コラム
システム活用による労務管理業務の効率化のコツ
従業員の賃金や福利厚生を管理し、働き方や賃金システムの見直し、人事考課や採用に関する情報を取り扱う「労務管理業務」は会社にとって極めて重要な仕事です。しかし業務範囲が多岐にわたるため、常に効率化や省力化を意識しておかないと、負担が肥大化し、従業員サービスが低下してしまうことがあります。そこで今回は、システム活用による労務管理業務の効率化について考えます。
1. 労務管理の重要性
労務管理と一口に言っても、その業務は多岐にわたります。狭義の労務管理には、勤怠管理、給与計算、社会保険関連、健康管理、安全衛生管理、労使関係などの業務が挙げられます。ただし企業によっては、従業員の採用や退職、人事異動や評価、従業員の教育・能力開発などの人事管理業務も含めているケースもあります。いずれも業務の対象は「従業員」であり、これらの業務をしっかり管理・運用しながら、従業員満足度を高めていくことが組織全体の成長につながっていきます。
労務管理における近年の大きなテーマは、働き方改革でした。法改正も進められるなか、従業員の労働時間短縮のための仕組みを急ピッチで整備した企業も多いでしょう。新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワーク環境における就業規則や労務管理を進めていくことも大きなテーマとなっています。
また、長期的な視点からみると、生産年齢人口の減少や人材の流動化により、優秀な人材の獲得や維持が、これまで以上に重視されるようになってきました。個々の従業員のモチベーションを高め、パフォーマンスを最大化できるよう、労務管理・人事管理の両面から施策を考えていく必要があります。
このような制度改革をはじめとして近年重要性を増している労務管理業務ですが、現実には勤怠管理、給与計算、社会保険手続きなど、限られた期間内で正確な処理が必要な業務も多く、担当者がオーバーワーク状態になっていることも少なくありません。まずは、現状の労務管理業務を見直し、どうすれば効率化できるかを考えることが重要です。
2. 労務管理の効率化に必要なポイント
では、労務管理を効率化するには、どのようなことが有効なのでしょうか。
まずポイントとなるのは「ペーパーレス化」です。紙での提出や保存ではなく、電子申請や電子データとして保存する、情報として閲覧する場合もシステム上で電子データを確認する、というスタイルに変えます。
ペーパーレス化は、用紙代や保存スペースの節約も実現できますが、それだけでなく、業務負担軽減や生産性向上につながることが大きなメリットです。ただし、業務の全面的な見直しと不要な業務の排除など、業務を十分に整理しないまま電子申請やペーパーレス化を推進してもあまりメリットが得られない可能性があるので注意が必要です。
また「社員情報の整備、一元化」も重要です。社員情報は個々の社員ごとに整理されているのではなく、給与、勤怠、人事などシステムごとにサイロ化されて整理されていることが多いのですが、これを社員ごとに整理し、さまざまな情報を一覧できる状態にしておくことで、労務管理業務を効率化できます。
そのためには、給与、勤怠、人事などのシステムから必要なデータを自動的に抜き出し、個人ごとに整理して常に最新の状態にしておけるよう、システム連携をさせておくことが必須となります。
さらに、もう1つのポイントは「業務の自動化」でしょう。例えば、ペーパーレス化、システム連携を進めても、途中で人が入力をするプロセスが随所にある、という業務フローでは、もう一段階進んだ業務改革はなかなか実現しません。
そこでRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ソフトの導入を視野にいれ、業務の見直しをしていくことも重要な戦略となります。多くのRPAソフトは専門的な知識はほとんど必要なく、一般の従業員が自動化を進めていくことが可能となっていますので、試験的な導入からでも検討していくと良いでしょう。
3. システム活用のメリット
ここまで述べてきた労務管理業務のシステム化において、最近目にする機会が増えたクラウドを活用した労務管理システムの導入がおすすめです。紙書類を電子化し、社員名簿や過去に入力したデータの活用による社員の記入ミスや間違いを削減することで、労務管理担当者の業務量を低減することができます。また、外部の給与計算や勤怠管理サービスとも連携可能なので便利です。
その他にも労務管理業務のシステム化のメリットはあります。
まず、担当する人員に対して常に仕事が多すぎるという「オーバーワーク」状態の解消というメリットを生み出します。そしてこのメリットをさらに追求していくことで、労務管理部門の仕事そのものを高度化させていくことにつながります。つまり事務処理作業的な仕事を、システム化や自動化によって省力化することで、その会社の社員ならではの付加価値の高い業務に多くの時間を割けるようになるのです。
また、採用や適切な人材配置など人事関係の業務についても同じことがいえます。同じ組織に属する担当者が、コミュニケーションを図りながらさまざまな立場の従業員と関わっていくことは、事務的作業に追われながら片手間で行うことは不可能です。
このようにシステム化による業務の効率化は、その組織の労務管理の高度化というメリットを生み出し、最終的には、競合企業にはない独自の魅力を創出することにつながります。
4. BPOサービスを活用した労務管理業務の効率化
労務管理業務のシステム化の中でもう一つの選択肢が、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という手法です。BPOは社内の業務プロセスの一部または大半を一括して専門業者に外部委託することです。労務管理業務でいえば給与計算や社員情報の一元管理といった、データ処理全般にかかわる仕事を外部委託します。
SCSKでは株式会社パソナHRソリューションと協業し、人材不足や働き方改革に課題を抱える企業様に向けて、「ProActive」を運用基盤システムとした「人事給与BPOサービス」を推進しています。
また、「ProActive」と株式会社SmartHRのクラウド人事労務ソフト「SmartHR」は連携しており、それぞれのサービスで収集、蓄積した個人情報の連携を行い、人事労務業務の効率化を実現しています。パソナHRソリューションは、株式会社SmartHRとも業務提携を行っており、3社はBPOを含めた人事労務業務の課題解決を支援しています。
こうしたシステム化されたBPOサービスを活用することで、自社の人材リソースを使うことなく、スピーディーに労務管理業務のシステム化を実現できます。
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