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コラム

2019.11.01 ♦働き方改革♦

社労士が解説! 働き方改革時代の労務管理②
勤務間インターバル制度構築に向けての取り組み

働き方改革関連法に基づき「労働時間等設定改善法」が改正され、前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保するという「勤務間インターバル」を設けることが事業主の努力義務として規定されました。今回は、勤務間インターバル制度設計のポイント、制度導入に向けた手続きについて考えてみます。(多田国際社会保険労務士事務所 所長 多田智子)

勤務間インターバル制度とは

日本の労働時間規制は、従来残業代の支払いが最大の関心で、「労働時間の長さに応じて報酬が高くなるという仕組みでは生産性が向上しない」という観点から法改正をしようとしてきました。ところが昨今のメンタル疾患による労災認定の急増や過労死問題などを契機として、労働時間規制はお金の問題と切り離され、過重労働による健康障害防止へと焦点が移り、今回の働き方改革関連法によって1カ月、および1年単位で労働時間の上限を法定化する、いわゆる総量規制が導入されるに至りました。

労働時間規制を順守するために、これまで各企業は変形労働時間制やフレックスタイム制、裁量労働制などを導入し、企業実態に即した制度構築に取り組んできました。しかし、業務の繁閑により特定の時期に業務が集中する場合や、夜勤、シフト制といった勤務体系などにより勤務間隔が短い場合に十分な休息時間を確保できないという点については、あまり議論されてきませんでした。

厚生労働省がまとめた「勤務間インターバル制度普及促進のための有識者検討会報告書」※1には、睡眠不足と健康障害との相関性を示す研究結果が掲載されています。

1.米国における研究では、睡眠時間が6時間未満の者では、7時間の者と比べて、居眠り運転の頻度が高く、日本の研究では、交通事故を起こした運転手で夜間睡眠6時間未満の場合に追突事故や自損事故の頻度が高い。

2.朝8時から一日以上徹夜で覚醒させた場合の作業能力は、夜中の3時では酒気帯び運転時以上に低下し、翌朝8時の時点では、ビール大瓶1本飲酒時と同程度に低下することが判明している。

3.米国、英国の調査で週50時間以上の長時間労働はメンタルヘルスを顕著に悪化させる。

こうした要請に応えるために、2019年4月より「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(労働時間設定改善法)」が改正され、使用者には、労働者の健康を確保するため、終業から始業までの時間を一定時間以上設定して(勤務間インターバル)、労働者が休息を確保できるよう努力する義務(努力義務)が課せられました。

2018年1月1日現在、勤務間インターバル制度を導入している企業割合は、わずか1.8%ですが、政府は勤務間インターバル制度の導入を後押しするため、現在「時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」を創設し、中小企業に対して助成を行っています。健康経営(ウェルビーイング)機運の高まりとともに、今後この制度を導入する企業が急増するものと考えられています。

※1 勤務間インターバル制度普及促進のための有識者検討会報告書(厚生労働省,平成 30年12月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000462016.pdf

制度設計のポイント

自社に合った勤務間インターバル制度を導入するにあたり、検討すべきポイントは以下のとおりです。

① 休息時間は何時間とするか

EU諸国では、勤務間インターバル制度はEU労働時間指令により1993年から導入されており、EU加盟国すべてで11時間以上のインターバル時間を設定することが義務付けられています。日本では今回インターバル時間は定められていないため、企業実態に即して時間設定することが可能です。

例えば、所定労働時間が8時間の企業でEU指令と同じ勤務間インターバル時間11時間を設定し毎日ぎりぎりまで残業すると、睡眠時間は健康を維持するのに必要だと考えられている7時間を何とか確保でき、残業時間の合計は労働基準法の法定上限である80時間以内に収まる計算です。EU指令がインターバル時間を11時間と設定したことには、健康配慮の面からの裏付けがあることがわかります。しかし、毎日必ず4時間残業する訳ではありませんから、制度設計の段階でインターバル時間を決める際には11時間を目安としながら、自社の実態に即して設定していただくとよいでしょう。

なお、勤務間インターバル制度が健康配慮の面からの規制であるということに鑑みれば、管理監督者にも適用されると考えるのが相当です。

就業時間(13時間)=業務 時間(8時間)+休憩時間(1時間)+残業(4時間)
インターバル時間(11時間)=通勤往復2時間+入浴、食事その他(2時間)+睡眠時間(7時間)
1カ月の残業時間=1日4時間×20日(所定労働日数が20日の場合)=80時間
(参考)首都圏の平均通勤時間は片道約45分

図1:インターバル時間を11時間に設定した場合

② 翌日の始業・終業時刻の取り扱い

勤務間インターバル制度を導入するにあたり最も悩ましいのは、残業時間が想定より長くなり、インターバル時間の終わりが翌日の始業時間に食い込んでしまった場合の取り扱いです。働いたとみなして労働を免除するのか、時差出勤したとして終業時間を繰り下げるのか、それぞれのメリット・デメリットを確認の上いずれかを選択します。

みなし時間を設けて就業を免除し、終業時間を繰り下げない場合、どのようにみなし時間を把握するのか、勤怠管理の見直しの検討が必要です。一方みなし時間を設けず、始業終業時間の繰り下げを行う場合には、永遠に始業と終業が繰り下げられて、結局夜間にしか働いていないことになりかねません。労働者にとっても深夜に働いた方が深夜残業代として割増されるため、制度を悪用するケースが出てくる可能性もあります。いずれのケースについても月の繰り下げ回数を2回までとする、重複時間が所定労働時間の過半を占める場合には半日有給を取得したものとみなすなど、運用に制限をかける必要がありそうです。


図2:翌日の始業・終業時刻の取り扱い

③ フレックスタイム制との併用

フレックスタイム制の会社に勤務間インターバル制度を導入する場合には、フレキシブルタイムの範囲内では業務を行わないこととすることが可能です。しかしそもそもフレックスタイム制は、始業・終業時刻の決定権を労働者に委ねる制度であるため、勤務間インターバル制度において、重複時間に業務を行うか否かを会社が決めてしまうと、フレックスタイム制の趣旨に反することになってしまいます。労使協定の見直しを含め、労使で十分に協議することが必要となります。


図3:フレックスタイム制との併用

制度導入に向けた手続き

① 就業規則の修正

始業時間や終業時間については、就業規則の絶対的必要記載事項であるため、勤務間インターバル制度を導入した場合には就業規則の修正が必要です。併せて制度の対象労働者の範囲や、繰り下げ時間の取り扱い、回数制限など、制度設計に当たって取り決める必要のある事項がある場合には勤務間インターバル制度専用の規程や内規を作ってしまったほうが確実かもしれません。

<就業規則の規定例>

〇始業終業時刻の繰り下げのケース
対象従業員は、時間外勤務が〇時間を超えた場合に、勤務終了時刻から〇時間の勤務間インターバル(休息時間)を取得し、翌所定労働時間の始業時刻に重複する場合は、始業・終業を重複した時間分繰り下げることとする。ただし、重複した時間が所定労働時間の半分を超える場合には、繰り下げは行わず、重複した時間は年次有給休暇を取得したものとみなす。

〇労働時間とみなすケース
対象従業員は、時間外勤務が〇時間を超えた場合に、勤務終了時刻から〇時間の勤務間インターバル(休息時間)を取得し、翌所定労働時間の始業時刻に重複する場合は、重複した時間は労働したものとみなす。ただし、制度利用は月〇回までとする。

〇フレックスタイム制の場合
対象従業員は、時間外勤務が〇時間を超えた場合に、〇時間の勤務間インターバル(休息時間)を取得し、フレックスタイム制のコアタイムに重複する場合は、労働したものとみなす。

② 従業員への説明、周知

就業規則を修正する場合には、従業員への説明や一定期間の周知なども必要となります。制度導入のあらましや運用方法について全社員に対する説明会を実施するのが望ましいのですが、場合によっては、管理監督者のみに対して説明会を開催し、管理監督者により従業員へ説明するというのも一案です。また、掲示板、社内回覧、電子メール等を利用して書面による制度導入の通達、周知を徹底するとよいでしょう。

働き方改革時代の労務管理

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