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コラム

2019.09.27 ♦人事給与♦

社労士が解説! 働き方改革時代の労務管理①
年次有給休暇5日の取得義務化に向けた取り組み

働き方改革関連法により、年次有給休暇5日の取得が義務付けられました。とはいえ、従業員が思うように年休を消化してくれないという企業も多いのではないでしょうか。なぜ年休消化が進まないのか、従業員に確実に年休取得してもらうにはどんな取り組みが必要なのかなど、労務管理のポイントを解説します。(多田国際社会保険労務士事務所 所長 多田智子)

年次有給休暇5日の取得義務化の背景

2019年4月から施行された働き方改革関連法により、「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられました。使用者は10日以上の年次有給休暇(年休)を付与しているすべての労働者に対し、付与した日から1年以内に取得時季を指定して5日の年休を取得させなければなりません。

旅行会社であるエクスペディア社が毎年実施している世界19カ国の有給休暇国際比較調査※1によると、2018年の日本の有給取得率は50%と3年連続で最下位でした。最下位から2位のオーストラリアの取得率は70%なので、大差で最下位記録が更新されてしまったことになります。

日本の年休消化が進まない背景には、年休取得に対する罪悪感や、慢性的な人手不足、緊急時のために一定日数の年休を残しておきたいなど、日本特有の心理が働いていると言われています。

年休取得率が向上すれば、労働者が過重労働から解放され健康が維持されるという側面のほかにも、旅行などのレジャー産業が潤うなど経済的に多くのメリットがあると言われており、日本のサラリーマンがすべての年休を使い切った場合、12兆円もの経済波及効果と150万人の雇用創出が期待できるとのことでした。

また年休消化100%を誇るドイツの生産性が日本の約1.5倍、経済成長率もこの10年間ほぼ日本を上回っていることを考えれば、日本人が年休を消化することをためらう理由はマクロ経済的には全く見当たらないと言ってよさそうです。

※1 https://welove.expedia.co.jp/infographics/holiday-deprivation2018/

取得義務化は年次有給休暇制度の大転換

年休を取得する権利(年休権)は6カ月以上勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に労基法上当然に発生する権利ですが、有給休暇を実際に取得するためには、さらに取得時季を具体的に特定することが必要です(時季指定権)。

時季指定権はもともと労働者が有している権利で、使用者は労働者が指定した時季に有給休暇を取得させることが必要なのですが、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、他の時季に変更して有給休暇を取得させることができます(時季変更権)。裏を返せば、今回の法改正までは労働者からの年休申請がない限り、使用者には年休を取得させなければならない義務はなかったということになります。

ところが、さまざまな事情から労働者が年休取得に消極的な日本では、このような法的構成をとったままでは年休消化率を上げることは難しいと政府が判断したのでしょう。1987年の法改正では、5日を除く年休について労使協定を締結することにより使用者に時季指定権を付与できる仕組み(計画付与)を導入しました。今般の法改正はそれをさらに進めて、年休のうち5日の部分の時季指定権を使用者に移し替えた上で、強制的に取得させる義務を課しました。そういった意味で今回の年休取得義務化は、年休に関する考え方を根底から覆す方針転換だと言えます。

なお、使用者が年休の時季指定をするためには、就業規則に対象となる労働者の範囲と時季指定の方法等を記載することが必要です。

年次有給休暇の時季指定に関する権利義務
図:年次有給休暇の時季指定に関する権利義務

確実な年休取得のための方法

義務化された年5日の年休をすべての対象労働者に確実に取得してもらうため、厚生労働省では以下の3つの方法を紹介しています。

① 基準日に年休取得計画表を作成する
年度別や四半期別、月別などの期間で基準日を定め、その基準日に年休の取得計画を立ててもらい、その予定に沿って消化を進める方法です。職場内での取得時季の調整を行いやすいというメリットがあります。

② 使用者から一定の時季に個別に時季指定を行う
基準日から一定期間を経過したタイミングで年休の取得日数が5日未満となっている労働者に対し、事情を聴いた上で個別に使用者が時季指定する方法です。

③ 計画付与制度を活用する
労使協定を締結し計画的に年休を付与するという計画付与の仕組は、今回義務化された5日の年休取得にも利用することができます。計画付与には事業場全体の休業による一斉付与、班別の交代制付与、年次有給休暇付与計画表による個人別付与の3つの方式がありますが、いずれもその具体的な方法を就業規則と労使協定で定める必要があります。計画付与制度は導入初年度の手続きは大変ですが、一度制度を作ってしまえば毎年確実に年休消化できる仕組だといえそうです。

計画付与の労使協定記載例

上記の他にも、例えば夏季や年末年始の時季に一斉に連続休暇を設定する大型連休化方式や、連休の合間に休暇日を定めるブリッジホリデー制度、業務の閑散期に計画付与日を設けその日に年休を取得させる方法、労働者個人の記念日をアニバーサリーホリデーとして年休を取得させるなどさまざまな方法が考えられます。労使で職場の勤務形態や働き方に合った方法を考え、計画付与の仕組みを利用して年休を取得しやすい職場環境を整備いただくことをお勧めします。

効率的な年休管理の必要性

今回の法改正で年5日の年休の時季指定が使用者の義務となったことに伴い、使用者には年休取得に関する労働者の希望を事前聴取したり、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を備えた上で3年間保存する義務が生じました。こうした義務を履行するためには、労働者ごとのスケジュール管理や正確な年休残日数の把握が必要となり、労務管理の手間が大幅に増すことが予想されます。法改正により煩雑化した労務管理についてはITツールを有効活用するなどして効率化し、管理監督者自らも進んで年休を取得できるように環境を整備することが、職場全体の年休取得促進には近道かもしれません。

働き方改革時代の労務管理

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