jinji 2019.02.07 人事「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」を読み解く――実践のための7つのアクション

少子高齢化による労働力不足、企業活動のグローバル化などを背景に、多様な人材を活用しようという「ダイバーシティ経営」が注目されています。経済産業省が策定した「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」を参考に、ダイバーシティ経営の重要性、実現のためのアクションを紹介していきます。

多様な人材の能力を生かし企業力を高める「ダイバーシティ経営」

ダイバーシティとは、多様な人材を積極的に活用しようという考え方のことです。かつては、女性、高齢者、障がい者、外国人などの就業機会拡大を目指す動きの中で使われることが多かったダイバーシティという言葉ですが、今日では、多様な人材を広く受け入れることで、有能な人材の確保、イノベーションの創出など、企業競争力を高めるために欠かせない方策という考え方が浸透してきています。

今日ダイバーシティ経営が求められている背景として、以下のようなことが挙げられます。

一つは、企業活動がさまざまな面でグローバル化していることです。多くの業種において、日本国内だけではなく海外での生産・販売を視野に入れなければならない時代となっており、グローバル化を受け入れざるを得ないという状況になっています。そうした中、ビジネスで価値を生み出し続けるには、国籍や宗教、性別、文化的な背景の異なるさまざまな人材を受け入れ、それぞれの長所を生かす必要があるのです。

また、異質、異能な人材による創発、協働を通じたイノベーションの創出が求められていること、人口減少や高齢化といった人口動態的な要因も背景として挙げられます。

 

経済産業省の「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」

経済産業省でも、2017年3月、競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方を示した「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」を策定しました。

その後、ジェンダーや国際性の面を含めた多様性の確保が重要という内容が含まれるコーポレートガバナンス・コードの改訂、労働市場における企業のダイバーシティ経営への期待の拡大、資本市場におけるESG投融資(環境問題の解決、社会貢献に資するESG債などへの投融資のこと)の加速など、取りまく環境に動きが出てきました。一方で、ダイバーシティに対する取り組みが、形式的、表面的な対応になりつつあることを懸念する声も聞こえるようになってきました。

そこで経済産業省は、ダイバーシティを持続的に経営上の成果を生み出せる新たなステージへと引き上げることが急務と判断。2018年6月に、「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン改訂版」※1を発表しました。ここでは、「もはや、ダイバーシティは本当に必要なのかという議論に時間を費やすのではなく、一刻も早く具体的な行動を起こし、実践フェーズへと移行すべき」との強い問題意識が表明されています。

実践のための7つのアクション

では、ダイバーシティ経営を実践するために、どのようなことが必要なのでしょうか。ダイバーシティ2.0行動ガイドライン改訂版では、実践のための具体的なアクションとして以下の7つを挙げ、現場だけではなく、経営陣、外部が一体となった取り組みが必要だとしています。

  1. 経営戦略への組み込み
    経営トップが、ダイバーシティが経営戦略に不可欠であることを示す「ダイバーシティ・ポリシー」を明確にし、KPIやロードマップを策定するとともに、自らの責任で取り組みをリードする。

  2. 推進体制の構築
    ダイバーシティの取り組みを全社的、継続的に進めるために、推進体制を構築し、経営トップが実行に責任を持つ。

  3. ガバナンスの改革
    構成員のジェンダーや国際性の面を含む多様性の確保により取締役会の監督機能を高め、取締役会がダイバーシティ経営の取り組みを適切に監督する。

  4. 全社的な環境・ルールの整備
    属性に関わらず活躍できる人事制度の見直し、働き方改革を実行する。

  5. 管理職の行動・意識改革
    従業員の多様性を活かせるマネージャーを育成する。

  6. 従業員の行動・意識改革
    多様なキャリアパスを構築し、従業員一人ひとりが自律的に行動できるよう、キャリアオーナーシップを育成する。

  7. 労働市場・資本市場への情報開示と対話
    一貫した人材戦略を策定、実行し、その内容や成果を効果的に労働市場に発信する。投資家に対して企業価値向上につながるダイバーシティの方針・取り組みを適切な媒体を通じ積極的に発信し、対話を行う。
    1. 図1:ダイバーシティ経営実践のための7つのアクション

      LGBTへの対応も急務

      ここにきて、ダイバーシティの1つの側面として注目されているのが、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字からつけた総称)、いわゆる性的マイノリティへの対応です。

      一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)では2017年5月、「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」※2を公表しました。これは、あらゆる人材を組織に迎え入れる「ダイバーシティ」が求められるだけでなく、あらゆる人材がその能力を最大限発揮でき、やりがいを感じられるようにする「インクルージョン」(包摂)が求められる、とするものです。

      この中で、LGBTに対して焦点があてられ、国内外における状況や取り組み状況などが紹介されており、考えられる具体的な取り組みとして、以下のことを挙げています。

      ・性的指向・性的自認等に基づくハラスメントや差別の禁止を、社内規定等に具体的に明記
      ・社内の人事・福利厚生制度の改定
      ・社内セミナー等の開催
      ・社内相談窓口の設置
      ・トイレなど、ハード面での職場環境の整備
      ・採用活動におけるLGBTへの配慮
      ・LGBTに配慮した商品・サービスの開発
      ・社外イベントへの協力、NPO法人等との連携

      企業活動のグローバル化、生産人口の減少、イノベーションの創出などの観点から、ダイバーシティ経営はますますその重要性を増していきます。しかし、一朝一夕で実現できるものではありません。経営トップのリーダーシップのもとで持続的に取り組んでいくべき、重要な経営課題の一つと言えるでしょう。

      (参考資料)
      ※1:経済産業省「ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン」(2018年6月)
      http://www.meti.go.jp/press/2018/06/20180608001/20180608001-2.pdf
      ※2:一般社団法人 日本経済団体連合会「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」(2017年5月)
      http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/039_honbun.pdf

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