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SCSKの健康経営事例②
「残業削減の取り組み」にみる変革の軌跡【後編】

SCSKの健康経営事例②「残業削減の取り組み」にみる変革の軌跡【後編】

※本ブログは、2025年4月7日に旧ブログ(note:SCSK健康経営)にて掲載したものを、内容はそのままに当サイトへ移設・再掲載しております。ご参考までに、掲載内容は、当時の情報となりますことをご了承ください。

はじめに

前回のブログでは、SCSKを取り巻くIT業界特有の課題と、それを改革しようとした経営トップの決意についてお伝えしました。今回は、その理念がいかに大胆な施策として結実し、組織を変革していったのか、その軌跡をたどってみたいと思います。

「常識」への挑戦~スマートワーク・チャレンジ20の船出

2013年、SCSKは「スマートワーク・チャレンジ20」(通称:スマチャレ20)という取り組みを開始しました。その内容は、月間平均残業時間20時間以下、年次有給休暇取得20日(取得率100%)を目指すというものでした。

当時のIT業界の風潮などを考えれば、この数字を聞いて「非現実的だ」と考えるのが普通だったことでしょう。当然ながら、社内からも「業務時間が減れば収益減につながるのではないか」という懸念の声が上がっていました。

しかし経営トップは、それを承知で決断を下します。「社員の健康」を最優先とする価値観を、覚悟を持って貫いたのです。そして、SCSKの挑戦はまさにここから始まります。

この取り組みを進める上で、最大の障壁となったのは、社員たちの生活への影響でした。当時のSCSKでは、残業時間を1時間減少することで、約1億円の人件費が抑制できる見込みでした。しかし、その残業代は多くの社員にとって実質的な生活給となっていたため、単純に残業削減を呼びかければ、社員から「生活が成り立たなくなる」「住宅ローンが返せない」といった不安の声が上がることが目に見えていたのです。

常識を覆す判断―残業代全額還元

そこで経営トップが下した決断は、当時の企業経営の常識を根底から覆すものでした。残業削減で浮いた人件費を、営業利益には計上しないことを明確に打ち出し、全額社員に還元する―としたのです。これは、残業削減が単なるコスト削減策ではなく、真に社員の健康を考えた施策であることの何よりの証でした。

さらにそれに付随する具体的な仕組みも、きめ細やかな配慮に満ちていました。まず、2012年度の月平均残業時間26.2時間を基準値として設定。この基準値からの削減分を翌年6月の賞与時に追加支給することとしました。また、裁量労働制が適用されない若手総合職により手厚く還元する一方、既に月34時間分の手当が支給されている裁量労働制適用者には一定のインセンティブを支給するという、全社員参加型のバランスの取れた設計としたのです。

この「全額還元」という決断は、社内に大きな波紋を広げました。それは驚きであると同時に、会社の本気度を示す象徴となったのです。

進化する制度―持続可能な仕組みへ

2015年度、この制度は新たな段階へと進化します。浮いた残業代の使途を、より戦略的な形へと再構築したのです。その柱となったのが、裁量労働制の適用拡大と、総合職への毎月20時間分の業務手当支給です。さらに、残った1~2億円を総合健康増進施策「健康わくわくマイレージ」のインセンティブとして活用することで、健康経営との連携も図りました。

注目することとしては、20時間を超える残業に対する考え方の転換です。超過分の手当を「残業手当」ではなく「健康手当」として支給する仕組みを導入。これは単なる名称変更ではなく、長時間労働を抑制しつつ社員の健康を促進するという、会社の姿勢を明確に表明したものでした。

「理念」が「制度」を動かすとき

このような大胆な施策の展開は、経営陣の覚悟を社員に強く印象づけることとなりました。「社員の健康を害して得る利益に何の価値があるのか?」という問いかけは、もはや抽象的な理念ではなく、具体的な制度として社員の目の前で息づいていたのです。

制度設計の真髄は、その段階的なアプローチにありました。最初の2年間は全額還元による信頼関係の構築に注力し、その後により包括的な制度へと移行していく。この時間をかけた社内浸透度や認知度の向上を図り、次なる施策への展開が、改革を成功に導いた要因の一つとなったのです。

改革がもたらした「想定外」の成果

この取り組みは、残業時間の削減という直接的な効果にとどまりませんでした。より本質的な変化が、組織の中で静かに、しかし確実に進行していたのです。

残業を前提としない働き方への移行は、必然的に業務の効率化を促進。それは単なる時間削減ではなく、仕事の質的向上をもたらしました。結果として、SCSKは残業時間の削減と営業利益の向上という、一見相反する目標の両立を実現したのです。

さらに注目すべきは、この成果が一過性のものに終わらなかったことです。残業時間の削減は、その後の様々な革新的施策の確かな土台となっていきました。

「健康経営」を体現する瞬間

SCSKにおける残業削減の取り組みが成功した最大の理由。それは、「社員の健康」という理念を、躊躇することなく具体的な制度として実現する決断力にありました。「残業代全額還元」という当時としては極めて異例の施策は、経営トップの言葉の真摯さを証明し、社員との揺るぎない信頼関係を築く基盤となったのです。

この理念と実践の融合がもたらした成果は、具体的な数値となって現れています。2011年度に27.8時間だった月平均残業時間は、2015年度には18.0時間にまで削減されました。しかも特筆すべきは、この間SCSKが一度も減収減益に陥ることなく、直近の2023年度に至るまで増収増益を続けているという事実です。残業を減らすことと、営業利益を増やすことは、決して相反する目標ではなかったのです。

この事例は、健康経営において「理念」と「実践」がいかに密接に結びつくべきか、そして経営トップの決断がいかに組織を変革しうるかを明確に示しています。

これらの残業削減と増収増益の両立を可能にしたより具体的な達成過程については、回を改めてご紹介したいと思います。

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

今日の健康経営あるある

2012年11月、社内掲示板にて「年度付与の有給休暇(20日)9割取得を目指す」と発表。
このタイミングでの取得平均は13日。あと5カ月で5日の休暇をどう取るのか?自分だけでなくチームの問題であり、皆が情報共有し、お客様に迷惑をかけず実現可能性を考えるきっかけに。
とは言え、「なんで今からなんだ~」との声は至る所から人事に寄せられたのは、容易に想像できますよね…

※2025年4月より所属組織が変わりました。
(引き続き、健康経営支援事業を推進していきます)

SCSK株式会社 PROACTIVE事業本部 Uwellビジネス部 部長(兼)人事本部 Well-Being推進部

杉岡孝祐

住商情報システム株式会社(現SCSK株式会社)入社。 人事(採用、育成、人事企画)11年、広報(社内外情報発信、メディア対応など)10年経験。 広報部時代の2011年に経営統合(現在のSCSKに)を経験し、その後の「働き方改革」「健康経営」を広報の責任者として、社内外へ発信。各種メディア対応を通じ、社内外へのPRを実現。 2019年4月より人事に異動し、健康経営の企画・推進責任者。 2023年4月、健康経営の新規事業化を目的に異動。(人事兼務)

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