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コラム

2019.12.12 ♦働き方改革♦

社労士が解説!働き方改革時代の労務管理③
テレワーク導入への取り組み

テレワークが徐々に社会に定着しつつあります。テレワークは、従業員の生産性向上のみならず、子育て世代やシニア世代、障害のある方も含め、国民一人ひとりのライフステージや生活スタイルに合った働き方を実現できるという大きなメリットがあります。今回は、テレワークを実施するうえでの労務管理上の留意点や、テレワークと健康障害について解説します。(多田国際社会保険労務士事務所 所長 多田智子)

オリンピックに向けたテレワーク導入

総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府では、東京都および経済団体、企業等と連携し、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、「2020年に向けたテレワーク国民運動プロジェクト」を展開しています。このプロジェクトでは、大会の開会式に相当する7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけ、多くの企業・団体・官公庁の職員がテレワークを一斉に実施するよう呼びかけています。2020年を一つのきっかけとして、テレワークを後押しする姿勢を明確に示しています。

あらためて、テレワークについて整理しておきましょう。テレワークとは、労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務のことで、大まかに言って以下の3つに分類されます。

  • ① 労働者が自宅で業務を行う在宅勤務
  • ② 労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用して業務を行うサテライトオフィス勤務
  • ③ ノートPCや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行うモバイル勤務

テレワークはオフィスの外で業務を行うものの、オフィスでの労働と同様に労働基準関係法令の適用を受けます。

テレワーク特有の労務管理上の留意点

テレワークであっても、使用者はテレワーク実施者の労働時間について適正に把握する義務を負います。しかしながらオフィスでの勤務と違い、テレワークの場合には使用者が労働者の様子を実際に目で確認することができないため、いくつか留意点があります。

〇中抜け時間
勤務の途中に、労働者の私用のために一時的に勤務から離れることを「中抜け」といいます。特に在宅勤務の場合には、自宅で業務を行っているという状況ですから、中抜け時間が生じやすいと思われます。このような場合に使用者が中抜け時間を認め、その間は業務指示をしないことを保障している場合には、中抜け時間を休憩時間として取り扱い、その分始業の時間を繰り上げるか、終業の時間を繰り下げることができます。また中抜け時間を休憩時間ではなく時間単位有給休暇として取り扱うことも可能です。いずれにせよ、就業規則において中抜け時間の取り扱いについて定めておくことが必要となります。

〇通勤や出張時の移動時間中のテレワーク
午前中のみ在宅勤務を行い、午後からオフィスに出勤するような場合、移動中にテレワークをすることが可能です。このようなケースでは使用者が移動を命じている場合か、移動中の業務指示に基づいて業務を行う場合には労働時間となります。逆に労働者の都合により就業場所間を移動し、自由に時間を過ごしている場合には休憩時間として取り扱うこととなります。

〇フレックスタイム制でのテレワーク
フレックスタイム制の最大の特徴は、「始業および終業の時刻を労働者の決定に委ねること」にあります。したがって、テレワークを実施する場合には、労働者自らが勤務時間や中抜け時間を調整することが可能です。ただし、フレックスタイム制においても使用者は労働時間を適正に把握することが必要ですので、申告方法などを明確にし、後にトラブルに発展しないよう気を付けることが大切です。

テレワーク中の労務管理を一定範囲免除できる場合

〇事業場外みなし労働時間制の適用
事業場外みなし労働時間制とは、「使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難」と判断された場合に、その業務に通常必要とされる時間労働したものと見なす制度で、この「通常必要とされる時間」を就業規則に定めることが必要です。「使用者の具体的な指揮監督が及ばず」とは、例えば、インターネット回線が接続されているだけで、労働者が自由に通信機器から離れることが認められている場合や、携帯電話を持ち歩いていても必ずしも即応することが課されていない場合などが考えられます。

〇裁量労働制でのテレワーク
裁量労働制を取り入れている企業においても、テレワークを実施することが可能です。裁量労働制が認められている事業場では、そもそも業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねられていますが、労働者の健康配慮の観点から最低限の労務管理は必要とされています。裁量労働制は労使協定事項ですので、テレワークを実施する際には労使で十分協議するようにしましょう。

テレワークによる健康障害の防止

テレワーク制度はワークライフバランスの観点から多くのメリットがある制度ですが、例えば次のような問題点も指摘されています。

〇自宅等でテレワークを行う際の作業環境の整備
テレワーク中には、オフィスより集中的に業務が実施できる分、長時間勤務となりがちであり、健康障害を発症してしまうリスクも指摘されています。また通常の作業場で満たさなければならない事務所衛生基準規則の要件を満たしていない場合も考えられます。テレワークを実施する労働者が、作業環境整えることができるよう在宅勤務ハンドブックを作成して手渡す方法などもお勧めです。

図:自宅等で整えたい作業環境例

図:自宅等で整えたい作業環境例

〇テレワーク中の労働災害
テレワーク中についても、事業主の支配下にあることによって生じた災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となります。例えば自宅でPCを使用して業務を行っている途中に、トイレに行くために作業場所を離席した後、作業場所に戻り椅子から転倒した事案では、業務災害と認められています。また、サテライトオフィス勤務の場合には通勤災害が認められる場合があります。

〇テレワークとメンタルヘルス
テレワークに関する労働者調査の結果、健康障害に関して以下のような結果が出ています。

図:テレワークのデメリット

図:テレワークのデメリット
(出典)独立行政法人労働政策研究・研修機構:情報通信機器を利用した多様な働き方の実態に関する調査結果,平成27年5月

テレワークの一番のデメリットとして、仕事と仕事以外の切り分けが難しく長時間労働を招きやすいという点が挙げられています。また上司とのコミュニケーションが難しい、孤独感や疎外感を感じるという意見も出ています。通勤ストレスを軽減させ、生産性を向上させるためにテレワークを導入しているにもかかわらず、メンタル疾患を発症してしまっては本末転倒です。

米グーグルは2012年に生産性向上計画「プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)」を立ち上げ、グーグル社内の様々な業務に携わる数百のチームを対象に、どのようなチームの生産性が高いかをいろいろな角度から分析しました。その結果、チームが成功する鍵は「心理的安全性(psychological safety)」と呼ばれる安らかな雰囲気をチーム内に育めているかどうかにかかっているという結論に到達しました。

テレワークによって集中できる作業環境は整備されても、それがチームや企業全体の生産性向上に結び付くためには、テレワーク労働者を取り巻く職場の上司や同僚の共感と理解、そして温かい雰囲気づくりが必要なのかもしれません。

働き方改革時代の労務管理

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