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2024.03.11
ITトピックス

データ連携とは:方法やメリット・ツール活用がおすすめの理由を解説

データ連携とは、異なるシステムやアプリケーション間でデータを共有していく仕組みやプロセスを指します。「自社の基幹システムと他システムとのデータ連携を実現したい」「データ連携に使える便利なツールがあれば知りたい」という方も多いのではないでしょうか。この記事では、データ連携の種類やメリット、課題、データ連携に役立つツールなどについて解説していきます。

1. データ連携とは

データ連携とは、異なるシステムやアプリケーションの間でデータを共有し、有効活用することです。企業活動において、データはストレージやデータベース、クラウドサービスといったさまざまなシステム基盤上に蓄積されています。あるシステム基盤上に蓄積されているデータを別のシステム基盤上に連携することで、複数のシステムやアプリケーション間で共通的にデータを利用することが可能です。

たとえば、企業活動においては売上データや顧客データ、人事データなど、社内で共有すべきデータが多く存在します。これらのデータを異なる拠点や部署間で共有していく取り組みやプロセスがデータ連携に該当します。

2. データ連携方式の種類

データ連携の方式には、さまざまな種類があります。

主なデータ連携方式の種類と内容について、それぞれ下表にまとめました。

種類 内容
ファイル連携 CSVなどのファイルを経由してデータ連携を行う方式
データベース連携 各データベースに保管されているデータ同士を連携する方式
Webサービス連携 Web APIなどの機能を利用して異なるシステム間でデータ連携を行う方式
クラウドストレージ連携 Googleドライブなどのクラウドストレージ上のデータを他のシステムに連携する方式

3. データ連携のメリット

データ連携を行うことで、主に以下のメリットを享受できるようになります。

  • • データを組み合わせて活用できる
  • • データを一元管理できる
  • • データの整合性を維持できる

(1)データを組み合わせて活用できる

データ連携のメリットのひとつは、データを組み合わせて活用できることです。データ連携を行うことで、これまで拠点・部署ごとに個別管理されていたデータを社内全体で共有できるようになります。それにより、たとえば営業部門が持つ顧客データと製造部門が持つ製品データを組み合わせて活用することが可能です。

顧客データと製品データを組み合わせることで、顧客の要望やニーズを的確に捉えた製品開発を行えるようになるでしょう。また、顧客データと売上データを組み合わせれば、商品ごとの顧客層の把握や優良顧客の特定などに役立ちます。

(2)データを一元管理できる

データ連携を行うことで、社内でデータを一元管理できる点もメリットです。それぞれの拠点や部署で別々にデータが管理されている場合、データを収集して活用するまでに多くの手間や時間がかかってしまいます。また、データが拠点・部署ごとに個別管理されている状態では、それぞれの拠点・部署で同じデータを入力するなど非効率な作業が発生するリスクもあります。

一方で、データ連携によってデータを一元化しておくことで、データの入力や収集にかかる手間や時間を削減することが可能です。データの入力や収集にかかっていた人件費などのコストも抑えられるため、企業の収益性向上にもつながるでしょう。

(3)データの整合性を維持できる

データ連携のメリットとしては、データの整合性を維持できる点も挙げられます。データ連携によってデータの内容やフォーマットを統一しておくことで、拠点や部署が違っても常に同じデータを参照・活用することが可能です。

反対にデータ連携ができていない場合、同種類のデータであってもフォーマットの違いや更新頻度の差などによってデータの整合性が維持できなくなるリスクがあります。それぞれの部署で手作業によるデータ更新を行っている場合は、人的ミスによってデータの品質が低下してしまうおそれもあるでしょう。また、手作業でデータの整合性を保とうと工程を増やすことで業務の複雑性も増してしまい、いざデータを統合しようとした時に解消できない問題が残ってしまう可能性が高まります。

データの品質や整合性を維持し、常に正しい状態のデータを参照・活用していく上では、データ連携が重要になるのです。

4. データ連携における課題

データ連携には前述したメリットがある一方で、以下に示すような課題も存在します。

ここでは、以下の3つの課題についてそれぞれ解説していきます。

  • • フォーマットの統一に手間がかかる
  • • 異なるシステム間の連携が難しい
  • • セキュリティ面のリスクがある

(1)フォーマットの統一に手間がかかる

データ連携における課題のひとつは、フォーマットの統一に手間がかかることです。拠点や部署ごとに異なるシステムを利用している場合、データのフォーマットや算出条件、基準日も異なるケースが多くなります。同じデータでも、データの項目の条件が異なる状況は一般的によくあることです。

異なるフォーマットのデータをシステム間で連携していくためには、データを加工して統一していく必要があります。しかし、統一するためには多くの手間やコストがかかるので、データ連携を実現する上での課題となっているのです。

(2)異なるシステム間の連携が難しい

異なるシステム間の連携が困難である点もデータ連携の課題です。拠点や部署ごとに異なるシステム上でデータを保管していると、システムの仕様や機能の制約によってシステム間のデータ連携ができない可能性があります。APIが存在しない、もしくはセキュリティポリシーで直接データ連携ができない場合、APIなどを利用したデータ連携プログラムの開発が必要になり、プログラム開発の難易度とコストが上がります。

加えて、システムの規模や連携先が多くなるほど、データ連携プログラムの開発にかかる時間やコストも増加します。また、業務を円滑に進めるためには、システム間のデータ連携のタイミングや順序、頻度なども考慮しなければならないため、プログラム設計の難易度も高まるでしょう。

(3)セキュリティ面のリスクがある

データ連携においては、セキュリティ面のリスクも無視できません。たとえば、クラウド上でデータ連携を行う場合、クラウドサービスの設定ミスなどによって情報漏えいが生じるリスクがあります。

また、多くのシステム間でデータ連携プログラムを開発した結果、データ連携が複雑になり、特定の限られた関係者しか設計構造を理解していない状態になるおそれもあります。その場合、データ連携の仕組みや中身がブラックボックス化し、業務の属人化だけでなくセキュリティリスクが高まることになるでしょう。

5. データ連携の効率的な方法

先ほど述べたデータ連携の課題を解決していく方法としては、データ連携基盤の構築が有効です。データ連携基盤とは、異なる複数のシステムやアプリケーションに保管されているデータを効率的に収集・加工し、共通的に利用できるようにするための仕組みやシステムを指します。データ連携基盤を構築することで、効率的にデータの収集や加工、統一ができるため、データ連携に伴うリスクを最小限に抑えることが可能です。

データ連携基盤を構築する方法には、主に「スクラッチ開発」と「データ連携ツールの活用」の2種類があります。スクラッチ開発は、自社の要件に合わせて、データ連携基盤をゼロから構築していく方法です。一方のデータ連携ツールの活用は、データ連携基盤をゼロから構築するのではなく、既存のデータ連携ツールを活用してデータ連携基盤を作る方法となります。

スクラッチ開発とデータ連携ツールの活用は、それぞれ以下に示すような企業に向いていると言えるでしょう。

< データ連携基盤の構築方法 >

方法 向いている企業
スクラッチ開発 データ連携の要件が複雑で自社システムの独自性が特段高い企業
データ連携ツールの活用 オープンシステムで主に運用しており納期とコストを抑えたい企業

上記のとおり、データ連携の要件や手段が特殊であり、既存のデータ連携ツールでは自社に合ったデータ連携基盤を構築できない企業にはスクラッチ開発が向いています。一方、その他の多くの企業の場合は、データ連携基盤を構築する期間やコストを抑えられるデータ連携ツールの活用がおすすめです。

6. データ連携基盤を構築するツール

データ連携基盤を構築するための代表的なツールとしては、EAIツールやETLツールが挙げられます。詳しくは以降の各章で解説しますが、EAIは企業内のシステム間のデータ連携を実現する仕組みであり、ETLは企業外も含めてデータの抽出や変換、格納を行う仕組みです。

また、類似する用語としてEDI(電子データ交換)がありますが、EDIは主に受発注データのやり取りなど企業間取引において用いられる仕組みです。

(1)EAIツール

EAIとは「Enterprise Application Integration」の略であり、日本語に訳すと「企業アプリケーション統合」を意味します。EAIツールは、企業内の各業務で使用されるシステムやアプリケーションを統合し、データ連携の効率化を図る仕組みやシステムのことです。

EAIとETLの主な違いは役割です。EAIは、企業内の異なるシステムやアプリケーション間でのリアルタイムなデータ連携を目的としている一方、ETLはデータの変換やデータベースへの格納を行うために利用されます。

EAIの仕組み

EAIの主な機能と内容を下表にて簡単に説明します。

< EAIの機能 >

機能 内容
アダプタ機能 システム間を接続するためのインタフェースを提供する機能
フォーマット変換機能 データのフォーマットや形式をシステムに合わせて変換する機能
ルーティング機能 フォーマット変換されたデータを各システムに振り分ける機能
プロセス制御機能 アダプタ機能やフォーマット変換機能、ルーティング機能の各プロセスを制御してデータの流れをまとめる機能

EAIツールを導入するメリット・デメリットは、主に以下のとおりです。

< EAIのメリット・デメリット >

メリット デメリット
  • • プログラミングなしでデータ連携を簡単に行える
  • • データ連携の自動化により人的ミスが減少する
  • • 作業効率化によるコスト削減が見込める
  • • ツールの導入コストがかかる
  • • バッチ処理のような大量データの一括処理には適していない

上記より、EAIツールは企業内のシステムやアプリケーション間のデータ連携を効率化し、人的ミスの減少や作業効率化によるコスト削減を図りたい企業におすすめであると言えるでしょう。

(2)ETLツール

ETLとは「Extract」(抽出)、「Transform」(変換)、「Load」(格納・書き出し)の頭文字を取った言葉です。ETLツールは、社内外に存在するさまざまなデータを抽出し、必要に応じてフォーマットなどを変換した上で、データの格納や書き出しを行うツールを指します。

ETLの仕組み

ETLの主な機能と内容を下表にて簡単に説明します。

< ETLの機能 >

機能 内容
変換・加工(Transform)機能 データの統合や計算、その他の処理を実施して加工する機能
格納・書き出し(Load)機能 変換・加工したデータを対象のデータベースやストレージ、DWHに格納する機能

ETLツールを導入するメリット・デメリットとしては、主に以下が挙げられます。

< ETLのメリット・デメリット >

メリット デメリット
  • • 各システムから効率的にデータを抽出できる
  • • データの変換・加工にかかる時間を短縮できる
  • • データ品質の向上を図ることができる
  • • ツールの導入コストがかかる
  • • ETLツールを使いこなすまでにある程度の時間がかかる

ETLツールは、各システムに散在しているデータを効率的に抽出・加工し、データの利活用促進やデータ品質の向上を図りたい企業におすすめできます。

7. データ連携ツールの選定ポイント

EAIやETLなどのデータ連携ツールを選定する際は、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

  • • データの連携先の多さ
  • • 操作・運用のしやすさ
  • • 導入コスト・料金体系

まず、データ連携ツールの利便性を高める上では、データ連携先の多いツールを選ぶことが大切です。特に拠点や部署が多い企業にとっては、データ連携先の多さは重要な選定ポイントとなるでしょう。

また、データ連携ツールは継続的に利用していくことになるため、操作・運用のしやすさも重要です。操作が簡単で分かりやすいデータ連携ツールであれば、ITの知見が少ない担当者でも問題なく運用できるでしょう。加えて、必要な加工処理に対応しているかどうか、またデータ量に耐えられるかどうかもチェックする必要があります。

加えて、導入コスト・料金体系も大事なポイントです。EAIやETLなどのデータ連携ツールは、導入コストや運用コストがかかるため、自社の条件や予算に合わせて適切なツールを選定していくようにしましょう。

8. まとめ

データ連携とは、異なるシステムやアプリケーションの間でデータを共通的に活用することです。データ連携を行うことで、データの一元管理や整合性の担保などができます。一方で、データ連携にあたってはフォーマットの統一に手間がかかる点や異なるシステム間の連携が難しい点、セキュリティ面での考慮が必要である点などが課題となります。

データ連携を行う際は、EAIやETLなどのデータ連携ツールを活用することが効果的です。データ連携ツールの選定にあたっては、データの連携先や加工処理の要件を満たしていることや操作・運用のしやすさ、導入コスト・料金体系などを総合的に考慮し、自社に合ったツールを導入していきましょう。

株式会社Srush 取締役最高技術責任者 山崎 康久

株式会社Srush
取締役最高技術責任者
山崎 康久

大手企業のミッションクリティカルなプロジェクトに従事し、NTTではオペレーションマネージャーとして基幹システムを開発、Yahooでは大規模システムのオートメーション開発、全日本空輸では航空機の運航システムをマネージメント。前職の株式会社trippieceではCTOを務め、技術戦略のみならず、会社のグロースを牽引。その後、取締役最高技術責任者として株式会社Srushを共同創業。

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