方にすることもできる、ということなのです。
(事実、EUの国々では実際にIFRSへの積極対応で大きく資金を集めることができたという事例もあります。)

自社にとってIFRSを適用することで、どの程度の影響が出るのかを逐一分析していくことではなく、
最終的に数字を開示した際、その数値が投資家に対してどのように映るのかをしっかりと把握したうえで
どのようなIFRS準備を行っていくべきなのか、何よりもまず先に実施すべき時期が来ているのではないでしょうか?

次号もIFRSに関するコラムを掲載予定です。

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