お役立ちコラム

SCSKの健康経営事例②
「残業削減の取り組み」にみる変革の軌跡【前編】

SCSKの健康経営事例②「残業削減の取り組み」にみる変革の軌跡【前編】

※本ブログは、2025年3月24日に旧ブログ(note:SCSK健康経営)にて掲載したものを、内容はそのままに当サイトへ移設・再掲載しております。ご参考までに、掲載内容は、当時の情報となりますことをご了承ください。

はじめに

前回のブログでは、SCSKの健康経営を貫く理念として、「実践する順番を大切にすること」及び、経営層の「言行一致」の重要性についてお伝えしました。

次に、このような理念が実際にどのような施策として形になっていったのか、その具体的な事例として『残業削減・有給休暇の取得の取り組み(スマートワーク・チャレンジ)』を取り上げ、変革の過程を詳しく見ていくことにしましょう。

「順番」から見えてくる本質とは?

「社員の健康のために、まず始めるべきことは何か?」

この問いに対して多くの企業が思い浮かべるのは、運動促進や食生活改善といった健康増進施策ではないでしょうか。確かにこれらは重要な取り組みです。しかし、そもそも社員が健康的に働ける環境が整っていなければ、どんなに優れた健康増進施策も十分な効果を発揮することはできません。

この一見当たり前に思える事実が、実は「健康経営」を成功に導く重要な鍵となっています。2011年の経営統合を機に、当社が健康経営に着手した際、まず取り組んだのは、働く環境そのものの改善でした。

IT業界特有の課題との対峙

そこで当社の経営トップが実行した施策が、第1回のブログでもご紹介した「オフィス移転」と「診療所の拡充」でした。しかし、これらはあくまで第一歩に過ぎませんでした。なぜなら、IT業界を取り巻く労働環境には業界特有の課題が数多く存在しており、そこにこそより本質的な問題があったからです。

IT業界においては、24時間365日稼働を続けるシステムを取り扱うという仕事柄、トラブル発生時の対応は急を要します。また、システムの切り替えとなれば、正月やGWなどの長期休暇期間中の対応が多いため、休暇中の作業も起こり得る職場でした。そのため、長時間労働や休日返上が当たり前とされ、これらを実行できる社員が評価される傾向があったのです。

この状況は、単に労働時間が長いという問題にとどまりませんでした。ある社員は当時をこう振り返ります。

「週末、家族で買い物に出かけても、ベンチで座って寝ていることが多い。子供の運動会でも隅で寝ている」。

この言葉は、当時の労働環境が社員の私生活にまで深刻な影響を及ぼしていた実態を如実に物語っています。

昼食もそこそこに仮眠をとる社員の姿は日常的な光景でした。「疲労回復のための睡眠」が、皮肉にも休憩時間中にも必要になってしまう。このような状況は、仕事の質や生産性、ひいては社員のメンタヘルスにも大きな影響を及ぼしていました。

迫られる意識改革の必要性

IT業界の特性上、深夜や休日の対応が完全にゼロになることは現実的ではありません。しかし、だからこそ「通常時」の働き方を見直し、持続可能な仕組みを作ることが重要でした。

特に注目すべきは、当時の評価の在り方です。上述したような、長時間働ける社員、休まずに働ける社員が高く評価される風土は、暗黙のうちに「休むことへの後ろめたさ」を生み出していました。

休暇を取得する際にも「周囲に迷惑をかけているのではないか」という不安が付きまとい、結果として有給休暇の取得率は低迷。この状況は、単なる制度の問題を超えて、組織文化そのものの課題となっていたのです。

経営トップの改革への決意

このような状況に対し、当時の経営トップは明確な信念を示します。

「社員の健康がなによりも一番大事なこと。健康であって初めて充実した仕事ができる」

この言葉は、単なるスローガンではありませんでした。当時はまだ「働き方改革」という言葉さえ一般的ではない時期でしたが、こうした信念のもと、2010年という早い段階から様々な改革に着手し、健康経営の実践へと歩みを進めていったことは、以前のブログ(「健康経営」が拓く企業と社員の未来~新メディアの開設~)でもお伝えした通りです。

特筆すべきは、この改革に対する経営トップの覚悟の深さです。「雇われ経営者」である以上、在任期間中の売上・利益の向上にのみ注力すれば良いと考える経営トップも少なくない中、自らの進退をかけてまで、この改革に取り組む決意を固めました。なぜなら、目の前の利益よりも、社員の健康という根本的な価値を追求することこそが、経営者の責務だと考えたからです。

充実した仕事は、まず社員の健康づくりから

当時の経営トップは、長時間労働や休まない仕事の進め方を肯定する従来の価値観を根本から覆す必要性を感じていました。それは単なる労働時間の削減や休暇の取得ではなく、仕事の質を高め、社員一人ひとりがクリエイティブな価値を生み出せる環境を整えることを意味していたのです。

この信念は、

「社員の健康を害して得る利益に何の価値があるのか?」
「働き方を変え、意識を変え、クリエイティブな仕事へと転換できない限り、当社にも業界にも日本にも未来はない」

という言葉となって、社内に強く印象づけられることになったのです。

今回は、SCSKの残業削減の取り組みの背景として、IT業界特有の課題と、それを改革しようとした経営トップの決意についてお伝えしました。次回は、この理念がどのように具体的な施策として実現されていったのか、特に象徴的な事例を中心にご紹介したいと思います。

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

今日の健康経営あるある

働き方改革としてスタートした「スマートワーク・チャレンジ(略称:スマチャレ)」
人事からの当初目標は、「年間労働時間2,000時間以下」を目指す「スマートワーク・チャレンジ2000」でした。
経営トップから「年末(すなわち年度内9カ月目のタイミング)に自分のそれまでの労働時間をわかっているのは何人いる?」「あと何時間残業できるか把握できるのはどれくらいいる?」
人事「・・・」
「もっとわかりやすく!」とやり直しを指示。
そこから、月間残業時間:20時間以下、年度内有給休暇:20日間取得(全日程取得)をもととした「スマートワーク・チャレンジ20」となるのでした…

SCSK株式会社 PROACTIVE事業本部 Uwellビジネス部 部長(兼)人事本部 Well-Being推進部

杉岡孝祐

住商情報システム株式会社(現SCSK株式会社)入社。 人事(採用、育成、人事企画)11年、広報(社内外情報発信、メディア対応など)10年経験。 広報部時代の2011年に経営統合(現在のSCSKに)を経験し、その後の「働き方改革」「健康経営」を広報の責任者として、社内外へ発信。各種メディア対応を通じ、社内外へのPRを実現。 2019年4月より人事に異動し、健康経営の企画・推進責任者。 2023年4月、健康経営の新規事業化を目的に異動。(人事兼務)

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