コラム
ここがポイント! 電子申告の準備と注意点
2020年から資本金1億円超の企業は電子申告が義務化されます。電子申告とは、法人税などの申告書をWeb上で提出する手続きのことです。今回は、電子申告を始めるにあたって、制度の概要や注意点について解説していきます。(著:東京中央税理士法人 執行役員 竹澤直樹)
目次
- 1 電子申告の概要
- 2 電子申告のための準備
- 3 電子申告のメリット・デメリット
- 4 注意点と罰則
- 5 まとめ
1. 電子申告の概要
最初に、電子申告義務化の対象となる税目や手続きについて確認しておきましょう。
1. 対象税目
- ① 国税
- 税務署へ申告する法人税と消費税が対象となります。
- ② 地方税
- 県税事務所に申告する事業税や法人県民税と、市区町村に申告する法人市民税が対象になります。
2. 対象法人
- ① 内国法人のうち、事業年度開始の時における資本金の額等が1億円を超える法人
- ② 相互会社、投資法人及び特定目的会社(こちらは資本金が1億円以下でも対象です)
3. 対象手続き
確定申告書、中間(予定)申告書、仮決算の中間申告書、修正申告書及び還付申告書
4. 対象種類
申告書及び申告書に添付すべきものとされている書類のすべて
(決算書や科目内訳書なども紙による提出は不可)
5. 適用日
令和2年4月1日以後に開始する事業年度から適用
つまり、資本金1億円を超える会社は、国税も地方税も確定申告に関する書類はすべて電子申告で提出しなければいけないということです。
2. 電子申告のための準備
電子申告を行うために、次の4点について準備をしておく必要があります。
1. インターネット環境についての確認
電子申告を行うためには、インターネットに接続されたパソコンが必要です。ハードウェア、OS、ブラウザの3点について環境の確認を行ってください。
2. 電子証明書の取得
電子申告では、利用者が申告データに電子署名を行う必要があります。そのための電子証明書を取得しておきましょう。電子署名は紙で提出している場合の押印に該当します。
3. 開始届出書の提出
電子申告の義務化の対象となった法人は、「e-taxによる申告の特例に係る届出書」を提出しなければなりません。
この届出書は、令和2年4月1日~4月30日までの間に提出する必要があります。
4. 利用者識別番号(ID)の取得
上記とは別に、電子申告のIDやパスワードを取得するために、「電子申告の利用開始届出書」を提出します。利用開始届出書の提出期限はありませんが、税務署と都税事務所等にそれぞれ届け出をしないと申告に必要なIDがもらえないので、早めに提出しましょう。
3. 電子申告のメリット・デメリット
電子申告は「義務」となるため、損得を考えて取り組むかどうか決めるというわけにはいきません。しかし以下のあげるようなメリット・デメリットがありますので、変更点についてはしっかり把握しておきましょう。
1. メリット
① 押印や郵送が不要になる
申告書の印刷・押印・郵送といった手間はなくなります。自社の保管用としての申告書は印刷が必要ですが、各市区町村等へ郵送しなくてよくなるのは、多くの支社・支店を持つ企業にとっては便利になるでしょう。
② 何度でも申告できる
申告期限内に最終的に電子申告されたデータが提出用の申告書として取り扱われます。そのため一度提出した申告書にミスがあっても再提出が簡単に行えます。
③ 税金の支払いも簡単になる
ダイレクト納付(税務署に税金引落口座の登録をする手続き)を使えば、電子申告データを使ってワンクリックで納税が行えます。納付書に記入して銀行窓口へ行ったり、ネットバンキングで振込手続きをしたりする手間がなくなります。
2. デメリット
① 準備が大変
初めて電子申告を行う場合は、いろいろと準備が大変です。余裕をもって準備を進めておきましょう。
② 暗証番号等の管理
暗証番号を何度か間違えるとロックされてしまうので、申告期限ギリギリになって暗証番号がわからないという事態になると、申告が期限に間に合わなくなってしまいます。暗証番号はしっかり管理する必要があります。
③ 社内体制の整備
暗証番号の管理以外でも、確定申告書の作業手順などを見直す必要がでてきます。担当部署で内容を確認しながら顧問税理士にサポートしてもらいましょう。
4. 注意点と罰則
電子申告を行う上で、特に注意しなければいけないことについて説明します。
1. 紙での申告書提出が無効になる
電子申告の義務化の対象法人となった場合、紙で提出した申告書は無効なものとして取り扱われます。この場合は未提出となるため、無申告加算税の対象にもなります。
2. 税務署からの通知はない
電子申告の義務化の対象法人となった場合でも、所轄税務署からの通知などは予定されていません。自社で電子申告の義務化の対象法人に該当するか確認し、準備を行う必要があります。
3. 利用しているソフトで対応していない別表などがある場合
紙での提出が一切認められていないため、自社ソフトで対応できない別表等については国税庁が提供しているe-taxソフトを利用するなどして提出する必要があります。
一部の書類については、PDFでの提出も認められています。いずれにしても、自社が利用している申告システムが電子申告に対応しているか確認が必要です。
4. 税理士による代理送信も認められている
電子申告の義務化は送信者まで限定するものではないため、義務化対象法人であっても、税理士等が代理送信で申告書を提出することは可能です。税理士に申告を依頼している場合は、電子申告の義務化の対象法人となったことを説明し、ID取得などの準備依頼を行ってもらいましょう。IDについても税理士が代理で取得することができます。
5. まとめ
電子申告の義務化は、税務行政のコスト削減やインターネットの活用が必須となった状況を考えると、やむを得ないことといえそうです。当初の準備こそ大変ですが、2年目以降は電子申告による作業時間の短縮や、押印や郵送の手間削減により、申告がスムーズに行えるメリットを感じられると思います。電子申告の義務化の対象法人は電子申告の流れをしっかりと把握し、余裕をもって準備を進めていきましょう。
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