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2021.07.19
経営・ビジネス用語解説

目標管理制度(MBO):DXやグローバル化を背景に求められる人事制度【知っておきたい経営・ビジネス用語解説】

目標管理制度(MBO:Management by Objectives)とは、個人やチームごとに目標を設定し、その目標への達成度で人事評価を決める制度のことで、経営思想家のピーター・ドラッカー氏が提唱したことで知られています。個別の達成事項を明確にし、個人やチームと組織が進む方向性を合わせる効果があります。

1. MBOが求められる背景

働き方が多様化する中で、経営戦略における人事が果たす役割が強まっています。そうしたことを背景に、個人やチームごとに目標を設定し、その目標への達成度で人事評価を決めるMBOが注目されるようになりました。

近年は、デジタル化、グローバル化、少子高齢化を背景に、事業環境の頻繁な変化、ワークフォースの多様化が進む中、柔軟な目標設定や高頻度で実効性あるフィードバックを通じたパフォーマンスマネジメント・人材育成の重要性が高まっています。経営目標の個人への展開、パフォーマンス向上および人材育成といった人事評価の目的に基づいた実効性ある施策を導入することで、より高いパフォーマンスの発揮、個人の成長、個人の自発的な貢献意欲の強化を促進し、企業文化そのものを変化させることに対する期待が背景にあります。

2. MBOのメリットとデメリット

MBOのメリットとして、人事評価、人材育成、それぞれ以下のようなことが挙げられます。

人事評価が容易になる

上司や人事部にとって、人事評価を容易に行うことができます。目標が明確になっているため、その達成度合いで人事評価を決定できるからです。

目標と結果がはっきりしているため評価への納得感がある

MBOは自身で設定した目標に対して、数値などの客観的なもので評価されます。評価の不透明感がなくなるため、社員の納得感を得られます。

従業員の能力を高める

MBOでは目標設定の際に、それまでよりも少し高い目標を設定します。自分で決めた多少困難な目標に対して、目標達成に向けたプロセスを自ら考え創意工夫することで、各従業員の能力を底上げすることができます。

従業員のモチベーション向上

与えられた目標や業務に対して仕事を行うのではなく、自身で設定した目標に向かって努力するため、モチベーション高く仕事に取り組むことができます。また、会社の目標とも連携しているため、個人の目標を達成することにより、会社の目標達成に貢献できていることを実感できます。

一方、MBOにはデメリットもあります。

目標設定が難しく、不満につながるリスク

適度なレベルの目標を設定するのは難しいものです。MBOで組織目標を細切れにしたタスクを個人目標とされ、不満を持つケースも少なくありません。また、個人目標として仕事を押しつけられたという印象が残ると、不信感を高めることにもつながります。

評価者への負担

評価者である上司からすると、MBOを実施するために一連の作業負担を強いられます。それにより、疲弊するという潜在的課題があります。運用を間違えると、MBOはその目的とは真逆の効果を生み出す危険性もあるのです。

短期的な成果を求め、目標設定以外の業務をやらない

目標が明確になり、それに対する評価・報酬が与えられるため、どうしても短期的な成果を求めがちになります。また、目標に設定されていない業務をやらなくなる点にも留意が必要です。

MBOを実施する上では、上記のようなデメリットがあることを考慮し、上司と部下の間で質の高いコミュニケーションが求められます。十分な話し合いのもとで、組織目標と従業員目標をひも付け、モチベーションを高めることが重要です。また、短期的な視点ばかりに目を向けず、長期的な視点に立った人材育成、社内体制づくりにも配慮する必要があるでしょう。

図:MBOの流れ

図:MBOの流れ

3. 業績評価制度「OKR」との違い

MBOと比較される言葉にOKR(Objectives and Key Results)があります。

「企業の戦略的人事機能の強化に関する調査(経済産業省)」によると、OKRは現状「目標管理の一種でありその進化形」と捉えられるケースや、「目標管理とは異なる、経営目標を社員に展開される新たな手法」として考えられるケースがあります。MBOが組織目標と個人目標の整合を目指す一方で、OKRは組織目標と個人目標の自律的な連動を目指す、としています。

OKRでは全社レベル、部門レベル、個人レベルのそれぞれで、目的と鍵となる成果を設定し、GoogleやFacebookなどの世界的な企業がOKRを導入していることでも注目が集まっています。従業員の自律的な挑戦によるパフォーマンス向上を強調している点が、MBOとの違いと言えるでしょう。

4. 事例に見るMBO

経済産業省は2021年3月に発表した「多様な個を活かす経営へ~ダイバーシティ経営への第一歩」で、MBO導入企業を紹介しています。

ダイバーシティ経営企業100選表彰企業として紹介された宿泊業の中沢ヴィレッジは、MBO制度を導入しました。社員に目標設定を促し、その達成状況をもとに上長が公正な評価をする体制を整備しました。これにより、宿泊客による推奨率を測る数値が高くなり、特に外国籍社員への評価が非常に高い水準になったとしています。外国籍社員を中心に、接客スキルを向上させたいという高いモチベーションで勤務する環境が醸成され、ホテルのサービス全体の質向上につながっています。

5. 導入を支援するツールの活用

ここまでみたように、MBOの運用は単純ではありません。業務効率を落とさずにMBOを運用するために、支援ツールを活用するのも有効です。

例えば、SCSKのERPパッケージ「ProActive」は、MBOを実施するための目標管理システムを用意しています。人事考課、MBO、キャリアプランといった人事制度の変化に合わせて柔軟に対応できます。表計算ソフトで作成したMBOシートやキャリア開発プランのテンプレートをアップロードし、そのまま活用できるため、導入時や制度改定に伴う書式変更にもプログラミングレスで対応できます。

また、ProActiveはクラウド人材管理システムの「HRBrain」とも連携可能です。人事評価やモチベーション管理などのフロント業務についてはHRBrainを活用し、人事情報のデータベースならびに給与計算などのバックオフィス業務についてはProActiveを活用することで、人事労務業務のさらなる効率化が可能になります。

「ProActive」と「HRBrain」連携

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