お役立ちコラム 卸売業DXとは?業務効率化と売上アップを実現する導入手順を紹介!

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少子高齢化や人手不足、さらには物価高騰など、卸売業界を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。こうした中、業務の非効率や属人化したオペレーションを見直し、売上の最大化とコスト削減を同時に実現する手段として注目されているのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。
本記事では、卸売業におけるDXの基本から、導入によって期待できる効果、そして実際にDXを進めるための具体的なステップまでをわかりやすく解説します。変化の波をチャンスに変えるための第一歩として、ぜひご一読ください。

なぜ卸売業にDXが求められているのか?

卸売業は長年、人と人との関係性やアナログな業務プロセスによって支えられてきた業界です。しかし、環境変化に伴い、DXへの対応が急務となっています。

業務のアナログ化が非効率を招いている

卸売業では、紙の伝票や電話・FAXによる受発注、手作業による在庫管理など、アナログな業務プロセスが多く残っています。こうした業務の非効率性が、以下のような問題を引き起こしています。

  • 人的ミスの発生:手作業による入力ミスや伝票の紛失などが頻繁に発生
  • 業務の属人化:個人の経験や知識に依存した業務プロセスが標準化されていない
  • 情報の遅延:リアルタイムでのデータ共有ができず、意思決定が遅れる
  • 過剰な業務負荷:重複入力や確認作業などの非付加価値業務に時間を費やしている

デジタル人材不足による競争力低下が問題化している

卸売業界では、デジタル技術を理解し活用できる人材の不足が深刻な課題となっています。
デジタル人材不足の主な原因は、業界の保守性や若年層採用の難しさ、既存社員のデジタルスキル向上体制の不足です。この問題は、オンラインマーケットプレイスの台頭や越境ECなどのグローバル競争激化により、競争力低下に直結しています。

SDGsやサプライチェーンリスクへの対応が求められている

近年、持続可能な開発目標(SDGs)への関心の高まりや、新型コロナウイルス感染症によるサプライチェーンの分断など、卸売業を取り巻く環境は大きく変化しています。こうした変化に対応するためにも、DXの推進が不可欠です。

SDGsへの対応

  • 環境負荷低減のためのペーパーレス化や物流の効率化
  • トレーサビリティの確保による責任ある調達の実現
  • 多様な働き方を可能にするテレワーク環境の整備

【内部リンク】持続可能な開発目標「SDGs」に、企業はどう向き合うべきか? | コラム | クラウドERP PROACTIVE-SCSK

サプライチェーンリスクへの対応

  • データに基づく需要予測による適正在庫の維持
  • 代替調達先の確保と迅速な切り替えが可能な体制構築
  • リスク情報の早期把握と共有のためのシステム整備

卸売業がDXを推進するメリットは?

卸売業にとって、DXの推進は単なる業務効率化にとどまらず、ビジネスモデル自体を変革し、新たな価値創出につながる重要な取り組みです。

受発注業務の効率化で人的リソースを最適化できる

卸売業の業務の中でも特に工数がかかるのが受発注業務です。これらの業務をデジタル化することで、大幅な効率化が可能になります。

受発注業務のデジタル化によるメリット

導入前導入後効果
電話・FAXでの注文受付オンライン受発注システム入力ミス削減、24時間受付可能
伝票の手書き・手入力データ自動連携作業時間約80%削減、人的ミス防止
紙の保管・検索電子データ管理保管コスト削減、検索時間短縮
受発注状況の把握に時間リアルタイム可視化意思決定の迅速化、顧客対応力向上

在庫管理の精度向上でコスト削減を実現できる

卸売業において在庫管理は収益性に直結する重要な業務です。DXを活用した在庫管理の高度化により、過剰在庫や欠品の課題を解決できます。

  • 需要予測の精度向上:AIによるデータ分析で季節変動や市場トレンドを加味した正確な需要予測が可能に
  • リアルタイム在庫管理:IoTセンサーやRFIDの活用により、在庫状況をリアルタイムで把握
  • 自動発注システム:設定した基準値に基づき、発注のタイミングと数量を自動で最適化
  • 在庫の可視化:ダッシュボードで在庫状況を視覚的に把握し、迅速な意思決定が可能に

顧客満足度が向上し売上拡大につながる

DXの推進は、卸売業の顧客との関係強化にも大きく貢献します。デジタル技術を活用したサービス拡充により、顧客満足度の向上と売上拡大を実現できます。

DXによる改善できる顧客サービス例

(1)情報提供サービスの高度化

  • 市場動向や消費者行動のデータ分析結果を顧客に提供
  • POS連携による販売データのリアルタイム共有と品揃え提案

(2)セルフサービス機能の拡充

  • 24時間利用可能なオンラインカタログと発注システム
  • 顧客自身による納期確認や出荷状況の追跡

(3)パーソナライズされた提案

  • 顧客の購買履歴や傾向に基づいたレコメンデーション
  • 個別の業務課題に対応したソリューション提案

卸売業DXを進める際のデメリットとは?

DXの推進には多くのメリットがある一方で、導入や運用の過程でいくつかの課題や障壁に直面することも事実です。

初期投資や導入コストがかかる

DXを推進するためには、システムやツールの導入、ハードウェアの整備、人材育成などに一定の費用が必要です。特に中小規模の卸売業者にとって、この初期投資はハードルとなることがあります。
費用対効果を最大化するためには、自社の課題解決に直結する領域から優先的に投資を行い、成果を確認しながら段階的に範囲を拡大する「スモールスタート」の考え方が効果的です。また、IT導入補助金やものづくり補助金などの公的支援制度を活用することも検討すべきでしょう。

社内の抵抗感や浸透までにかかる時間

DXの推進においては技術的な課題だけでなく、社内の抵抗感や文化的な障壁が大きな課題となることがあります。特に長年アナログな業務プロセスに慣れた従業員の中には、デジタル化に対する不安や抵抗を感じる方も少なくありません。
DXの社内浸透にはある程度の時間がかかることが想定されます。短期的な成果だけでなく、中長期的な視点で粘り強く推進することが重要です。

卸売業DX推進に役立つ具体的なデジタルツールとは?

卸売業のDXを効果的に推進するためには、自社の課題に適したデジタルツールを選定し、導入することが重要です。

BtoB ECで受発注業務をデジタル化する

BtoB EC(企業間電子商取引)の導入は、卸売業のDX推進において最も効果的な取り組みの一つです。従来の電話やFAXによる受発注業務をオンライン化することで、業務効率化とサービス向上が実現できます。
導入にあたっては、既存の基幹システムとの連携や顧客の利便性向上のためのモバイル対応が重要です。

ERPで基幹業務を一元管理する

ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業の基幹業務を統合的に管理するシステムであり、卸売業のDX推進における中核的な役割を果たします。会計、販売、在庫、購買などの業務を一元管理することで、業務効率の大幅な向上とリアルタイムな経営判断が可能になります。
近年は、クラウド型ERPの普及により、初期投資を抑えた導入が可能になっています。また、モバイル対応やAPI連携の強化により、外部システムとの柔軟な連携も容易になっています。

【内部リンク】ERPとは:導入メリットや種類、選び方のポイントを解説【入門ガイド】 | コラム | クラウドERP PROACTIVE-SCSK

またSCSKでは、経営の高度化と現場の業務効率化・自動化を支援するAIネイティブな次世代型ERP「PROACTIVE」を提供しています。PROACTIVEは、中核に「PROACTIVE AI」をおくことで、ERP システムに蓄積された売上、在庫、財務などのデータの可視化だけでなく、複雑な企業データの活用をAI によって簡単に行うことが可能です。また、卸売業をはじめとした各業界が抱える特有の経営課題に対してワンストップで解決策を提供します。

RPAでルーチンワークを自動化する

RPA(Robotic Process Automation)は、人間が行うパソコン操作を自動化するツールです。定型的で反復的な業務をロボットに任せることで、業務効率の大幅な向上と人的ミスの削減が可能になります。

卸売業DX導入の手順

卸売業におけるDXの成功には、計画的かつ段階的なアプローチが不可欠です。効果的なDX導入を実現するための具体的な手順を5つのステップで解説します。

(1) 自社の課題を洗い出し、明確化する

DX導入に向けて、まず自社の課題を洗い出し明確化します。現状の業務プロセスを可視化し、社内アンケートやデータ分析を活用して課題を整理します。さらに顧客からのフィードバックも分析し、外部視点からの課題を特定します。

(2) 具体的な目標を設定する

課題に基づいて、SMART原則を参考に具体的な数値目標を設定します。短期・中期・長期のバランスを意識し、経営戦略との整合性を確保するとともに、投資対効果(ROI)を明確にして実現性の高い目標を策定します。

(3) 導入するツールを選定する

設定した目標達成に向けて、適切なツールを選定します。課題解決力や将来的な拡張性、社員の習得しやすさを考慮し、サポート体制が充実している信頼性の高いベンダーの製品を導入します。

(4) 小規模なパイロット導入を実施する

本格展開前に小規模なパイロット導入を行います。期間や対象部署を限定し、積極的なユーザーを巻き込むことで効果検証を実施。課題を早期に発見し、本格導入に備えて迅速に対応策を整えます。

(5) 全社的な展開・定着化を図る

パイロット導入の成功を踏まえ、全社展開を段階的に進めます。経営層のコミットメントを確保しつつ、教育やトレーニングを徹底的に実施。継続的な改善サイクルを構築し、DXの定着化を促します。

卸売業のDX推進に成功した事例を紹介

食品加工機器・業務用厨房機器の総合販売商社である北沢産業株式会社の導入事例を紹介します。
同社では、販売・購買、会計、人事給与にそれぞれ別のパッケージソフトを利用してきましたが、DXの観点から他のシステムと連携が難しくなるという課題がもありました。そこで、サーバーの保守終了と現行システムの老朽化に伴いPROACTIVEに一本化、さらにEDIとBIを合わせて導入することで、属人化を解消とデジタル基盤の強化を進めています。

北沢産業株式会社 導入事例はこちら

卸売業がDXを成功させるための重要ポイントとは?

最後に、卸売業がDX化を成功させるために重要となるポイントを紹介します。

現場スタッフとの定期的なコミュニケーションを実施する

DXの成功において、現場スタッフの理解と協力は不可欠です。調査によると、DX推進に成功した企業の93%が「現場スタッフとの密なコミュニケーション」を重要な成功要因として挙げています。
現場スタッフを「変革の対象」ではなく「変革のパートナー」と位置づけ、共に進めていく姿勢がDX成功の鍵となります。

DX推進のための専任担当者やチームを設置する

DXの推進は一時的なプロジェクトではなく、継続的な取り組みが必要です。専任の担当者やチームを設置し、適切な権限と責任を付与することが重要です。
中小規模の卸売業では、専任部署の設置が難しい場合でも、「DX推進責任者」を明確に任命し、活動時間を確保することが重要です。

定期的な効果測定とフィードバック体制を整える

DXの取り組みが効果を上げているかを定期的に測定し、その結果に基づいて改善を図る循環型の体制を整えることが、持続的な成功につながります。
「活動指標」よりも「成果指標」に焦点を当て、変化の激しいデジタル技術の世界では、『完璧なプラン』よりも『素早い試行と改善の繰り返し』が効果的です。

まとめ

卸売業界は今、デジタルトランスフォーメーション(DX)という大きな変革の波に直面しており、業務効率化と競争力維持のために避けては通れない道となっています。
受発注業務の自動化、在庫管理の精度向上、顧客サービスの拡充といったメリットを享受できる一方で、初期投資や社内の抵抗感といった課題も存在します。これらを乗り越えるためには、現場スタッフとの密なコミュニケーションや専任チームの設置、効果測定といった「人」と「組織」の側面にも配慮しながら、段階的なアプローチで自社に合ったDX推進を実現していくことが重要です。

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