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コラム

2020.01.20 ♦働き方改革♦

社労士が解説! 働き方改革時代の労務管理④
「積立保存休暇制度」構築に向けて

働き方改革により柔軟性のある働き方が求められるなかで、利用しやすい休暇制度の構築についても関心が高まっています。この休暇制度の一つとして、失効した年次有給休暇を別途積み立てる積立保存休暇があります。付与から2年経過すると時効が到来し消滅してしまう有給休暇を積み立て、病気療養や育児、自己啓発、ボランティア活動等の決められた目的に対して、積み立てた休暇を利用できるようにしようというものです。今回は、積立保存休暇の意義や導入するための手続きを解説します。(多田国際社会保険労務士事務所 所長 多田智子)

積立保存休暇制度の意義

2019年4月より年次有給休暇の年5日の取得が義務化されました。仕事と生活のバランスを取りながら生き生きと働けるよう、利用しやすい休暇制度の推進をしていくことにより、心身の健康を保持しながら安心して働くことができる労働環境の整備が目指されています。

休暇制度の具体的な方策として、「厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト」では病気休暇、ボランティア休暇など、個々の事情に柔軟に対応した休暇制度の普及が推し進められています。その中でも、失効した年次有給休暇を別に積み立てる積立保存休暇制度は、仕事とプライベートを両立して働き続けられる休暇制度の一環として、きわめて有効とされています。

積立保存休暇制度 導入のメリット

付与日から2年が経過すると失効する年次有給休暇を別途積み立てることで、消滅するはずの有給休暇を病気による通院・育児・介護等に対して活用することが可能となります。これにより、いつ起こるか分からない想定外の事態へのセーフティネットとしても設定でき、社員が安心して働く環境作りに寄与できると考えます。さらに、従業員が働くことを諦めることなく生活でき、また会社としても従業員の離職を防ぎ、人材を確保することにも繋がります。

積立保存休暇制度に関する他社の動き

「平成28年度民間企業の勤務条件制度等調査」によると、正社員の積立保存休暇制度がある企業は29.6%と約3割の企業で導入されています。企業規模ごとの割合では、500人以上54.6%、100人以上500人未満31.0%、50人以上100人未満19.2%となり、500人以上の規模では積立保存休暇制度を設けている企業が半数以上を占めます。

積立保存休暇は法律で義務付けられているものではありませんが、行政も企業が労働者の個々の事情に対応しつつ、休暇の付与を検討することが望ましいとしています。

図:積立有給の概念

図:積立有給の概念

積立保存休暇制度 設計のポイント

効果的に制度を運用していくには、自社の状況を踏まえて設計することが大切です。積立保存休暇により社員の福利厚生面での充実が図れる一方で、有給休暇の取得が抑制されてしまっては思わしくありません。既に導入されている企業では目的や積立日数に制限を設け、有給休暇の取得を促しながら一定以上に有給休暇残日数を増加しないよう工夫している企業が多数を占めています。したがって、社員に休暇制度をどのように利用してもらうかを想定しながら設定することが大切です。

積立保存休暇制度 導入方法

(1)運用ルールの決定

①積立可能な日数は何日とするか
積立保存休暇は法律の定めがないため、日数設定は企業に委ねられています。日数について、2018年人事労務諸制度実施状況調査(労政時報)によると、積立可能な年休の限度は「あり」が97.4%となり、限度日数を設けていることが一般的となっています。限度日数は40日台が最も多く24.7%、次に20日台が23.1%、次に60日台が15.4%と続いており、平均は43.4日となっています。実際には、病気療養、育児など、会社として想定する取得事由にあわせた日数設定が必要となります。

②利用目的に制限を設けるか
実際に積み立てた有給休暇を使用する際、利用目的に一定の制限を設ける会社が多く見受けられます。例えば病気療養・育児・介護・ボランティア・自己啓発・不妊治療・移植のためのドナー登録等、利用目的の範囲を設定することで、会社として社員のどのような事由をサポートするのか、コンセプトを明確に設定していくこととなります。

③休暇取得の優先順位
法律で定められている年次有給休暇と積立有給休暇のどちらを先に使うのかについて、法律の定めはありません。したがって、年次有給休暇が余っていても、積立有給休暇を使用することができます。しかし、会社は年次有給休暇を少なくとも5日取得させる義務があり、可能な限り社員の年次有給休暇取得を図っていく必要があります。したがって、実務上では年次有給休暇を先に使用してもらう運用方法が望ましいでしょう。

(2)規程の作成

積立保存休暇の導入は労働条件の変更にあたるため、就業規則の改定が必要です。会社ごとに任意で取得条件を決定することとなりますが、積み立てることのできる年間の日数、積立総日数の上限、積立保存休暇の使用目的、申請方法、年次有給休暇との優先順位、取得日変更の手続き等を明記しておくと不要なトラブルを避けることにも繋がります。運用方法の詳細な取り決めを作っておく場合、積立保存休暇が利用できることを就業規則に明記し、条件等は新たに「積立保存休暇規程」等で別に作成しておくことが取り組みやすい方法でしょう。

    《積立保存休暇規程の規程例》
  • 第○条
  • 「失効年次有給休暇付与制度(失効年次有給休暇積立制度)」とは、取得の権利が発生後2 年間を経過して時効で消滅する年次有給休暇を積立保存し、この使用を認めるものである。
  • 第○条
  • 積み立てることのできる年休の日数は、年間10日を限度とする。
  • 第○条
  • 積立できる年次有給休暇の日数の限度は40日とする。
  • 第○条
  • 積立保存した年次有給休暇の使用の事由は、次の各号とし、1日又は半日を単位とする。
    (1)私傷病により休業日数が 1 週間以上に及んだ場合
    (2)自己啓発(資格及び免許取得、並びに講習会・講演会への参加)のために休暇を要する場合で、所属長の許可を得たとき
    (3)ボランティア活動に連続して 2 週間以上従事する場合で所属長の許可を得たとき
  • 第○条
  • 前条に基づき積立保存した年次有給休暇を使用するときは、別に定める積立保存した年次有給休暇使用申請書を提出しなければならない。
  • 第○条
  • 積立保存した年次有給休暇の使用は、原則として、その時点で保有する通常の年次有給休暇を全て取得した後とする。但し、所属長が認めたときは、積立保存した年次有給休暇を優先して取得することができる。
  • <参考:神奈川産業保健総合支援センターHP>

(3)社内周知

就業規則を変更する場合、常時10人以上の従業員を使用する事業場においては、就業規則の労働基準監督署への届出が必要です。届出の際には、労働組合、労働組合が無い場合には過半数代表者の意見を聴き、その意見書を添付します。

  

その後、就業規則変更に際して社内への周知が必要となります。就業規則の効力は周知により発生するため、事業所での掲示、書面による通知、社内イントラネット上の掲示等にて周知することとなります。実行性のある制度とするためには、周知のみならず積み立てた休暇日数を勤怠システムで表示する等、従業員へのフォローアップも合わせて重要となります。

積立保存休暇制度の今後

2019年4月の法改正で「年次有給休暇の5日取得義務化」となったことで従業員の年次有給休暇の管理が必要となり、タイムリーに有給休暇の残日数を把握する必要性が出てきました。こうした「休暇制度」に関して転換点を迎えている現在、積立保存休暇制度などの多様な休暇制度も今後よりいっそう注目されると考えます。

  

積立保存休暇制度は従業員の個々の事情に応じて会社が従業員をサポートすることの表明でもあり、社員が病気・育児・介護等で就業を諦めずに働き続けられ、また自己啓発やボランティアにも取り組める環境作りができる制度です。この機会に従業員の働く環境について整理してみてはいかがでしょうか。

働き方改革時代の労務管理

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