組織を強くするクラウドERP <ProActive>
 
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コラム

2020.06.16 ♦トピックス♦

コンサルタントコラム④
デジタル化に振り回されない経営とは?

ERPがもたらした業務データと会計データの統合

デジタル化と経営を語るにあたり、企業における情報システムの変遷を振り返りたい。

2000年前後、海外のERPパッケージベンダーは、日本企業に対してERPの啓蒙活動を積極化した。それまでの日本企業の基幹システムは、それぞれの部門が、異なる時期に、異なるアーキテクチャで構築するのが当たり前であった。それに対し、海外のベンダーは、基幹業務を一つのシステム基盤で行うことを提唱した。Enterprise Resource Planning、つまりERPという思想の上陸である。

ERPパッケージは、業務データと会計データの整合性を担保する革新的なテクノロジーでもあった。ERPパッケージ上で営業部の社員が受注データを登録すると、販売可能な在庫数量が減り、売上が計上され、入金予定が書き込まれる。それまで、これらのデータ処理を、支店や工場や本社のそれぞれで、紙伝票と手入力で行ってきた世界から見ると、ERPパッケージは魔法の世界であった。

デジタル化がもたらすシステムと現実の統合

業務効率の向上という面でも、経営情報の可視化という面でも、ERPパッケージ導入は優れた処方箋であった。しかし、高価なERPパッケージを苦労して導入しても、効果がすぐに現れない企業が多かった。むしろ、システムが実態と異なるデータを表示して、かえって現場が混乱した。そもそも現場が、システムにデータを入れてくれないのである。この問題を引きずっている企業は今でも多い。だが、AIやIoT端末が現実に存在するヒトやモノを識別し、システムに最新情報を自動で入れられるようになれば状況は大きく改善するはずだ。

ERPパッケージ導入前に期待した業務効率の向上や経営情報の可視化を、デジタル化(デジタルトランスフォーメーションやDXとも呼ばれる)によって、ようやく手にすることができる。ただし、その恩恵を受けられるのは、実世界のヒトやモノをビジネスの目的に沿って数値や文字列に正しく置き換える能力を持っている企業に限定されるだろう。

デジタル化により変わる社会の動き

経営情報の扱い方もデジタル化で大きく変わる。

2000年前後のERP導入ブームの後に、BIツール導入やDWH(データウェアハウス)構築のブームがすぐに続いた。この時代には、米国小売店での事例が良く引き合いに出された。膨大な販売情報を分析した結果、週末に紙オムツとビールの売上が共に高いことが分かり、売場を覗いてみるとオムツの買い物を頼まれたお父さんがビールも買っている姿があった。そこで、オムツ売場の近くにビールを置いたところビールの売上がアップしたという逸話である。

       

ショッピングもデジタル化された今、この逸話は昔話になりつつある。昔は売場に足を運べば答えがあったのだが、今はSNSの中に答えがある。新型コロナウィルスでマスク需要が高まり紙不足になるというデマがSNSで拡散しトイレットペーパーの買占めを引き起こした現象はまさにこれである。

この令和版のトイレットペーパー買占め現象を、消費行動という視点から捉えると、デジタル化が集団行動を誘発したケースと言える。一方で、デジタル化は行動を分散化させる効果もある。GPS情報を使った自動車の位置情報はドライバー同士で共有されており、渋滞緩和に一役買っている。

デジタル化は、ヒトやモノの動きの集中化も分散化も際立たせるだろう。

デジタル化にあたって経営が注意することは?

デジタル化されたヒトやモノの情報を基幹システムに接続すると、情報システムをはじめて社内に導入したときのような混乱が生じる可能性が高い。

いまですらメールで溢れる受信箱に手を焼いている方も多いはずだ。デジタル化で瞬時にデータが更新され、詳細な情報までが手に入るようになると、その圧倒的な情報量に人間の判断がついていけないケースが多くなると予想できる。オペレーションレベルの判断もデジタル化の検討範囲に含めるべきだろう。

また、ヒトやモノの動きが分散化する傾向も、何かの拍子で突発的に集中化する傾向もどちらも際立つだろう。その際、現実感のないデータが目に映っても、デジタル化のせいで実物を目で確かめることはますます困難になると考えられる。原因を把握するためにSNS等のインターネット上の情報を追いかけることも対処として考えられるが、まず、手元にある基幹システムのデータからビジネス変化のサインをいち早く検知する仕組みづくりを優先すべきだろう。

変化の速い時代に生き残るためには、すばやく環境に適応することがより重要になる。デジタル化に向かう時計の針を誰も止めることはできない。

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
マネージャー
小山善隆

日本証券アナリスト協会 検定会員(CMA)、公認情報システム監査人(CISA)、経済産業省認定 ITストラテジスト。証券会社、シンクタンクを経て、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングに2015年入社。事業戦略立案、財務データ分析、IT導入を専門に活動。基幹システム刷新や業務変革といった組織を横断する課題に対し、政府系機関や金融機関にも助言している。

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