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2022.07.11
BPO

経理財務BPOサービスの基礎知識について専門家が解説

自社の業務プロセスを外部の専門企業に継続的に委託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が注目されています。中でも、経理財務の分野に適用した経理財務BPOサービスは、今後順調に需要が伸びていく分野だとされています。本記事では、経理財務BPOサービスの基礎から、導入メリットおよび導入ステップなどについて解説します。

1. BPOサービスとは

BPOサービスの概要

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、経理や人事、総務といったバックオフィス業務や、自社には運用ノウハウがない業務を、専門性をもつ外部の企業に、まとまった単位で継続的に委託することです。専門性の高い業務を担う人財を社内で育成するには時間とコストがかかります。そこで、BPOサービスを提供している事業者に業務を委託することで、育成のための時間やコストを節減することができます。
また、BPOを活用することで、従業員を戦略的業務に集中させることが可能になり、企業としての体質強化、競争力強化を実現することが出来ます。コロナ禍においても尚、組織変革のための1つのソリューションとして年々注目度が高まっています。

BPOサービスの種類と市場規模

BPOサービスには、システム運用などの業務委託を請け負うIT系と、財務/経理・人事・調達/購買・カスタマーサポート・営業などの非IT系の分野があります。

BPOサービスの市場規模は拡大傾向にあり、矢野経済研究所によると2021年度のBPOサービス全体の市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比2.3%増の4兆5,314億9,000万円となっています。またその内訳をみると、IT系BPO市場規模が同2.0%増の2兆6,669億円、非IT系BPO市場規模が同2.6%増の1兆8,645億9,000万円と、引き続きプラス成長が予測されています。

BPOサービス市場は、コロナ禍によって一時需要が減退する傾向がありましたが、テレワークの普及などの影響で人財の再配置を行う企業が増え、再び需要が高まっています。

2. 経理財務BPOサービスとは

経理財務BPOサービスは、より高度な経理・財務のスキルを身に付けたスタッフによって、決算(月次・四半期・年次)・連結決算・債権管理・債務管理・経費・固定資産管理などの業務を代行します。

経理財務業務は、各種法律や税制が密接に関わってくるとともに法改正も頻繁に行われ、これらに対して確実に対応する必要があります。また、企業の最新の状況を把握して、ビジネス環境の変化や事業再編等にも俊敏に対応するため、柔軟な業務対応や決算のスピードアップが求められています。これらを実現するためにも、信頼できるBPOサービス事業者に業務を委託することは、有効な選択肢と言えるでしょう。

3. 経理財務BPOサービスのメリット・デメリット

メリット

<人財不足解消>

経理財務BPOサービスを導入する大きなメリットは、人財不足の解消です。専門性の高い業務のため、キャリアを積んだ人財が退職すると、次の人財を探すのに苦労することになります。BPOサービスを利用することで、人財獲得・育成のために多くの労力をかける必要がなくなります。

また昨今の新入社員は、就職した企業でやりたいことを明確に持って入社する傾向にあります。他部門と比較すると、経理部門や人事部門を希望するメンバーがそれほど多くないケースもあり、無理やり経理部に配属してもミスマッチとなるケースもあります。このように、長期的な人財獲得、育成が難しい時代になっています。
一方、経理財務BPOを提供する事業者は、多くのプロフェッショナル人財を抱えている、もしくはプロフェッショナル人財になることを目指すスタッフが多いことが特徴です。そのため、難易度の高い業務でも積極的に取り組んで標準化を試みたり、業務の効率化もBPOベンダーが自ら進めたりと、自社対応するよりも効率的に業務改善を進めることが出来ます。こうしたクオリティの高い仕事の成果を、教育・研修費などをかけずに手に入れられることが、大きなメリットの1つとなります。

<コスト削減>

コスト削減もBPO活用の大きなメリットの1つです。国内のBPOベンダーだと海外ほどの大きなコストダウンが望めないものの、首都圏在住のスタッフと地方都市在住スタッフに価格差があるのは事実です。また従業員の人件費(給与・賞与)とBPOサービス利用料の比較だけではなく、スペースコスト(家賃)やその他の福利厚生、採用・教育コストなど間接的なコストも含めて比較すると、やはりBPOベンダー活用のコストメリットは小さくはないと考えます。さらに業務の規模、繁閑、特性に合わせて活用すると、効率的なコスト削減が実現出来るケースもあります。

デメリット

<経理業務の“ブラックボックス化”>

デメリットは社内に経理財務に関するノウハウが定着しづらいこと、と言われています。いわゆる経理業務の“ブラックボックス化”です。伝票処理をBPO化して、業務の知らない管理職が育つことへの漠然とした不安は、お客様からもよくお聞きします。しかし、このようなデメリットは、マニュアル等ドキュメント類の共有や定期的にドキュメントを確認することで、ある程度解消出来ます。さらに、BPO移行時に、標準化やマニュアル化、事業部門との境界の明確化を進めれば、ブラックボックス化を防ぐのみならず、企業競争力向上と人財再配置を加速できる可能性があるのではと考えます。臨機応変に行動に動くことが出来て、数字が扱える優秀な人財をBPO化可能なルーティン業務から解放するメリットは、「殊の外大きい」と言えます。

またBPOサービスに委託するのは一時的な措置で、将来的には社内人財で経理財務業務をまわしたいというケースもあります。その場合は、BPO化に際し、どこまでわかりすいマニュアルを準備出来るか、がポイントになります。BPOから社内人財に業務を戻す際に、改めて移行のコンサルティングサービスを受けるといったことも検討すべきでしょう。

<セキュリティリスク>

経理財務データは企業にとって機密データであり、給与などは個人情報にも関わります。セキュリティに対しては十分な注意が必要です。プロフェッショナル人財が業務を行うとはいえ、機密性の高いデータを預けることには変わりはなく、万が一に備え、セキュリティリスクを低減する方策を委託事業者とともに打っておく必要があります。

4. 経理財務BPOサービス先の選び方

経理財務のBPOサービスの委託先を選ぶポイントは下記3つと考えます。
①実績
②信用力(マネジメント層関与)
③サービス利用料

①実績
経理財務BPOを選ぶ際は、やはり実績を注視すべきでしょう。単なる規模や実績だけでなく、同業種、同程度の規模、同程度の難易度の業務の実績があるかどうか。これらを確かめるには、現在の課題をぶつけてみることです。経験があれば、解決策の提示、少なくとも他社ではどうやって乗り越えているか、を回答出来るはずです。その回答で満足出来るかを社内で判断する、そうすればBPO開始後のイメージの相違、思い違いを最小限に押さえることが出来ます。

②信用力(マネジメント層関与)
経理財務BPOは、企業の「お金」を扱う業務です。業務遂行能力はもちろんのこと、前述したように会社の信用力が重要になります。決算業務や給与計算業務は、会社の重要なインフラ業務。システムはもちろんのこと、これらを運用するBPOベンダーも信用力の高い会社であることが求められます。事前にドキュメントでBPOのベンダー情報を仕入れ、確認する。またユーザー紹介で同規模、同難易度のBPOを委託している既存ユーザーの声を聞くことも信用力調査では有効です。上場していれば財務情報も客観的に把握出来ます。

運用後のマネジメント層との定期的な交流があるかどうかも重要です。プロジェクトマネージャー以上の役職者や、営業部長の顔が見えない、というのはよく聞く委託元会社の不満です。例えば重大事故やセキュリティリスクなど、万が一のトラブル対応について迅速に対応するには、マネジメント同士が会話出来ることが大きなポイントになります。最低でも年1回はマネジメント同士で交流する場を持てるかどうかも、事前チェックポイントとなります。

③サービス利用料
サービスを利用するための利用料ももちろん重要な要素です。コスト削減を目標に掲げるBPO案件も多いですが、極端に安い場合などは、将来的にBPO側が継続出来なくなる(業務が返還される)可能性もあり、注意が必要です。委託元、委託先それぞれが、リーズナブルな価格で合意出来るように、業務内容の理解や業務量(処理件数)を定期的に共有していくことが、持続可能なBPOモデル維持の鍵とも言えるでしょう。何事もベンダー任せにせず、ポイントを押さえていく管理方法がBPOの健全な維持管理には必要です。

5. 経理財務BPOサービスの導入ステップ

アウトソーシング先の選定ステップは、次の通りです。
①業務課題の整理/委託する目的・ゴールの明確化
②委託する業務範囲の策定
③事業者選定

①業務課題の整理/委託する目的・ゴールの明確化
これらを明確にしないと、事業者の選定にもズレが生じてなかなか決まらなくなりますし、事業者との具体的な契約の際にも、意思決定に時間がかかることになりかねません。BPOは単なるアウトソーシングではなく、業務変革・組織改革のための戦略の1つです。社内でも十分な議論が必要になります。

②委託する業務範囲の策定
社内の担当者と時間をかけて話し合っておく必要があります。委託する業務を決めるというよりは、「何を社員業務として残すのか」といった観点で検討を進めることが有効です。社員でないと出来ない、または、社員がやるべき業務は残し、他はBPOの可能性を探ります。BPOベンダーにとっても得意・不得意もあるため、最終判定はBPOベンダーを決めてから決めるということになります。

③事業者選定
事業者選定では、いざ運用を開始したときに齟齬(そご)が発生することのないように、複数の事業者に対し、それぞれ漏れなく疑問点を解消しておくことが重要と考えます。システム開発同様、少しでも曖昧にして運用開始後にトラブルが出てくると、追加料金の発生や、最悪の場合は契約解消をせざる得ず、その際に余計な料金などがかかってしまうリスクがあります。RFI(Request for Information:情報提供依頼書)やRFP(Request for Proposal:提案依頼書)をうまく使って、ベンダー情報を効率的に入手しましょう。
ただBPOも最終的にはピープルビジネスです。営業担当や、サービス実行責任者等と実際に会って、話をしながら、お互いのケミストリー(相性)が合うのかどうか、見極めることが大切です。BPOは短期的なコンサルティング案件とは異なり、本番開始してから、本当に長い付き合いが始まります。話しやすさや価値観の一致は重要な要素です。

6. 経理財務BPOサービス事例

業務負荷の増大にBPOサービスを活用

グループ企業で経理業務のシェアードサービス化を進めていたA社では、ビジネス拡大に伴いシェアードサービスの対象会社や業務量が増大していました。中でも、派遣社員やパート社員が担当していた伝票入力業務は、社員の定着率が低く要員の維持が困難でした。そこでBPOサービスを導入し、増大する業務工数の確保、採用等に関わるコストの最適化、業務品質の担保を実現しました。

ホールディングス制への移行に伴い新たな経理体制を構築

B社では、ホールディングスカンパニー設立にあたりBPOサービスを活用して新たな経理体制を構築しました。日次・月次会計業務に加え、新会社設立時の業務構築、単体決算業務、連結パッケージ・開示資料作成、監査対応、税額計算・税務申告まで幅広い業務でサービスを活用しています。品質向上に向けて、各種ドキュメントの整備、定期的・継続的な品質評価による課題の早期発見、必要に応じた運用プロセスの見直しなども継続的に実施しています。

7. 経理財務BPOとシステム運用

経理財務BPOサービスでは、特にシステム運用の巧拙が導入の成否を決める割合が高くなります。具体的には、システムをうまく活用することで、ミスを極力低減させ、手作業の量を減らすことにつながり業務効率がアップします。
これまで利用していたシステムを刷新して、業務プロセス自体を変更することで大幅な効率化が実現できるケースも少なくありません。優れたプラットフォームを持つシステムを利用することで、業務委託をする側も業務の見える化が可能になります。

8. まとめ

経理財務BPOは、社内のインフラ業務の外部化です。また社員の雇用にも関わってくることもあり、慎重に進めなければなりません。経験のある、信用出来る業務運用ベンダーとシステム運用ベンダーの選定、これが重要です。短期的なコスト削減だけを目指すのではなく、長期的な視点でパートナーを選ぶことをおすすめします。うまく活用して、間接部門の効率化、体質強化を実現させてください。

久茂田善晃

久茂田善晃(株式会社ビジネスブレイン太田昭和 BPO統括本部グローバルシェアードサービス事業部)
理事 事業部長(https://www.bbs.co.jp/

事業会社の経理部、外資系コンサルティングファームを経て、2013年ビジネスブレイン太田昭和に入社。上場会社・大企業向けの決算BPOや、人事総務含めたバックオフィス全体のBPOの導入等、実績多数。熊本BPOセンターの立ち上げにも尽力した。

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