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コラム

2020.07.03 ♦働き方改革♦

社労士が解説! 働き方改革時代の労務管理⑦
在宅勤務を進めるなかで顕在化した課題

新型コロナウイルス感染拡大により、急激に導入が進んだ在宅勤務ですが、通勤時間の削減、柔軟なワークススタイルの実現といった効果を感じ、感染拡大が落ち着いたあとも在宅勤務を継続・一部継続するという企業も少なくありません。一方で、急遽本格的な導入が進んだなかで、具体的に取り組むべき課題もみえてきました。今回のコラムでは、実際に在宅勤務を続けていくうえで多く寄せられている課題について紹介します。(多田国際社会保険労務士事務所 所長 多田智子)

通信費・情報通信機器等の費用負担や交通費の扱い

働き方改革の流れのなかで、オフィスに出勤せずに週に1日~2日程度の在宅勤務を実施する企業はこれまでもありました。しかし、令和2年4月に経団連(日本経済団体連合会)が公表した調査結果※1によると、緊急事態宣言発令後の新型コロナウイルス感染症への対応として、テレワークや在宅勤務を導入した企業は97.8%にも達するなど、ほとんどの企業で在宅勤務が採用されました。また、当事務所の顧問先企業の多くでは、感染拡大が終息した後も在宅勤務を継続するという企業が多くみられ、まさにテレワークが一気に加速していると言えるでしょう。

こうした流れのなか、いま多くの問い合わせを受けているのが、通信費・情報通信機器等の費用負担についてです。コロナ禍によって在宅勤務が当たり前になったことで、これらの費用の問題が顕在化してきました。在宅勤務等を行う際に、従業員に通信費や情報通信機器等の費用負担をさせる場合には就業規則に規定する必要があり、費用負担についてもあらかじめ決めておく必要があります。在宅勤務における自宅でかかる費用については、私的使用部分と業務での使用部分を分けることは難しいため、「在宅勤務手当」として支払う企業も増えています。

図:在宅勤務手当の例

A社は、今回の新型コロナウイルス限定の措置として、衛生用品の購入や光熱費・通信費などの用途のために導入しました。在宅勤務手当の目的や用途、日数によって金額設定は異なりますが、数千円を目安に検討するとよいでしょう。また、C社のように、机や椅子、モニターなどの購入のために一時金として5万円を支給している例もあります。これは、情報機器作業による労働者の心身の負担を軽くする労働安全衛生法により、従業員の健康確保を考慮した措置です。厚生労働省から「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」※2が出されているので参考にするとよいでしょう。

また、通勤交通費に関して、在宅勤務が増えることで、定期代の支給から実費支給に変更するケースが多くみられます。このとき注意しなければならないのは、労働条件の変更にあたるため、以下のような就業規則の変更が必要となることです。

<就業規則の変更例>

第〇条(通勤手当)
在宅勤務期間中の通勤交通費については、出勤日数に応じた実費と、通勤定期相当額を比較し、安価な方を支給する。
★在宅勤務(在宅勤務を終日行った場合に限る。)が週に4日以上の場合の通勤手当については、通勤定期相当額は支給せずに実際に通勤に要する額を支給するものとする。

始業・終業時刻を前後にずらす「スライド勤務」について

在宅勤務は通勤時間がなくなるため「自宅での勤務を1時間早くスタートしたい」、「通勤時間中の電車の混雑を避けるため出勤時間をずらしたい」など、所定労働時間は変えずに始業・終業時刻を前後にずらす「スライド勤務」を導入する企業も増えています。こうしたことに柔軟な対応ができるよう制度を整えておくことも重要です。また、スライド勤務を実施するときには、遅刻の有無の判断ができるよう「前日までに所属長の承認を得る」といった規定を設けるとよいでしょう。

<就業規則の変更例>

第●条(勤務時間等)
テレワーク勤務時の1日の労働時間は、原則として就業規則第〇条に規定する時間とする。
(2)前項に関わらず会社の承認を受けて始業時刻、終業時刻、休憩時間の変更をすることができる。
(3)前項の規定により所定労働時間が短くなる者の給与については、育児・介護休業規程第〇条に規定する勤務時間短縮措置等の給与の取り扱いに準ずるものとする。
(4)休憩時間については、就業規則第〇条に定めるところによる。

育児短時間勤務適用者については、短時間にした分の賃金が按分されますが、上記の(3)のようにその旨も記載しておくと柔軟性が高まります。

第●条(始業終業時間のスライド)
私的事由により始業終業時間をスライドする場合は、30分単位で、あらかじめ所属長の許可を得て行うことができる。
(2)本条の制度を利用する場合も、深夜時間帯(22:00~翌5:00)に及ぶ労働は原則として認めないものとする。

午前中は在宅、午後はオフィスに出勤という場合の移動時間

在宅勤務を進めるうえで、「午前中は家で仕事をして、午後は会社に出勤」というケースもでてくるでしょう。その際の移動時間は、労働時間になるのでしょうか? このように就業場所間の移動時間が労働時間に該当するか否かについては、使用者の指揮命令下にあるかどうかで、個別に判断されることになります。

<就業規則の変更例>

第●条(移動時間)
在宅勤務中に自宅等と会社または取引先等との間を移動した場合の移動時間は、休憩時間とする。ただし、業務上の事由により在宅勤務中に移動を命じられた場合は、当該移動に要する時間については、労働時間として扱う。

また、急に出社する必要が生じた場合に備えて、出社命令の条文も設けておくと安心です。

第●条(出社命令)
会社は、ミーティング等業務上の必要が生じた場合には在宅勤務者に出社を命じることがある。

       

在宅勤務を行う際には、上記であげたように留意点等を規定化する必要があり、その他の細かいルール等も明確化する必要があります。就業規則とは別に在宅勤務規程を作成するとともに、従業員への教育・研修を徹底するとよいでしょう。

[参考資料]

多田国際社会保険労務士事務所
所長 社労保険労務士
多田智子

2002年社会保険労務士事務所を開設。
06年に法政大学大学院イノベーションマネジメント専攻にてMBA取得。
同校にて修士論文「ADR時代の労使紛争」が優秀賞を受賞。経営方針から直結する人材戦略、グローバル化への対応をお客様と共に実現することを目指す労務分野に特化した社会保険労務士事務所。
http://www.tk-sr.jp/corporate/office_manager.html

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