お役立ちコラム 【建設業向け】ERPの選び方!失敗しないための比較ポイントとおすすめ製品を解説

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建設業界では、プロジェクトごとの原価管理、複雑な会計処理、複数部門にまたがる情報連携など、特有の経営課題が存在します。部門ごとにExcelや個別のシステムでデータを管理した結果、情報が散在し、リアルタイムな経営状況の把握が困難になっている企業も少なくありません。このような課題を解決し、企業のDXを推進する手段として「ERP」が注目されています。

この記事では、ERPの基本知識から、導入によって得られる具体的なメリット、そして建設業の業務に適したシステムを失敗せずに選ぶためのポイントまで、分かりやすく解説します。おすすめのERPシステムも紹介しますので、ぜひシステム選定の参考にしてください。

ERPとは?

ERPとは、企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を一元的に管理し、経営の効率化と意思決定の迅速化を目的とした統合基幹業務システムのことです。建設業界を含むさまざまな業種で活用されており、業界特有の業務プロセスに対応できるようカスタマイズや最適化が行われているものも存在します。

建設業界で用いられるERPの特徴

建設業で使われるERPは、会計や人事給与など、どの業界でも共通して必要とされる汎用的な管理機能に加え、「工事」というプロジェクト単位の管理に重点を置いています。工事ごとの実行予算策定、日々の原価集計、進捗管理など、プロジェクト開始から完了まで一貫して管理可能な機能が特徴です。これにより、案件ごとの収支をリアルタイムで把握できます。

建設業特有の会計基準への対応

建設業の会計処理には、「完成工事未収入金」や「工事未払金」といった特有の勘定科目や、長期にわたる工事の収益を適切に計上するための「工事進行基準」といった会計基準があります。建設業界に強みを持つERPの中には、これらの業界独自の会計ルールに標準対応しているものもあり、それらを導入することで複雑な会計処理を効率化し、法令を遵守した正確な決算業務を実現することが可能です。

建設業界においてERPを導入する5つのメリット

ERPの導入は、単なる業務効率化に留まらず、企業の経営基盤そのものを強化する多くのメリットをもたらします。ここでは主な5つのメリットを解説します。

経営状況のリアルタイムな可視化

ERPを導入することで、これまで部門ごとに分散していた会計情報、原価情報、販売情報などが一つのシステムに統合されます。これにより、経営層は全社の状況をリアルタイムで正確に把握できるようになります。例えば、採算が厳しいプロジェクトを早期に発見し、迅速に対策を講じるといった、データに基づいた的確な経営判断が可能になります。

SCSKが提供するAIネイティブな次世代ERP「PROACTIVE」は、AIダッシュボード「PROACTIVE アナリスト」を搭載しています。これは、Googleの生成AI「Gemini」とGoogle Cloudのデータプラットフォーム「Looker」を活用して構築されており、経営データの可視化だけでなく、AIによる相関分析やトレンドの発見を通じて、より高度な意思決定を支援します。

社内外の膨大なデータをAIが統合・分析し、有益な示唆を提示することで、従来は専門的なスキルが必要だった分析業務も、効率的かつ迅速に実施できるようになります。
PROACTIVE AIとは

業務プロセスの一元管理による効率化

各部門が同じデータを参照して業務を行うため、データの二重入力や転記作業が不要になります。見積から受注、実行予算、発注、原価管理、請求、入金まで、一連の業務プロセスがシステム上で連携されるため、部門間のやり取りがスムーズになり、業務全体の生産性が大きく向上します。

正確な原価管理による利益率の改善

工事ごとの材料費、労務費、外注費、経費などを正確に把握し、実行予算と実績をリアルタイムで比較できます。これにより、予期せぬコスト超過を未然に防ぎ、プロジェクトの利益率を管理・改善することが可能です。過去の工事データを分析し、次の案件の見積の精度を高めることにも繋がります。

内部統制の強化とコンプライアンス対応

ERPによる業務プロセスの標準化と権限設定機能は、内部統制の強化に貢献します。誰がいつどのような処理を行ったかのログが記録されるため、不正を防止し、業務の透明性を高めます。また、建設業法や各種法改正にもシステムがアップデートで対応するため、コンプライアンスを遵守した企業経営が容易になります。

業務の標準化と属人化の解消

ERPの導入は、全社で統一された業務フローを構築する良い機会となります。これにより、特定の担当者しか分からないといった業務の属人化が解消され、誰が担当しても一定の品質で業務を遂行できる体制が整います。担当者の異動や退職に伴う引き継ぎもスムーズになり、事業の継続性を高めます。

ERPとは:導入メリットや種類、選び方のポイントを解説【入門ガイド】

建設業で活用されるERPの主な機能

ERPには、業界特有の課題を解決するための多様な機能が搭載されています。ここでは、特に建設業界でERPを選定する際に、備わっているかどうか確認しておきたい重要な機能をご紹介します。

工事原価管理機能

工事ごとの原価を費目別(材料費、労務費など)に集計し、実行予算と実績を対比して管理する、建設業向けERPの中核となる機能です。工事の進捗状況に応じた原価の発生状況をリアルタイムで把握し、利益管理の精度を高めます。

財務会計機能

建設業特有の勘定科目や工事進行基準に対応した会計処理を行います。原価管理システムとシームレスに連携し、工事の出来高や原価を自動で会計仕訳に反映させることで、決算業務の負担を大幅に軽減します。

販売・購買管理機能

資材の発注、仕入、在庫管理、支払いまでの一連の購買プロセスを管理します。また、顧客への見積書作成から請求書発行、入金管理までの販売プロセスもサポートし、工事に紐づくモノとカネの流れを一元化します。

人事・給与管理機能

従業員の勤怠管理や給与計算を行います。現場作業員の日報データと連携し、工事別の労務費を自動で集計する機能を備えたシステムもあります。これにより、より正確な原価計算が可能になります。

JV(共同企業体)管理機能

複数の企業が共同で大規模工事を請け負うJV(ジョイントベンチャー)特有の会計処理に対応する機能です。出資比率に応じた損益の自動按分など、複雑な管理業務を効率化します。

失敗しない!建設業におけるERPの選び方

自社に合わないシステムを選んでしまうと、導入効果が得られないばかりか、業務の混乱を招く恐れもあります。ここでは、ERP選定で失敗しないための4つのポイントを解説します。

自社の企業規模や業態に合っているか

ERPには、大企業向けの高機能なものから、中小企業向けに機能を絞ったシンプルなものまでさまざまな種類があります。自社の売上規模や従業員数、また総合建設業なのか専門工事業なのかといった業態を踏まえ、自社の規模やニーズに適したシステムを選定することが重要です。

ERPシステムの導入手順と導入に成功するコツ:メリット・デメリットも紹介【ERPノート】

クラウド型かオンプレミス型か

システムには、自社でサーバーを保有・運用する「オンプレミス型」と、インターネット経由でサービスを利用する「クラウド型」があります。

クラウド型は、初期費用を抑えられ、スピーディに導入できることや、場所を選ばずに利用しやすい点が特長です。近年では、こうした手軽さや運用面の負担軽減から、クラウド型を選ぶ企業も増えてきています。

一方、オンプレミス型は、ハードウェアやネットワーク構成を含めて物理レイヤーから制御できるため、特殊な機器との連携や閉域ネットワークでの運用、応答速度をシビアに重視するシステムなど、クラウドでは対応が難しいケースにおいて優位性を発揮します。
セキュリティポリシーや運用体制、業務特性に応じて、それぞれの特長を踏まえた選択が重要です。

必要な機能とカスタマイズの範囲

まずは標準機能で自社の業務をどこまでカバーできるかを確認します。その上で、どうしても必要な機能が不足している場合にカスタマイズを検討します。過度なカスタマイズは、コストの増大や将来のバージョンアップへの対応が困難になるリスクを伴うため、パッケージの標準機能に業務を合わせていく視点も大切です。

導入・運用後のサポート体制

ERPの導入は、稼働してからが本番です。システムの使い方に関する問い合わせや、トラブル発生時に、迅速かつ的確に対応してくれるサポート体制が整っているかを確認しましょう。特に、建設業の業務に精通した担当者によるサポートが受けられるベンダーは、心強いパートナーとなります。

建設業界のDXを支援するオファリングサービス
PROACTIVE Construction

PROACTIVE Constructionは、SCSKが提供するAIネイティブな次世代型ERP「PROACTIVE」を中核として、建設業界の業務の標準化、効率化、そして経営判断の迅速化を支援するオファリングサービスです。見積、原価、工程、人員などの業務データをクラウド上に一元管理し、統合プラットフォームを通じて迅速な情報共有と多軸分析を実現します。

また、建設業特有の商習慣や法規制に対応するため、歩掛り計算、分割請求、前払金保証などの機能を標準搭載し、柔軟なマスタ設定と伝票レイアウトで取引先・協力会社の要求にも即応します。

さらに、公共工事統一コードや出来高管理など業界標準の業務フローをテンプレート化し、承認・アラート・進捗ダッシュボードを搭載することで、不正防止と手戻り低減を実現し、現場と本社の情報齟齬をなくします。

PROACTIVE Constructionは、建設業界の効率化と品質向上を支援し、DXを通じて企業の競争力向上に寄与するサービスです。
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まとめ

ERPとは、部門間で分散しがちな情報を一元管理し、業務の効率化や経営状況の可視化、さらにはデータに基づく迅速な意思決定を支援する、非常に有効なツールです。
導入を成功させるには、自社の業態や規模、抱える課題と必要な機能要件に即した製品を選び、信頼できるパートナーとともに導入プロジェクトを進めることが重要です。
この記事で紹介した機能や選定ポイントを参考に、建設業におけるDXの推進と、将来を見据えた持続的な成長への一歩を踏み出してみてください。

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