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2024.02.19
ITトピックス

ERPにAI(人工知能)を搭載!メリットや今後の展望を解説

現代のビジネス環境は、データドリブンな意思決定が求められるようになり、企業はそのための最適なツールを探し求めています。その答えの一つが、AI搭載のERPシステムです。

この記事では、AIを活用したERPシステムの登場、その注目される理由、活用するメリット、デメリット、そして今後の展望について詳しく解説します。データドリブンな意思決定を志向するビジネスリーダーや経営者の方はぜひお役立てください。

1. ERPへのAI(人工知能)搭載

近年、企業の基幹システムとして重要な役割を果たしているERP(Enterprise Resource Planning)にも、AI(人工知能)を活用する動きがあります。

ERPとは、企業の経営資源を一元的に管理し、効率的な運用を可能にするシステムのことです。このERPにAIを組み込むことで、従来の手動処理や単純な自動化を超えた、より高度で精緻なデータ分析や予測が可能になるでしょう。

AI搭載のERPは、ビジネスの意思決定をより迅速かつ正確に行うことを支援し、企業の競争力を向上させるための新たな可能性を拓くと期待されているのです。

2. AIが注目されている理由

AI(人工知能)が注目されている理由は、その先進的な技術と広範な応用可能性です。AIとは、人間の知能を機械に模倣させる技術のことを指します。

特に、機械学習と深層学習(ディープラーニング)という2つの技術が大きな注目を集めています。
機械学習は、コンピュータに大量のデータを学習させ、そのパターンを把握し、未知のデータに対する予測を行う技術です。

深層学習は、機械学習の中でも、人間の脳の神経回路網を模倣したニューラルネットワークを用いて、より複雑なパターンを把握する技術です。これにより、画像認識や自然言語処理など、従来の機械学習では難しかったタスクを実行することが可能になりました。

これらの技術の進化によってAIは絶大な注目を集めるようになり、現在では製造業からサービス業まで、あらゆる産業で活用されているのです。

3. ERPにAIを搭載するメリット

AI搭載のERPの活用は、ビジネス運営に革新的なメリットをもたらします。それは将来的にもどんどん加速していくでしょう。AI ERPの活用については様々な未来予想図がありますが、今回は特に以下の5つのメリットについて詳しく解説します。

ERPにAIを搭載するメリット

ERPにAIを搭載するメリット

これらは現時点で全てが実現されているものではなく、将来的に実現可能ではないかと言われているものも含まれています。その点に留意してお読みください。

(1)高度な需要予測

AIは複雑なパターン認識が得意なため、過去のデータと最新の市場トレンドを分析し、未来の市場動向を予測することもできるようになるでしょう。
たとえば、商品の売上データや季節性、経済状況などを考慮に入れて、将来の需要を予測する、といった活用方法が考えられます。

これにより、企業は適切な在庫管理を行い、生産計画を最適化することが可能になるかもしれません。また、需要が予測できることで、マーケティング戦略の策定や新製品の開発にも役立ちます。

(2)戦略的な意思決定

AI搭載のERPシステムにより、ビジネスの戦略的な意思決定を強化することが可能となります。

AIは大量のデータを迅速に解析し、パターンやトレンドを特定する能力を持っています。これにより、企業は市場の動向、競合他社の動き、顧客の行動など、ビジネスに影響を及ぼす様々な要素をリアルタイムで把握できるようになるでしょう。

さらに、AIはこれらの情報を基に未来の予測を立て、最適な戦略を提案することも可能です。たとえば、会計に関するデータを活用することで、予算の最適化、資金の効果的な配分、リスクの予測や管理など、利益最大化のための戦略的意思決定が可能となります。

(3)業務プロセスの効率化

業務プロセスの効率化にも、AI搭載のERPが貢献します。

AIは、過去のデータを学習し、パターンを理解し、それに基づいて予測を行うことが得意です。たとえば在庫管理では、過去のデータから需要を予測し、適切な在庫量を自動的に調整できるようになると考えられます。加えて、AIは経理のようなバックオフィス業務の一部を自動化できます。ミスを減少させられると同時に、業務のスピードアップも実現可能です。

AIによってルーチンワークを自動化することで、従業員がより高度なタスクに集中できるようになると考えられます。結果として全体的に業務効率が良くなり、組織の生産性向上につながるでしょう。

(4)不正の素早い検知

不正行為を迅速に検知することはAIの得意分野です。
AIは大量のデータを高速に解析し、異常なパターンや予期しない変動を自動的に検出することができるからです。

AI搭載のERPシステムは、将来的には不正の発生を未然に防ぐ能力を備えるでしょう。
たとえば、会計データにおける異常な取引、在庫管理での不審な動き、人事データにおける不適切な行為など、多岐にわたる不正行為を効果的に見つけ出せるようになると思われます。

これにより、企業は早期に問題を特定し、損失を最小限に抑えることが可能となるのです。

(5)人材の適切な評価

AI搭載のERPは、人材評価の面でも大きなメリットをもたらすと考えられます。

AIは、各従業員の業務遂行におけるパターンや生産性、成果をデータとして捉え、分析します。人力ではデータサイエンティストと呼ばれるような領域の人でなければデータから相関性を見つけ出すことは難しいですが、AIは多様で多量なデータを分析することが可能です。今まで活用できなかったデータを用いることで、個々の従業員がどの程度の貢献をしているか、どの部分で改善が必要かを把握しやすくなります。

そのためAIによる評価は、従来のように人間が行うよりも高精度で、公平性が高いと言えるでしょう。人間の主観や偏見を排除した客観的な評価は、従業員のモチベーション向上にも寄与します。

4. AI搭載のERPにデメリットはあるか

AI搭載のERPが多くのメリットをもたらす一方で、その導入にはいくつかのデメリットも想定されます。ここからはAI搭載のERPのデメリットを3つ解説します。

  • • 導入コスト
  • • 従業員の対応力
  • • データの管理体制

(1)導入コスト

ERPの導入には、一定の費用が必要となります。

まず初期投資として、システム導入費用やハードウェアの購入、カスタマイズ費用が必要です。また、継続的な運用費用として、システムのメンテナンスやアップデート、人材教育費用も発生します。

これらの費用は、企業の規模や業種、導入するシステムの内容により大きく変動します。そのため、導入にあたり、事前に十分な予算策定とROI(投資対効果)の検討が必要です。

コストを抑えるためには、最初から全ての機能を導入するのではなく、必要な機能から段階的に導入するなどの工夫が求められます。

(2)従業員の対応力

AI搭載のERPシステムを導入する際に、従業員から反対の声が上がる可能性があります。
これは、AIの進化により自身の職が脅かされると感じる人々や、新しい技術への適応に不安を感じる人々からの反対が主です。また、新たなシステムの操作方法を学ぶことによるストレスも、反対の理由となり得ます。

これらの問題を克服するためには、導入前に従業員への十分な説明や研修、そして導入後のフォローアップが必要です。

(3)データの管理体制

企業が大量のデータを扱う中で、顧客情報の保護やプライバシーの確保が必須となっています。AI搭載のERPを導入する場合には、データ保護規制への対応を行わなくてはなりません。
特に、GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)などのデータ保護法が施行されるなど、規制は世界的に強化されており、適切な対策を怠ると法的な問題に直面する可能性もあるのです。

実際にERPへAIを搭載するならば、事前に十分なリスク分析を行い、データ管理の体制を整えることが求められます。さらに、AIによる自動化が進む中で、データの透明性や倫理的な問題も考慮する必要があります。

5. AIとERPの今後の展望・将来性

AIとERPの統合は、企業のビジネスプロセスをよりスマートに、より効率的にする可能性を秘めています。特に、IoT(モノのインターネット)との統合によって、リアルタイムのデータ収集と分析が可能になり、これにより製造プロセスの最適化や在庫管理の精度向上など、ビジネスの各面での効率化が期待できます。

また、AIの進化により、ERPシステムは個々のユーザーのニーズや行動パターンを学習し、パーソナライズされたユーザーエクスペリエンスを提供することが可能です。これにより、ユーザーは自分に最適な情報や機能に迅速にアクセスできるため、ユーザー体験の向上に寄与します。

さらに、AIとERPは他の新しいテクノロジーと融合することで、さらなる活用が期待されています。たとえば、以下のような活用モデルが考えられます。

<ERPへのAI活用モデルの例>

  • • OCR技術と組み合わせることで、請求書や領収書から自動的にAIがデータ化し、ERPにデータを取り込む。
  • • AI ERPとドローン技術を組み合わせることにより、AIがERP内の在庫データや発送スケジュールをリアルタイムに解析し、ドローン配送の最適なルートや配送順序を自動調整する。
  • • 工場で発生した不良品の原因をAIが解析しつつ、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術を利用し、遠隔地の開発部門のエンジニアが発生した不良品をリモートで確認する。

AIとERPの今後の展望・将来性

AIとERPの今後の展望・将来性

AIとERPの統合は企業の競争力を高め、ビジネスの未来を形成する重要な要素となるでしょう。

6. まとめ

AI搭載のERPは、高度な需要予測、戦略的な意思決定、業務プロセスの効率化、不正の迅速な検出と防止、人材の適切な評価など、多くのメリットを企業にもたらします。
一方で、導入コストの高さ、従業員の反対、データ保護規制への懸念など、デメリットも無視できません。目まぐるしく変化する技術領域のため、進化の方向性が予測困難な場合も多いです。

しかし、AIとERPの組み合わせは、企業の競争力を高め、将来的には新たなビジネスモデルや価値提供の形を生み出す可能性を秘めています。AIのメリットとデメリットを理解し、適切に対応することがますます重要となっていくでしょう。

株式会社リチェルカ 代表取締役CEO 梅田 祥太朗

梅田 祥太朗

株式会社みずほ銀行、株式会社ワークスアプリケーションズを経てAI inside 株式会社へ入社。セールスの企画、実行を担当後、2019年4月より同社執行役員CROとしてビジネスを管掌。 その後東京大学エッジキャピタル(UTEC)のベンチャーパートナーとして出資先の支援に従事。2021年10月、UTEC出資先のWeb3.0企業である株式会社HashPortに取締役COOとして参画し、NFT特化のブロックチェーン「Palette」事業を推進。退任後は、Web3.0スタートアップ「iMAMIRAi株式会社(現:株式会社リチェルカ)」を創業。

その他にも、スタートアップ支援等を手掛ける「RECERQA株式会社」、イタリア製競技用オートバイの輸入元「株式会社うえさか貿易」の代表を務める。株式会社うえさか貿易を営む中で、仕入・販売・在庫管理の課題を実感し「RECERQA」の構想が生まれる。

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