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2024.01.09
ITトピックス

ホワイト500とは:健康経営優良法人の認定基準や評価ポイント・取り組み事例を解説

健康経営優良法人認定制度で、上位500法人が認定を受けられるホワイト500が注目されています。ホワイト500の認定取得は、社会問題に取り組み、働きやすい職場づくりに注力している企業として、取引先や投資家、求職者などへのイメージ向上が期待できます。

この記事では、ホワイト500の認定取得のメリットや申請の流れ、認定企業の取り組み事例を紹介します。

目次

1. ホワイト500とは

ホワイト500とは、健康経営優良法人の認定を受けた法人のうち、大規模法人部門の上位500法人を認定する制度です。ホワイト500に認定された法人は、トップランナーとして、グループ会社や取引先、関連企業、従業員やその家族などに健康経営の考え方を浸透させていく役割が求められています。

(1)健康経営優良法人認定制度とは

健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題や従業員の健康増進で優れた取り組みを行い、健康経営をとり行う法人を顕彰する制度です。

経営的な視点から従業員の健康管理を考え、健康の保持・増進につながる戦略的な取り組みを実践している法人が評価される環境を醸成するために設けられました。健康経営優良法人認定制度は、経済産業省が健康・医療新産業協議会健康投資ワーキンググループにおいて設計し、日本健康会議が認定を行っています。

「健康経営優良法人2023」では、大規模法人部門は2,658法人、中小規模法人部門は14,007法人が健康優良法人として認定されています。大規模法人部門で健康経営優良法人として認定を受けた法人の中で、評価の高い上位500法人が「ホワイト500」です。(2023年11月1日現在)

(2)健康経営の考え方が重視される理由

健康経営が重要視される背景にあるのは、日本の総人口の減少と高齢化率の上昇です。健康への投資を促し、生活習慣病などの予防や早期治療による重症化予防によって健康寿命を延ばして、医療費や介護費の増加を抑制することが重要視されています。また、生涯現役を前提とした社会システムの構築も必要です。

そして企業にとっても、健康の保持・増進によって従業員の活力が向上すれば生産性の向上につながり、ひいては業績の向上に結びつくことが期待できます。そのため健康経営は、将来の収益性を高めるための取り組みとしても注目されています。

2. ホワイト500とブライト500の違い

ホワイト500とブライト500はいずれも健康経営優良法人認定制度の一つですが、企業規模などが異なります。

健康経営優良法人認定制度において、ホワイト500は大規模法人部門の上位500法人であり、ブライト500は中小規模法人部門の上位500法人です。大規模法人部門と中小規模法人部門の区分は、業種別に従業員数、資本金または出資金額によって決められています。

また、中小規模法人部門で認定を受けるには、健康保険の保険者を通じた健康宣言事業への参加が必須です。一方、大規模法人部門の申請では健康経営度調査への回答が必須となっており、認定に関するフローや要件にも違いがあります。

3. ホワイト500の認定による企業のメリット

ホワイト500への認定、および認定を受けるための取り組みの実施によって、以下のようなメリットが得られます。

  • (1)従業員の健康維持につながる
  • (2)企業全体の生産性が向上する
  • (3)人材確保のコストを抑えられる
  • (4)優秀な人材が集まりやすくなる
  • (5)企業価値が向上して販売促進につながる
  • (6)ESG投資の観点で投資家からの評価が高まる
  • (7)自治体や金融機関から優遇措置を受けられる

(1)従業員の健康維持につながる

ホワイト500の認定を受けるには、以下のような、健康経営を推進するための施策を実施することが求められます。

  • • 健康診断の受診の推進
  • • ヘルスリテラシーの向上
  • • ワークライフバランスの推進
  • • 健康保持・増進施策
  • • 喫煙対策

例えば、「健康診断の受診率100%を目指す」「受動喫煙対策を徹底する」、あるいはスポーツクラブとの連携やスポーツイベントの開催によって「運動機会を増進する」、などが考えられます。こうした施策は、従業員の健康維持につながるでしょう。

(2)企業全体の生産性が向上する

健康増進のための施策によって個々の従業員の健康状態が良好になることで、モチベーションのアップやパフォーマンスの向上を図ることができます。結果として、会社全体の生産性の向上が期待できます。

(3)人材確保のコストを抑えられる

労働時間の適正化や、育児や介護との両立支援など、ワークライフバランスを重視した働きやすい職場環境を整えることは、従業員の離職防止に役立ちます。従業員の定着率が向上すれば、新たな人材の確保や教育のためのコストや手間の軽減が実現可能です。

(4)優秀な人材が集まりやすくなる

安心して長く働き続けやすい職場環境は、求職者が就職先・転職先に求めることが多い条件の一つです。ホワイト500の認定を受けると、ホームページや採用サイトなどにロゴマークを掲載できる他、求人広告においても従業員の健康の維持・向上や働きやすい職場づくりに力を入れていることをアピールする根拠となります。その結果、優秀な人材が集まりやすくなることもメリットの一つです。

(5)企業価値が向上して販売促進につながる

昨今では、消費者が商品やサービスを選択する際に、企業理念や社会的な取り組みを、選定基準の一つにしていることもあります。ホワイト500の認定によって、健康経営や働きやすい職場づくりに取り組んでいることが伝わり、企業イメージが向上して販売促進につながることが期待できます。

(6)ESG投資の観点で投資家からの評価が高まる

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字です。ESG投資とは、環境や社会に配慮した経営を行い、適切な企業統治が行われている企業に投資することです。

機関投資家は、このESGの視点を投資に取り入れることを原則としています。それだけでなく、社会的な課題の解決に取り組む企業こそが中長期的に成長していくという考えから、ESG投資は世界的に広まってきているのです。

健康経営はESGにおける”S”に位置づけられ、ホワイト500の認定を取得するとESG投資を行う投資家が「社会課題に配慮した企業経営を行っている」と判断する要素の一つとなることから、投資対象としての評価が高まります。

(7)自治体や金融機関から優遇措置を受けられる

ホワイト500に選定されると、一部の自治体では公共工事などの公共調達において加点評価を受けることができます。また、融資を受けるときの金利が優遇される金融機関もあるなど、企業経営上の直接的なメリットもあります。

4. ホワイト500の申請条件

ホワイト500は健康経営優良法人認定制度において大規模法人部門の上位500法人が認定されるため、この大規模法人部門の区分に該当することが申請条件となります。また、大規模法人部門への申請には健康経営度調査への回答が必要です。

大規模法人部門は、業種や法人形態によって従業員数の規定が設けられています。

5. ホワイト500の認定基準

健康経営優良法人やホワイト500には認定基準が設けられ、大規模法人部門では健康経営度調査への回答をもとに認定が行われます。

認定基準には5つの大項目があり、健康経営優良法人よりもホワイト500は厳しく、「経営理念」「組織体制」「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント」はすべて必須要件です。また、「制度・施策実行」は2つの必須要件と13項目以上の該当を求められる要件が設けられています。なお、認定基準の詳細は年度によって変更されることがあります。

(1)経営理念

ホワイト500の認定を受けるには、トップが率先して健康経営にコミットメントし、会社方針として明文化して社内への周知を図るとともに、統合報告書やCSR報告書などによる社外への発信が必要です。

トップランナーとしてリードしていくため、取引先の健康経営の状態の把握、もしくは支援を行うことが必須となっています。また、2024年度の申請においては、従業員のパフォーマンス指標の開示が要求されています。

(2)組織体制

組織体制の面では、健康経営の推進の最高責任者の役職を役員以上とすることが求められます。

加えて、健康経営に関する施策の実施にあたっては、産業医または保健師の関与が必要です。たとえば、従業員の健康課題について協議するケースや、健康経営施策の中長期的な方針を共同で策定するケースが該当します。

また、健康保険組合との協議・連携も、健康経営の推進に必要な活動とされています。健康保険組合からスコアリングレポートを通じて健康問題の認識を共有したり、中長期的な方針について協議する対応が求められています。

(3)制度・施策実行

制度・施策の実施で必須となるのは、健康経営の具体的な推進計画の策定と、受動喫煙対策への取り組みです。

この他に、「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」「健康経営の実践に向けた土台づくり」「従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策」に関わる項目のうち、13項目以上を満たすことが要件とされています。例としては、従業員の健康診断受診率100%、管理職や従業員のヘルスリテラシーの向上を図るための教育機会の設定、食生活や運動習慣の改善に向けた具体的な支援などの項目があります。

(4)評価・改善

評価・改善の面では、当該年度の健康経営の方針を決めるにあたり、昨年度までの効果検証を行うことが必須となっています。健康診断などの受診率、個々の施策の従業員参加率や参加満足度、施策認知度などの把握に加えて、生活習慣の他、睡眠時間や食生活、喫煙率などに関する意識の改善状況を検証することが必要です。

(5)法令遵守・リスクマネジメント

定期健診や50人以上の事業場でのストレスチェックの実施の他、労働基準法や労働安全衛生法への違反によって送検されていないことなど、法令を遵守していることが必須となっています。

6. ホワイト500の申請スケジュール

ホワイト500の認定を受けるための申請スケジュールは、以下の通りです。

  • (1)健康経営度調査に回答
  • (2)フィードバックシートの返送
  • (3)申請書類の提出
  • (4)健康経営優良法人認定委員会による審査
  • (5)健康経営優良法人認定委員会による認定

年度によってスケジュールが多少異なりますが、8月下旬から10月中旬が申請の受付期間で、この期間に健康経営度調査への回答を行います。認定結果が出るのは翌年の3月上旬です。

(1)健康経営度調査に回答

まずは健康経営度調査への回答を行います。

初めて健康経営度調査に回答する場合は、新規ID発行サイトでIDの発行の申請を行うと、担当者のメールアドレスにID・パスワードと健康経営度調査票のダウンロードサイトのURLが届きます。健康経営度調査票をダウンロードして健康経営に関する取り組みなどに関して回答した後、ファイルをアップロードするという流れです。

2024年度の申請では、健康経営度調査の回答期限は2023年10月13日17時ですが、新規IDの発行期限は10月12日というように、新規IDの発行は回答期限よりも早く締め切られるため注意が必要です。

(2)フィードバックシートの返送

12月上旬頃、経済産業省から、評価結果が記載されたフィードバックシート速報版が届きます。未記入の項目がある場合には、フィードバックシートの返送が必要です。

(3)申請書類の提出

評価が500位以内だった場合は、フィードバックシートに適合状況兼申請用紙が同封されています。適合状況兼申請用紙に必要事項を記入した後、日本健康会議健康経営優良法人認定委員会事務局に提出します。

(4)健康経営優良法人認定委員会による審査

ホワイト500の認定基準をもとに、健康経営優良法人認定委員会が書類による審査を行います。審査期間は2ヶ月程度です。

(5)健康経営優良法人認定委員会による審査

健康経営優良法人認定委員会による審査に問題がなければ、日本健康会議から認定内定の連絡が届きます。そして、3月にホワイト500が発表され、認定書が授与されます。

7. 【最新】ホワイト500認定企業の取り組み事例

ホワイト500の認定を目指すには、すでに認定を受けている企業がどのような取り組み行っているかを参考にすると有益です。

2022年8月22日~10月14日の期間で健康経営度調査に回答し、「健康経営優良法人2023」の認定を受けた企業は経済産業省のサイトで確認できます。

参考: 経済産業省|健康経営優良法人認定制度

ここからは、「健康経営優良法人2023」でホワイト500の認定を受けた企業の取り組み事例を紹介します。

(1)ANAホールディングス株式会社

健康経営の主な取り組み
  • • ANAホールディングス役員をチーフウェルネスオフィサー(CWO)に任命し、グループ各社でウエルネスリーダーWLを選出
  • • 既存のANA健康管理センターに加えて、グループ健康管理室を全国8ヶ所に設置
  • • 健康診断のANAグループ共通項目を作成し、全グループ社員の判断基準を統一
  • • ANAグループメンタルヘルスアドバイザー(精神科医師)を任命

ANAホールディングス株式会社を含むANAグループ9社が、「健康経営優良法人2023」のホワイト500の認定を受けました。

グループ各社のウエルネスリーダーがWLチーフウェルネスオフィサー(CWO)に報告を上げ、グループ合同経営戦略会議や取締役会に報告や課題の共有が行われる体制をとっています。ANA健康管理センターに加えて、グループ健康管理室を全国8ヶ所に設けた他、健康診断の項目・判断基準の共通化を図り、グループ一丸となって健康経営に取り組む環境が整備されています。

(2)イオン株式会社

健康経営の主な取り組み
  • • 人事・管理担当執行役副社長を推進責任者とするイオン健康推進室を設置
  • • 卒煙セミナーやオンライン禁煙プログラムなどによる卒煙のサポート
  • • 健康チャレンジ元気UPキャンペーンを実施
  • • 健康ポータルサイト「PepUp」を立ち上げ・ウェラブル端末の貸与

イオングループ株式会社では、人事・管理担当執行役副社長を推進責任者とするイオン健康推進室を設置し、総括人事企画部、グループ会社人事部門、イオン健康保険組合、労働組合などの各責任者と産業医や保健師をメンバーとして、健康維持・増進のための施策の検討・実施を行っています。

健康チャレンジ元気UPキャンペーンは、健康に関するプログラムの中から、従業員がコースを選択してチャレンジする制度です。健康改善行動のための健康ポータルサイト「PepUp」を立ち上げるなど、従業員が主体性を持って健康の維持・向上に取り組んでいく仕組みがあります。

(3)旭化成株式会社

健康経営の主な取り組み
  • • 健康経営推進室の傘下に産業保健スタッフが所属する健康管理センターを設置
  • • 産業保健スタッフ・専門機関などによる4つのメンタルヘルス不調のケア
  • • ウォーキングアプリによるウォーキング習慣の定着
  • • 特定保健指導よりも対象者を広げた「スリムアップチャレンジ企画」の実施

旭化成株式会社が特に力を入れているのは、メンタルヘルスケア不調のケアです。セルフケアのためのe-ラーニングを実施する他、e診断や健康いきいき判定シートを活用して、産業保健スタッフなどによるケアや地区ごとの分析を行っています。外部講師による研修やカウンセリングなど、専門機関によるケアも実施し、メンタル不調による休業者の低減を目指しています。

(4)SCSK株式会社

健康経営の主な取り組み
  • • スマートワークチャレンジ(月間平均残業時間20時間以内&年次有給休暇取得日数20日)
  • • どこでもWORK(在宅勤務やサテライト勤務推奨、ペーパーレス会議の推進など)
  • • 健康わくわくマイレージ(よい行動習慣と健診結果にインセンティブ支給)
  • • SCSK働きやすい職場づくり委員会の設置

SCSK株式会社では、社員の健康維持と業務品質の維持を図るため、長時間労働の是正に取り組み、スマートワークチャレンジとして月間平均残業時間20時間以内、年次有給休暇の100%取得を掲げています。従業員からは「仕事が回らなくなる」という懸念がありましたが、経営トップが率先して取引先などに理解を求め、お客様とともに働き方改革を進めています。

8. ホワイト500の認定を目指すなら労務管理の徹底を

ホワイト500の認定を目指すには、労働時間の適正化を図るとともに、長時間労働者への対応を行うため、労務管理を徹底することが重要です。一方でフレックスタイム制やリモートワークの導入によって、従来のようにタイムカードで勤怠管理を行うのは難しくなっています。

そこで、労務管理をスムーズに行うことができる勤怠管理システムの導入がおすすめです。勤怠管理システムはどこで仕事をしていても、PCやスマートフォンから業務開始・終了時間の登録が可能です。労働時間を自動集計して管理できるため、長時間労働を行う従業員を把握して対策を講じるときにも役立ちます。

9. ホワイト500に関するよくある質問

ホワイト500に関するよくある質問をまとめました。

ホワイト500は「意味がない」「信憑性がない」と言われるのはなぜ?

ホワイト500の認定によって、企業のイメージアップなどの効果があります。「意味がない」「信憑性がない」と言われるのは、一時的な取り組みだけでは従業員の維持・向上にはさほど役立たないためです。

ホワイト500に認定されただけで満足するのではなく、毎年各施策の効果検証を行い、中長期的な取り組みとして従業員の健康の向上に努めていくことが大切です。その継続によって従業員の健康に対する意識も高まり、生産性向上の相乗効果が生まれることが期待できます。

ホワイト500に認定される企業の残業時間は?

ホワイト500の認定にあたっては、労働時間の適正化や長時間労働者への対応といった項目はありますが、具体的な労働時間や残業時間による認定基準は設けられていません。ただし、労働基準法では残業時間の上限を月45時間としているため、認定を受けるための目安になるという考え方もあります。

10. まとめ

少子高齢化による生産年齢人口の減少から人手不足が顕在化している昨今では、従業員の定着や採用難が多くの企業で課題となっています。また、ESG投資が注目されるなど、企業の社会問題への取り組みが重要視される時代でもあります。
ホワイト500の認定取得や健康経営への取り組みは、従業員の健康の維持・向上に力を入れ、働きやすい職場づくりを行う企業としてのイメージの向上につながるとともに、健康度の向上によりプレゼンティーズムの改善などを通じて組織の生産性が高まることが期待できます。

コントレアワークス清水 雄介

コントレアワークス
代表
清水 雄介

横河ブリッジ及びバンダイナムコグループにおいて、採用、研修、制度設計から労組との折衝など人事実務全般を20年以上担当。
両企業グループの持ち株会社において人事制度構築、企業合併時の統合実務を担い各々で社長賞受賞。
2015年に企業側に向けたサービスを提供する人事コンサルタントとして独立。
広範な実務経験を活かし、中小から数万人の大規模組織まで、社員の生産性に着目した組織コンサルティングを実施。

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