お役立ちコラム クラウドとオンプレミスの違いを徹底比較!自社に最適なシステムを選ぶポイントを解説!

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現代のビジネスにおいて、ITシステムの基盤をどのように構築し運用するかは、企業の競争力や成長を左右する重要な経営判断の一つです。その選択肢として頻繁に比較されるのが、「クラウド」と「オンプレミス」です。しかし、それぞれの言葉は聞いたことがあっても、「具体的に何がどう違うのか?」「自社にとってはどちらが最適なのか?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 本記事では、クラウドとオンプレミスの基本的な違いから、それぞれのメリット・デメリット、コスト、セキュリティ、運用面など、多角的な視点で徹底比較します。この記事を読むことで、自社の状況や目的に最適なシステム形態を選ぶための具体的な判断基準を理解し、後悔しないシステム導入の一助となることを目指します。

クラウドとは?その基本的な特徴と種類

クラウドとは、正式には「クラウドコンピューティング」と呼ばれ、サーバーやストレージ、ソフトウェアといったITリソースを、インターネットを経由して必要な時に必要な分だけ利用する仕組みのことです。利用者は自社で物理的なサーバーを持つ必要がなく、サービス提供事業者が用意したリソースをサービスとして活用します。クラウドサービスは、その提供形態によって主に以下の3つの種類に分類されます。

SaaS (Software as a Service) の特徴

SaaSは「サース」と読み、ソフトウェアをインターネット経由で提供するサービス形態です。利用者はPCやスマートフォンにソフトウェアをインストールする必要がなく、ブラウザや専用アプリを通じてすぐにサービスを利用開始できます。代表的なSaaSとしては、Gmail™のようなウェブメールサービス、Salesforceのような顧客管理(CRM)システム、Microsoft 365®のようなグループウェアなどが挙げられます。手軽に導入できる点が大きな特徴です。

PaaS (Platform as a Service) の特徴

PaaSは「パース」と読み、アプリケーションを開発・実行するためのプラットフォーム(基盤)を提供するサービス形態です。利用者はOSやハードウェア、ネットワークといったインフラ部分を意識することなく、アプリケーションの開発や運用に集中できます。代表的なPaaSとしては、Google App Engine™やMicrosoft AzureのApp Serviceなどがあります。開発環境を迅速に構築したい場合に有効です。

IaaS (Infrastructure as a Service) の特徴

IaaSは「イアース」または「アイアース」と読み、サーバー、ストレージ、ネットワークといったITインフラをインターネット経由で提供するサービス形態です。利用者は仮想サーバーのOSやミドルウェアを自由に選択・構築でき、オンプレミスに近い柔軟なシステム構成が可能です。代表的なIaaSとしては、Amazon Web Services (AWS) のAmazon EC2®やGoogle CloudのCompute Engine™などがあります。インフラの運用負荷を軽減しつつ、自由度の高いシステムを構築したい場合に適しています。

オンプレミスとは?その基本的な特徴

オンプレミスとは、企業が自社の施設内やデータセンターに、サーバーやネットワーク機器、ソフトウェアなどのITシステムを物理的に設置し、自社で管理・運用する形態のことです。「自社運用型」とも呼ばれます。クラウドが登場する以前は、企業がシステムを導入する際の一般的な方法でした。 オンプレミスでは、ハードウェアの選定からシステムの設計・構築、運用・保守に至るまで、すべてを自社の責任範囲で行います。そのため、自社の要件に合わせて自由にシステムをカスタマイズできる点が大きな特徴です。

クラウドとオンプレミスの徹底比較

クラウドとオンプレミスは、それぞれ異なる特徴を持っています。どちらが自社に適しているかを判断するためには、様々な観点から両者を比較検討することが重要です。以下に主な比較ポイントをまとめました。

比較項目クラウドオンプレミス
初期費用低い(サーバー購入不要)高い(サーバー・ライセンス購入費など)
運用費用変動費(利用量に応じた従量課金が多い)、保守費用はサービス料に含まれることが多い固定費(保守費用、電気代、人件費など)
セキュリティ事業者とユーザーの責任共有、高度なセキュリティ対策を提供自社で全て管理・構築、閉域網など柔軟な対策が可能
カスタマイズ性制限あり(提供サービスの範囲内)高い(自由に設計・構築可能)
運用・保守事業者が主体(インフラ管理不要)自社で全て対応(専門知識・人員が必要)
拡張性高い(リソース変更が容易)低い(物理的な増設が必要)
導入期間短い(契約後すぐに利用可能)長い(調達・設計・構築に時間が必要)
障害対応事業者が対応(SLAに基づく)自社で対応
法規制対応事業者の対応状況を確認する必要あり自社でコントロールしやすい
資産計上原則なし(費用処理)あり(固定資産)
アクセス場所インターネット経由でどこからでも原則社内から(外部アクセスの場合は別途設定が必要)

コスト(初期費用・運用費用)の違い

コストはシステム導入における重要な検討事項です。クラウドは、サーバーやソフトウェアの購入が不要なため、初期費用を大幅に抑えることができます。月額や年額の利用料を支払う従量課金制が一般的で、利用状況に応じて費用が変動します。 一方、オンプレミスは、サーバー機器やソフトウェアライセンスの購入、システム構築のための初期投資が高額になる傾向があります。しかし、一度構築すれば自社の資産となり、長期的に見るとランニングコストを抑えられる場合もあります。ただし、保守費用や電気代、運用担当者の人件費なども考慮に入れる必要があります。

セキュリティ管理の違いとそれぞれの対策

セキュリティに関しても、クラウドとオンプレミスでは管理方法が異なります。クラウドの場合、セキュリティ対策はサービスを提供する事業者と利用者の双方に責任が分かれます(責任共有モデル)。事業者はインフラ全体の物理的なセキュリティや基盤ソフトウェアの脆弱性対策などを担当し、利用者はデータのアクセス管理やアプリケーションレベルのセキュリティ対策などを担います。多くのクラウド事業者は高度なセキュリティ対策を提供しています。 オンプレミスでは、セキュリティ対策の全てを自社で行います。ファイアウォールの設置や不正侵入検知システムの導入、アクセス制限など、自社のポリシーに合わせて自由に、かつ厳格なセキュリティ環境を構築できるメリットがあります。ただし、そのための専門知識や運用体制が不可欠です。

カスタマイズ性と柔軟性の違い

システムのカスタマイズ性においては、オンプレミスに分があります。自社でハードウェアやソフトウェアを保有するため、業務要件や既存システムに合わせて細かく、自由にシステムを設計・構築できます。独自のアプリケーション開発や特殊なシステムとの連携も比較的容易です。 クラウドの場合、提供されているサービスの範囲内でシステムを構築するため、オンプレミスほどの自由なカスタマイズは難しい場合があります。特にSaaSでは、提供される機能以上のカスタマイズは期待できません。PaaSやIaaSでは比較的自由度が高まりますが、それでも事業者の提供する基盤の制約を受けます。

運用・保守の負担と管理体制の違い

システムの運用・保守にかかる負担も大きく異なります。クラウドでは、サーバーの物理的な管理、ハードウェアの故障対応、OSやミドルウェアのアップデートといったインフラ部分の運用・保守は、基本的にサービス事業者が行います。そのため、利用者はインフラ管理の負担から解放され、アプリケーションの運用やサービスの活用といったコア業務に集中しやすくなります。 オンプレミスでは、これらの運用・保守作業をすべて自社で行う必要があります。サーバーの監視、障害発生時の原因特定と復旧、定期的なメンテナンス、セキュリティパッチの適用など、多岐にわたる業務に対応できる専門知識を持った人材と体制が求められます。

拡張性(スケーラビリティ)とリソース変更の柔軟性

ビジネスの成長や需要の変動に合わせてシステムリソースを柔軟に変更できるかどうかは、システムの持続性に影響します。クラウドは、サーバーの処理能力やストレージ容量などを、必要に応じて迅速かつ容易に増減できる高い拡張性(スケーラビリティ)を持っています。例えば、キャンペーン期間中だけアクセスが増加する場合などに、一時的にリソースを増強するといった対応が可能です。 オンプレミスの場合、リソースを増強するには新たにハードウェアを購入・設置する必要があり、時間とコストがかかります。そのため、将来の需要を予測して初期段階で余裕を持ったサイジングを行う必要があり、急な需要変動への対応はクラウドに比べて柔軟性に欠けると言えます。

導入期間とシステム構築スピード

新しいシステムを導入するまでにかかる期間も、クラウドとオンプレミスで大きく異なります。クラウドサービスは、契約手続きを済ませれば比較的短期間で利用を開始できる場合が多く、特にSaaSであれば即日利用可能なものもあります。開発環境やインフラが既に用意されているため、システム構築にかかる時間を大幅に短縮できます。 オンプレミスでは、ハードウェアやソフトウェアの選定・調達、システムの設計、構築、テストといった工程が必要となるため、導入までに数ヶ月から一年以上かかることも珍しくありません。

障害発生時の対応と可用性

システム障害が発生した際の対応や、システムの継続的な稼働を保証する可用性も重要な比較ポイントです。クラウドの場合、障害発生時の対応は基本的にサービス事業者が行います。多くの事業者はSLA(Service Level Agreement:サービス品質保証制度)を定めており、稼働率や復旧時間などの目標値を保証しています。データセンターが分散されているなど、障害対策が施されている場合が多いです。 オンプレミスでは、障害発生時の原因究明から復旧作業まで、全て自社で行う必要があります。そのため、迅速な復旧体制やバックアップ体制を事前に構築しておくことが不可欠です。

法規制・コンプライアンスへの対応

特定の業界(金融、医療など)では、データの取り扱いや保管場所に関する法規制やガイドラインが厳しく定められています。クラウドを利用する場合、データが国内のどこに保管されるのか、事業者がそれらの規制に準拠しているかなどを確認する必要があります。多くの大手クラウド事業者は、各種認証を取得するなどコンプライアンス対応を進めています。 オンプレミスでは、データを自社管理下に置くため、これらの法規制や社内ポリシーに対して、より直接的にコントロールしやすいという側面があります。

クラウドのメリットを深掘り

クラウドを導入することで、企業は多くのメリットを享受できます。ここでは、特に注目すべき点をいくつかご紹介します。

初期費用を抑えて迅速な導入が可能

クラウド最大のメリットの一つは、初期費用を大幅に削減できる点です。高価なサーバーやソフトウェアライセンスを購入する必要がないため、特に資金調達が限られるスタートアップや中小企業にとっては大きな魅力となります。また、契約後すぐにサービスを利用開始できるため、ビジネスチャンスを逃さず迅速にシステムを立ち上げることができます。

運用保守の負担軽減とコア業務への集中

サーバーの監視やメンテナンス、OSのアップデートといったインフラの運用保守業務は、クラウド事業者に任せることができます。これにより、情報システム部門の担当者は日々の煩雑な作業から解放され、IT戦略の立案や新しいサービスの企画・開発といった、より付加価値の高いコア業務にリソースを集中させることが可能になります。

柔軟なリソース変更とスケーラビリティ

ビジネスの成長や市場の変化に合わせて、システムリソースを柔軟かつ迅速に変更できる点もクラウドの大きな強みです。アクセス数の増減に合わせてサーバーの能力を調整したり、必要なストレージ容量を必要な時に確保したりできるため、無駄な投資を抑えつつ、機会損失を防ぐことができます。

場所を選ばないアクセスとBCP対策

クラウドサービスはインターネット経由で利用するため、オフィスだけでなく、自宅や外出先など、場所を選ばずにシステムにアクセスできます。これにより、テレワークや多様な働き方の推進にも貢献します。また、自社でデータセンターを持つ必要がないため、地震や水害といった自然災害発生時のBCP(事業継続計画)対策としても有効です。データはクラウド事業者の堅牢なデータセンターで管理されるため、自社設備が被災した場合でも事業を継続しやすくなります。

クラウドのデメリットと注意点

多くのメリットがあるクラウドですが、導入にあたってはいくつかのデメリットや注意点も理解しておく必要があります。

カスタマイズ性の制約と既存システム連携

クラウドサービスは、基本的に提供されている機能やサービスの範囲内で利用することになります。そのため、自社の業務プロセスに完全に合致するような細かなカスタマイズや、独自の機能追加は難しい場合があります。また、社内に残る既存のオンプレミスシステムとの連携においては、APIの互換性やデータ形式の違いなどから、技術的な制約が生じる可能性も考慮が必要です。

セキュリティに関する懸念と対策の重要性

重要なデータを社外のクラウド事業者のサーバーに預けることになるため、情報漏洩や不正アクセスに対するセキュリティ上の懸念を感じる企業は少なくありません。多くのクラウド事業者は高度なセキュリティ対策を講じていますが、利用者側もID・パスワード管理の徹底やアクセス権限の適切な設定など、自社で実施すべきセキュリティ対策を怠ってはなりません。クラウドのセキュリティは、事業者と利用者の責任共有モデルで成り立っていることを理解することが重要です。

ランニングコストの継続発生と費用対効果の試算

クラウドは初期費用を抑えられる反面、利用し続ける限り月額または年額の利用料が発生します。長期間利用する場合や、利用するリソース量が多い場合には、オンプレミスよりも総コストが高くなる可能性もあります。そのため、導入前に利用規模や期間を考慮し、オンプレミスと比較した場合の費用対効果を十分に試算することが大切です。

インターネット回線への依存

クラウドサービスはインターネット経由で利用するため、安定したインターネット接続環境が不可欠です。自社のインターネット回線に障害が発生したり、通信速度が遅かったりすると、サービスの利用に支障をきたす可能性があります。また、クラウド事業者側で大規模な障害が発生した場合、サービスが一時的に利用できなくなるリスクもゼロではありません。

オンプレミスのメリットを再評価

クラウドの利便性が注目される一方で、オンプレミスにも依然として多くのメリットがあり、特定のニーズを持つ企業にとっては最適な選択肢となり得ます。

高度なカスタマイズ性とシステム連携の自由度

オンプレミス最大のメリットは、自社の要件に合わせてシステムを自由に設計・構築できる高いカスタマイズ性です。業務プロセスに完全に最適化されたシステムや、独自のセキュリティポリシーを反映させたシステムを構築できます。また、社内の他のシステムや特殊なハードウェアとの連携も、クラウドに比べて柔軟かつ確実に行いやすい傾向があります。

自社管理による強固なセキュリティポリシーの実現

機密性の高い情報を扱う企業や、厳格なセキュリティポリシーを持つ企業にとって、オンプレミスはデータを自社の管理下に置けるという安心感があります。外部ネットワークから完全に隔離した閉域網でシステムを運用したり、自社で選定した最新のセキュリティ機器を導入したりするなど、独自のセキュリティ基準に基づいた対策を徹底的に講じることが可能です。

既存資産の有効活用と長期的なコストメリットの可能性

既に自社でサーバーなどのハードウェア資産を保有している場合や、特定のソフトウェアライセンスを所有している場合には、それらを有効活用してオンプレミス環境を構築することで、初期投資を抑えられる可能性があります。また、システムの利用期間が長期にわたる場合や、リソースの使用量が安定している場合には、クラウドよりもトータルの運用コストが低くなるケースも考えられます。

オンプレミスのデメリットと課題

多くのメリットがある一方で、オンプレミスにはいくつかのデメリットや運用上の課題も存在します。

高額な初期費用と資産管理の負担

オンプレミス環境を構築するには、サーバーやネットワーク機器、ソフトウェアライセンスなどの購入に多額の初期費用が必要です。これらのIT資産は固定資産として計上されるため、減価償却や固定資産税の管理といった経理処理の負担も発生します。

専門知識を持つ人材確保と運用保守の負荷

システムの設計・構築から日々の運用・保守、障害発生時の対応まで、オンプレミス環境の全てを自社で管理するには、高度な専門知識とスキルを持ったIT人材が不可欠です。しかし、そのような人材の確保や育成は容易ではなく、人件費も大きな負担となります。情報システム部門の担当者にかかる運用負荷も高くなりがちです。

拡張性の限界とリソース変更の煩雑さ

ビジネスの成長や急な需要変動に合わせてシステムリソースを柔軟に変更することは、オンプレミスでは容易ではありません。サーバーの能力増強やストレージ容量の追加には、新たなハードウェアの調達・設置が必要となり、時間とコストがかかります。そのため、将来の需要を予測して初期投資を行う必要があり、予測が外れた場合にはリソースが無駄になったり、逆に不足したりするリスクがあります。

災害対策やBCP対応の自社責任

地震や火災、水害といった自然災害や、大規模な停電など不測の事態に備えた対策は、オンプレミスの場合、全て自社の責任で行う必要があります。バックアップシステムの構築、遠隔地へのデータ保管、自家発電装置の導入など、事業継続計画(BCP)に基づいた対策には多大なコストと手間がかかります。

結局どちらを選ぶべき?選択のための判断基準

クラウドとオンプレミス、それぞれにメリット・デメリットがある中で、自社にとってどちらが最適なのかを判断するには、いくつかの基準を設けて検討することが重要です。

判断基準クラウドが適している可能性が高いケースオンプレミスが適している可能性が高いケース
コスト重視初期費用を抑えたい、変動費で管理したい長期的な総コストを抑えたい、予算化しやすい固定費で管理したい
セキュリティ要件標準的なセキュリティで十分、外部委託で高度な対策を期待業界特有の厳格な規制がある、自社で完全にコントロールしたい
カスタマイズ性・柔軟性標準機能で十分、迅速な導入を優先独自の業務プロセスに合わせたい、既存システムとの複雑な連携が必要
運用リソースIT担当者が少ない、運用負荷を軽減したい専門知識を持つIT担当者がいる、自社で運用ノウハウを蓄積したい
拡張性・迅速性事業の成長スピードが速い、需要変動が大きいシステム規模が比較的安定している、計画的なリソース増強が可能
BCP・災害対策迅速な復旧を重視、自社での対策が難しいデータセンターなど堅牢な設備を自社で保有・管理できる
法規制・コンプライアンス利用するクラウドサービスが要件を満たしているか確認し対応可能データ保管場所などに厳格な制約があり、自社管理が必須

コストを重視する場合の考え方

初期費用をできるだけ抑えたい、あるいは月々の支払いを変動費として捉えたい場合は、クラウドが適しています。一方、長期的な視点で総所有コスト(TCO)を比較し、固定費として予算管理したい場合は、オンプレミスも有力な選択肢となります。利用するリソース量や期間によって最適な選択は変わるため、詳細なシミュレーションが重要です。

セキュリティ要件を重視する場合の考え方

非常に機密性の高い情報を取り扱う、あるいは業界特有の厳格なセキュリティ規制やコンプライアンス要件がある場合は、自社で完全にコントロールできるオンプレミスが適していることがあります。ただし、クラウド事業者も高度なセキュリティ対策を提供しており、自社のポリシーと照らし合わせて、どのレベルのセキュリティが必要かを明確にすることが大切です。

システムの柔軟性と拡張性を重視する場合の考え方

ビジネスの成長スピードが速く、将来的なリソース需要の予測が難しい場合や、季節変動などでアクセス数が大きく変動するような場合は、柔軟にリソースを増減できるクラウドが有利です。一方、業務プロセスが特殊で、既存システムとの連携を含め、細かなカスタマイズが必須となる場合は、オンプレミスの方が対応しやすいでしょう。

運用リソースと専門知識の有無

社内にITシステムの運用保守を担当できる専門知識を持った人材が少ない、あるいはIT担当者の運用負荷を軽減し、より戦略的な業務に集中させたい場合は、クラウドが適しています。オンプレミスを運用するには、相応のスキルと人員体制が必要です。

事業継続性(BCP)と災害対策の観点

災害発生時にも事業を継続し、データを保護することは非常に重要です。自社で堅牢なデータセンターを保有したり、遠隔地にバックアップサイトを構築したりすることが難しい場合は、地理的に分散されたデータセンターを持つクラウド事業者のサービスを利用することが有効なBCP対策となります。

ハイブリッドクラウドという選択肢も検討

近年では、クラウドとオンプレミスを完全に二者択一で考えるのではなく、両者を組み合わせてそれぞれの利点を活かす「ハイブリッドクラウド」というアプローチも注目されています。

ハイブリッドクラウドのメリット

ハイブリッドクラウドでは、例えば、機密性の高い基幹システムや顧客データはセキュリティを重視してオンプレミスで管理し、外部連携が必要なWebサーバーや開発環境、一時的にリソースが必要となる分析処理などは柔軟性の高いクラウドを利用するといった使い分けが可能です。既存のオンプレミス資産を活かしつつ、クラウドの拡張性やコストメリットを享受できる点が大きなメリットです。

ハイブリッドクラウドのデメリットと注意点

ハイブリッドクラウドは、オンプレミス環境とクラウド環境という異なるシステムを連携させて運用するため、システム構成が複雑になりがちです。そのため、両方の環境を適切に管理・運用できる高度な知識と技術が求められます。また、オンプレミスとクラウド間のデータ連携部分のセキュリティ確保や、システム全体のパフォーマンス管理も重要な課題となります。

クラウド・オンプレミス移行時の注意点

既存のシステム環境から新しいクラウド環境、あるいは新しいオンプレミス環境へ移行する際には、いくつかの注意点があります。スムーズな移行を実現するために、以下のポイントを押さえておきましょう。

事前の十分な調査と計画策定

移行を成功させるためには、まず現状のシステム構成、データ量、ネットワーク環境、業務への影響範囲などを詳細に調査・把握することが不可欠です。その上で、移行の目的、スケジュール、予算、体制などを明確にし、無理のない移行計画を策定します。特に、移行中や移行直後に発生しうるリスクを洗い出し、その対策を事前に検討しておくことが重要です。

データ移行のリスクと手順の確立

既存システムからのデータ移行は、移行プロジェクトの中でも特に慎重さが求められる作業です。データ量や種類によっては移行に長時間を要する場合があり、その間の業務停止も考慮しなければなりません。データ損失や破損のリスクを最小限に抑えるため、事前のバックアップ取得はもちろんのこと、移行手順を確立し、テスト環境で十分にリハーサルを行うことが推奨されます。

セキュリティポリシーの見直しと再設定

新しいシステム環境に合わせて、既存のセキュリティポリシーを見直し、必要に応じて改訂する必要があります。特にクラウドへ移行する場合は、アクセス権限の設定、データの暗号化、監視体制など、クラウド環境特有のセキュリティ対策を考慮しなければなりません。責任共有モデルを正しく理解し、自社が担うべきセキュリティ対策を明確にすることが重要です。

従業員への教育とサポート体制

新しいシステム環境への移行は、現場の従業員の業務プロセスにも影響を与える可能性があります。操作方法の変更や新しいツールの導入などに対して、事前に十分な説明会や研修を実施し、従業員の理解と協力を得ることがスムーズな移行の鍵となります。また、移行後には問い合わせ窓口を設置するなど、従業員が安心して新しいシステムを利用できるようなサポート体制を整えることも大切です。

まとめ

クラウドとオンプレミスは、それぞれに異なる特徴、メリット、デメリットがあります。どちらか一方が絶対的に優れているというわけではなく、企業の規模、業種、事業戦略、セキュリティポリシー、予算、ITリソースなど、様々な要因を総合的に考慮して、自社にとって最適なシステム形態を選択することが重要です。本記事でご紹介した比較ポイントや判断基準が、クラウドとオンプレミスの違いを理解し、将来を見据えた選択を検討される際の一助となれば幸いです。

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