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2025.02.18
ITトピックス

サステナビリティ経営とは:SDGsやESG・CSRとの違い、必要性について解説

気候変動や社会的課題への関心が高まる中、企業には「サステナビリティ経営」が求められています。しかし、SDGsやESG・CSRといった関連用語が多く、それぞれの違いがわかりにくいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、サステナビリティ経営の本質やその必要性を解説するとともに、これらの用語との違いを整理します。ぜひ最後までご覧ください。

1. サステナビリティ経営とは

サステナビリティ経営とは、企業が「ESG(環境・社会・ガバナンス)」の3つの側面を考慮し、長期的な価値創造を目指す経営手法です。

主な特徴は次のとおりです。

長期的な視点
  • • 短期的な利益追求ではなく、環境問題や社会課題の根本原因に取り組む
  • • 将来世代のニーズも考慮した経営判断をする
3つの側面での取り組み
  • • 環境:温室効果ガス削減や資源を有効活用する
  • • 社会:ジェンダー平等や教育格差の解消を目指す
  • • ガバナンス:組織力の強化を行う
ステークホルダー
(利害関係者)重視
  • • 株主だけでなく、従業員や取引先・地域社会など、すべての利害関係者への価値提供を目指す

サステナビリティ経営は、環境・社会への配慮と企業の経済的成長を両立させるため、現代の企業経営において不可欠な考え方となっています。

2. サステナビリティ経営はなぜ必要?

サステナビリティ経営が必要とされる背景には、どのような要因があるのでしょうか。
以下の3つの視点から、その理由を解説します。

  • • 気候変動問題への対応が求められている
  • • 社会から要請されている
  • • 持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献が求められている

(1)気候変動問題への対応が求められている

気候変動問題への対応は、企業の重要な経営課題となっています。地球環境の変化により、極端な気象現象や自然災害が増加し、企業活動に大きな影響を及ぼしています。

さらに、資源の枯渇リスクも高まっており、企業には持続可能な資源管理や廃棄物削減、リサイクルの推進が求められています。これらの地球規模の環境問題に対して、責任を持ち、積極的に取り組む必要があります。

(2)社会から要請されている

企業のサステナビリティへの取り組みは、さまざまなステークホルダーからの強い要請を受けて必要性が高まっています。現代の消費者は環境や社会に配慮した企業活動を重視しており、多くの消費者がサステナブルな商品に対して付加価値を認めています。

また、投資家も企業評価の際にESG(環境・社会・ガバナンス)基準を重視するようになり、サステナビリティへの取り組みが資金調達にも影響を与えているのです。さらに、国内外でサステナビリティ関連の法律が続々と施行されており、大手企業を中心に対応の義務化も進んでいます。

(3)持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する必要がある

サステナビリティ経営は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた重要な取り組みとして位置づけられています。SDGsは国連が定めた2030年までの17の目標で、貧困や環境問題、教育など幅広い社会課題の解決を目指しています。

企業がSDGsに沿った活動を展開することは、社会課題の解決に貢献するだけでなく、新たな市場機会の創出や企業価値の向上にもつながるのです。

特に環境や社会に配慮した製品・サービスの提供は、ブランドイメージを高め、消費者や投資家との信頼関係の強化も期待できます。

このように、SDGsの達成に向けた取り組みは、持続可能な社会の実現と企業の持続的な成長の両立を目指す上で大変重要であるといえます。

3. 押さえておきたいサステナビリティ経営関連キーワードを解説

(1)ESGとは?

サステナビリティ経営は企業の経営手法であり、ESGはその課題を評価するための指標という関係にあります。

ESG
定義
  • 環境・社会・ガバナンスの視点から企業を評価する際の非財務的な要素のこと
主な目的
  • 投資家による企業評価の基準となる
取り組み
  • 国際的に統一された基準であり、投資家が企業評価を行う際に使用する

(2)SDGsとは?サステナビリティ経営との違い

サステナビリティ経営とSDGs(持続可能な開発目標)は、持続可能な社会の実現という共通の方向性を持ちながら、その対象範囲や具体的な取り組みが異なります。
サステナビリティ経営とSDGsの主な違いは次のとおりです。

サステナビリティ経営 SDGs
定義 企業が「ESG(環境・社会・ガバナンス)」の3つの側面を考慮し、長期的な価値創造を目指す経営手法
  • 国連が定めた2030年までに達成すべき17の目標と169の指標のこと
主な目的 企業の持続的な成長と社会的責任を両立させる
  • 地球規模の社会課題の解決を目指す
取り組み 各企業が自社の状況に応じて独自に戦略を立てて実行する
  • 国際的に定められた共通目標に向けて協力して取り組む

(3) CSRとは?サステナビリティ経営との違い

サステナビリティ経営はCSR(Corporate Social Responsibility)の考え方を含みながら、より広範な経営戦略として発展していきます。CSRが社会貢献活動に焦点を当てているのに対して、サステナビリティ経営は企業活動全体を通じた持続可能性の実現を目指すものです。
サステナビリティ経営とCSRの主な違いは次のとおりです。

サステナビリティ経営 CSR
定義 企業が「ESG(環境・社会・ガバナンス)」の3つの側面を考慮し、長期的な価値創造を目指す経営手法
  • 企業が事業活動を通じて社会貢献や環境問題に取り組み社会的責任を果たすこと
主な目的 企業の持続的な成長と社会的責任を両立させる
  • 顧客や従業員などのすべてのステークホルダー(利害関係者)に対して責任を持つこと
取り組み 各企業が自社の状況に応じて独自に戦略を立てて実行する
  • 社会貢献活動を中心にして取り組む

4. サステナビリティ経営のメリット

サステナビリティ経営のメリットを3つ紹介します。

  • • リスク管理になる
  • • イノベーションを促進させる
  • • 優秀な人材の確保に繋がる

(1)リスク管理になる

サステナビリティ経営を行うことでリスク管理につながる理由を、法的リスクと評判リスクの観点から説明します。

• 法的リスクの軽減
環境やサステナビリティ開示等の規制など、企業の社会的責任に関する法律は厳格化しています。環境・社会への配慮と企業の経済的成長を両立させるサステナビリティ経営を実践し、法令遵守を徹底しリスク管理することで、罰則や訴訟リスクを回避し、企業の信頼性や透明性の向上が可能です。
• 評判リスクの軽減
現代の消費者や投資家は企業の環境・社会への配慮を重視しています。サステナビリティ経営によるステークホルダーに配慮した事業活動は、企業の評判を損なうリスク軽減にもつながります。

(2)イノベーションを促進させる

サステナビリティ経営を実践することにより、イノベーション(ビジネスに新たな価値を生み出すための変革)の促進にもつながるとされています。たとえば、次のようなことが考えられます。

• 市場の新規開拓
環境配慮型の製品やサービスの開発などは、社会や新しい市場ニーズに対応できるようになります。
たとえば、環境配慮型製品や再生可能エネルギー関連のサービスは、消費者からの需要が高く、企業に競争優位性をもたらすでしょう。このことにより、新たなビジネスモデルの創出が可能になります。
• コスト削減と効率化
環境への配慮により、資源の効率的な利用や廃棄物削減が可能です。これにより総合的なコスト削減が期待でき、より持続可能なビジネスモデルを構築できます。

(3)優秀な人材の確保に繋がる

サステナビリティ経営は、単なる環境対策ではなく、優秀な人材の確保にも有効な手段のひとつです。たとえば、次のようなことが考えられます。

• 従業員のエンゲージメント向上
サステナビリティに取り組む企業では、社会的責任を果たしているという実感が、従業員の誇りや働きがいにつながることがあります。こうした意識の高まりは、モチベーションの向上や仕事への積極的な姿勢を生み出し、結果としてエンゲージメントの強化につながる可能性があります。その結果、業務への主体的な関与が増し、生産性や創造性の向上が期待できます。
• 魅力的な企業文化の形成
サステナビリティ経営は、企業文化をより魅力的なものにする要素の一つです。特に、環境問題や社会貢献への関心が高い若い世代にとって、持続可能な価値観を重視する企業は魅力的に映ります。こうした企業文化は、共感を生みやすく、優秀な人材を引きつける要因の一つとなり得ます。
• ブランドイメージの向上による採用力の強化
環境や社会への配慮を行う企業は、ブランドイメージが向上します。このイメージは、消費者や投資家だけでなく求職者からの評価も高くなる傾向があります。ブランドイメージの高い企業で働きたいと考える求職者は多いため、サステナビリティ経営への取り組みは、採用活動にもいい影響を与えることになるのです。

5. サステナビリティ経営を成功させるための取り組み

サステナビリティ経営を成功させるためには、急速な社会変化に対応し、持続的な成長を支えるための戦略が求められます。その中でも、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は重要な要素となります。

本章では、サステナビリティ経営を成功させるための取り組みを4つご紹介します。

  • • データに基づいた経営判断
  • • 業務プロセス自動化の推進
  • • 柔軟な組織体制の構築
  • • AIなど新技術の積極的な導入

(1)データに基づいた経営判断

サステナビリティ経営を成功させるためには、データに基づいた経営判断が欠かせません。その理由は次のとおりです。

• 透明性の確保と信頼性の向上のため
インパクト評価等でサステナビリティ関連の定量的データを抽出することで、環境負荷や社会的影響を具体的成果を数値で示すことができ、企業の責任ある姿勢を明確に伝えられます。たとえば、エネルギー消費やCO₂排出量を追跡し、年ごとの改善状況をグラフ化することで、企業の取り組みが具体的な成果に結びついていることを示すことができます。
• 規制対応とリスク管理のため
世界各国でサステナビリティ関連の開示規制が強化されています。データ分析により、企業は規制を先取りし、法令遵守のための適切な対策を講じることができます。たとえば、EUの「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」に対応するため、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量をデータで追跡することが求められます。
• 効率的な資源配分とコスト削減のため
データを用いてエネルギー使用や廃棄物処理の効率を測定することで、資源の最適化やコスト削減が可能になります。たとえば、製造業では、リアルタイムのデータを基にエネルギー使用量を最適化し、コスト削減に繋がる改善策を実行する企業も増えてきています。
• パフォーマンスの測定と改善のため
サステナビリティ目標に対する進捗状況を定期的に測定し、その結果を経営判断に反映させることで、戦略の改善が可能になります。例えば、企業が目標に設定した「CO₂削減率」をリアルタイムでトラッキングし、進捗に応じて必要な改善アクションを決定することができます。

サステナビリティ関連データに基づいた経営判断を実践することは、サステナビリティ経営をより効果的に推進し、企業の持続的成長を確実にサポートする重要な要素です。データが明確な証拠となり、企業の価値向上にも寄与するでしょう。

関連して、DXを推進し、データに基づく経営判断が可能な環境を実現された企業の事例をご紹介します。
下記よりご覧ください。

(2)業務プロセス自動化の推進

業務プロセス自動化は、サステナビリティ経営の実現に向けて多くのメリットがあるほか、企業の持続可能な成長を支える重要な要素となります。具体的な例と効果は次のとおりです。

業務プロセス自動化のメリット

業務プロセス自動化により、資源の効率的利用やエネルギー消費の最適化・環境負荷の低減が可能です。また、従業員がより価値の高い業務に集中できることで、イノベーションの促進や持続可能な事業モデルの構築にもつながります。

(3)柔軟な組織体制の構築

サステナビリティ経営において、柔軟な組織体制は企業の適応力と革新性を高め、長期的な持続可能性を支える重要な要素となります。具体的な取組みの例とその効果は以下のとおりです。

柔軟な組織体制の構築に向けた取り組み

このように、柔軟な組織体制の構築は、組織の持続可能な成長や環境負荷の軽減・災害時における業務への早期回復が期待できます。

(4)AIなど新技術の積極的な導入

AI等の最新テクノロジーを積極的に導入することで、企業はより効率的なサステナビリティ目標の達成と経済的成長が実現可能となり、サステナビリティ経営をさらに推進できます。AI導入により期待できる効果は次のとおりです。

資源の効率的利用 エネルギー配分をリアルタイムで予測・調整し、CO₂排出量を削減しつつ収益アップが可能になる
エコシステム全体の最適化 企業間のコラボレーションが促進され、サプライチェーン全体のサステナビリティ向上が期待できる
新たな解決策の創出 環境データを素早く分析し、サステナビリティに関する画期的な洞察をもたらす
製品開発の加速 新素材の研究や新デザインのシミュレーションを短時間で実施し、環境に配慮した製品開発を加速させる

AIや新技術の導入によってサステナビリティ経営を推進し、企業の長期的な競争力と環境への配慮の両立が期待できます。

6. まとめ

変化の激しい時代において、企業が持続可能な発展を遂げるためには、「ESG(環境・社会・ガバナンス)」の3つの側面を考慮し、長期的な価値創造を目指すサステナビリティ経営がかかせません。

サステナビリティ経営は、リスク管理やイノベーション促進、優秀な人材の確保など、社会に貢献しつつ企業にとってもさまざまなメリットをもたらします。また、柔軟な組織体制の構築やAIなどの新技術導入といった具体的な取り組みが成功への重要なポイントです。

社会的責任を果たしながら競争力を高めるため、サステナビリティ経営は今後の企業の成功に不可欠です。

記事監修者

安藤光展

一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会 代表理事
法政大学イノベーション・マネジメント研究センター 客員研究員
安藤光展

主な業務は、講演・研修(実績100社以上)、マテリアリティ特定支援、統合報告書およびサステナビリティサイトの第三者評価、情報開示支援全般、大学・学会での研究活動、など。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。
専門は、サステナビリティマネジメント、サステナビリティコミュニケーション(情報開示・社内浸透)。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』など多数。

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