コラム
女性活躍推進法【2022年4月改正】について、社労士が解説
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(以下、女性活躍推進法)が2022年4月に改正されました。改正によって、企業はどのようなことに取組む必要があるのでしょうか。
今回の記事では、人事労務のエキスパートとして様々なサービスを全国に展開する小林労務が、女性活躍推進法について解説します。
目次
- 1 女性活躍推進法とは
- 2 2022年4月の改正ポイント
- 3 企業が取組むべきこと
- (1)自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析
- (2)一般事業主行動計画の策定、社内周知、外部公表
- (3)一般事業主行動計画を策定した旨の届出
- (4)取組の実施、効果の測定
- 4 改正が企業に与える影響
- (1)罰則はある?
- (2)女性活躍推進のメリットは?
- 5 おわりに
1. 女性活躍推進法とは
女性活躍推進法とは、女性が活躍できる職場環境を整備するため、2015年9月交付、同日に施行された、10年間の時限立法です。
女性活躍推進法が施行されるまでは、男女雇用機会均等法や次世代育成支援対策推進法の施行により、男女の雇用における均等の推進や仕事と家庭の両立支援に関する取組がなされていました。しかし、非正規雇用における女性の割合の高さや出産・育児期の就業率の低下を鑑み、女性の活躍を推進するため、女性活躍推進法が成立しました。
女性活躍推進法に基づき、国や地方公共団体、常時雇用する労働者数301人以上の企業は、以下の取組を行わなければなりません。
- ① 自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析
- ② その課題を解決する数値目標と取組内容を盛り込んだ行動計画の策定や公表
- ③ 自社の女性の活躍に関する情報の公表
2. 2022年4月の改正ポイント
今回の改正により、一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主から、101人以上の事業主に拡大されます。常時雇用する労働者数300人以下の企業については、これまで努力義務とされてきましたが、2022年4月以降、101人以上の企業は義務の対象となります。
3. 企業が取組むべきこと
一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象となった企業は、以下の取組を行いましょう。
【一般事業主行動計画の策定・届出】
(1)自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析
自社の女性の活躍に関する状況を必ず図1の項目を用いて把握し、把握した状況から自社の課題を分析します。
(2)一般事業主行動計画の策定、社内周知、外部公表
自社の女性の活躍に関する分析を踏まえて、計画期間、一つ以上の数値目標、取組内容、実施時期を盛り込んだ一般事業主行動計画を策定し、労働者へ周知、外部公表を行います。
(3)一般事業主行動計画を策定した旨の届出
一般事業主行動計画を策定した旨を都道府県労働局へ届け出ます。
(4)取組の実施、効果の測定
定期的に数値目標や一般事業主行動計画に基づく取組の実施状況の点検・評価をします。
【女性の活躍に関する情報公表】
自社の女性の活躍に関する状況について図2を参考に、求職者が閲覧できるように情報を公開します。
4. 改正が企業に与える影響
(1)罰則はある?
一般事業主行動計画の策定・届出を実施しなかった、または、女性活躍に関する情報公開をしていない、虚偽の情報を公表した場合について、罰則はありません。しかしながら、是正勧告等がされる可能性があります。
(2)女性活躍推進のメリットは?
一般行動計画の策定・届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する状況が優良である等、一定の要件を満たした場合に「えるぼし認定※」を受けることができます。
また、えるぼし認定企業のうち、さらに優良な企業は「プラチナえるぼし認定」を受けることができます。プラチナえるぼし認定を受けた事業主は、一般事業主行動計画の策定・届出が免除されます。
女性が働きやすい職場環境を実現するポイントとしては、育児をする女性労働者が働きやすくなるように、フレックスタイム制や時短勤務制度を取り入れる等、働き方の制度見直しが必要です。また、育児休暇に対する周りの従業員の理解を得るために、研修を実施するのも効果的です。
※えるぼし認定とは
「えるぼし認定」とは、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(以下、「女性活躍推進法」)に基づき、一定基準を満たし、女性の活躍促進に関する状況などが優良な企業を認定する制度です。
5. おわりに
2022年4月の改正で、一般事業主行動計画の策定義務の対象が拡大することにより、自社がどのような対応をすべきかを検討する企業が今後一層増加すると考えられます。
一般事業主行動計画を策定し、「えるぼし」「プラチナえるぼし」の認定を受けると、企業イメージが良くなり、採用活動等でもメリットとなります。また、社員のモチベーションにもつながることも考えられます。対象となる企業は、今後の対応策を十分に検討する必要があるでしょう。
株式会社小林労務(https://www.kobayashiroumu.jp/)
代表取締役社長 特定社会保険労務士
上村 美由紀
2006年 社会保険労務士登録
2014年 代表取締役社長就任
電子申請を取り入れることにより、業務効率化・残業時間削減を実現。
2014年に、東京ワークライフバランス認定企業の長時間労働削減取組部門に認定される。
社労士ベンダーとして、電子申請を推進していくことを使命としている。
社労士コラム
- 社会保険・労働保険の電子申請義務化の対応方法について、社労士が解説
- 電子申請義務化に関するよくある質問について、社労士が解説
- 電子申請システムの導入事例について、社労士が解説
- GビズIDと電子申請について、社労士が解説
- 電子申請義務化に向けた対応 リニューアルしたe-Govについて、社労士が解説
- 高年齢者就業確保措置について、社労士が解説
- デジタル・ガバメント実行計画について、社労士が解説
- 健康保険組合の電子申請について、社労士が解説
- 育児介護休業法の法改正について、社労士が解説
- 社会保険の法改正について、社労士が解説
- 労働保険の法改正について、社労士が解説
- ジョブ型雇用について、社労士が解説
- 女性活躍推進法【2022年4月改正】について、社労士が解説
- 【令和4年10月1日施行】産後パパ育休(出生時育児休業)について、社労士が解説
- 労働安全衛生法とテレワークにおける作業環境のポイントについて、社労士が解説
- 【2023年4月施行】法定割増賃金率の引き上げについて、社労士が解説
- ISO30414について、社労士が解説
- 労働時間管理について、社労士が解説
- デジタル社会の実現に向けた政府と企業の動きについて、社労士が解説
- 【2023年4月施行】育児休業取得状況の公表義務化について、社労士が解説
- 「男女の賃金差異」公表義務化について、社労士が解説
- 給与計算の基本的な流れ:複雑化した給与計算を効率よく正確に進めるためのポイント
- デジタル給与払いとは:導入のメリット・デメリットや導入までの流れについて、社労士が解説
- 年次有給休暇の取得促進について、社労士が解説
- 【2023年(令和5年)度】年末調整の変更点について、社労士が解説
- 賞与の計算方法:モデルケースを用いて分かりやすく解説
- 離職票の発行について、社労士が解説
- 【2023年(令和5年)度】職場のハラスメントについて、社労士が解説
- 【2024年(令和6年)4月施行】労働条件明示のルール変更について、社労士が解説
- 【2024年(令和6年)4月施行】裁量労働制の変更について、社労士が解説
- 人事労務担当者必見!2024年(令和6年)度法改正について、社労士が解説
- 【2024年(令和6年)度】労働保険の年度更新について、社労士が解説
- 【2024年(令和6年)度】算定基礎届について、社労士が解説
- 【2024年10月施行】社会保険適用拡大について、社労士が解説