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2020.11.30
経理財務トピックス

取引書類の電子化(電子取引)に係る法令要件を専門家が解説!
~2020年度電子帳簿保存法改正~

令和2年度の税制改正で電子帳簿保存法施行規則が改正されました。今年度の改正では、電子取引においてクラウドサービスの利用を促進するよう法整備がされています。今後は電子取引による契約書の作成や取引書類はクラウド上で行う方法が激増することが予想されます。特にコロナ禍においてのテレワーク対応などでは、紙書類の授受や契約書作成、押印行為が在宅勤務等を実施できない要因となっています。
本稿では、企業の電子化にあたり導入が必要な電子取引に係る法令要件等について解説します。
(著:SKJ総合税理士事務所 所長 税理士 袖山 喜久造 氏)

取引書類等のデータで授受した場合には、電子帳簿保存法第10条の規定により、当該データの保存が義務付けられています。保存に当たっては法令要件に従って保存する必要がありますが、令和2年度の税制改正において、電帳法施行規則が改正され、同規則第8条第1項で規定されている電子取引に係る電磁的記録の保存にあたって行うべきデータへの措置方法に二つの方法が加わり、クラウド等で授受される取引書類の保存方法が緩和されました。電子取引データの保存に当たっては、以下に述べる要件に従って保存することが必要です。

1. 保存場所と保存期間

電子取引に係るデータは各税法に定められた保存場所において保存期間が満了するまで保存する必要があります。保存場所とは原則として納税地となりますが、データ保存の場合には、納税地でデータが閲覧できれば要件を満たします。保存期間は法人税法では原則として7年間となります。

2. データへの措置

電子取引に係るデータを保存する場合には、以下のいずれかの措置を行ったうえで保存することが規定されています。どの措置を選択するかについては、保存義務者の任意となります。

① タイムスタンプが付与されたデータを授受(令和2年度改正)

送信者側においてタイムスタンプ が付与された取引データを授受する措置です。この場合、送信者側及び受信者側においては付与されたタイムスタンプについて、検証および一括して検証できる仕組みが必要となります。

② 電子取引データの授受後遅滞なくタイムスタンプを付与

電子取引データの授受後遅滞なく、送信者側及び受信者側双方で当該取引データにタイムスタンプを付与し、当該取引データの保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておく措置です。送信者側及び受信者側においては付与されたタイムスタンプについて、ファイルごとの検証および一括して検証できる仕組みが必要となります。送信者側及び受信者側で同じ保存方法を採用することは要件ではありませんので、送信者側、受信者側でそれぞれがどのような措置により電子取引データを保存するかを選択可能です。

③ 訂正削除できないシステム等のシステムを使用して電子取引データを授受及び保存(令和2年度改正)

電子取引データを授受する場合に使用するシステムが、取引データを訂正又は削除できないシステム、または取引データを訂正又は削除を行った場合の事実及び内容を確認することができるシステムである場合、当該システムにより取引データの授受及び保存する措置です。このようなシステムを利用して、電子取引データを授受及び保存する場合には、タイムスタンプや社内規程の整備などを行う必要がありません。
昨今はクラウドシステムなどにより取引データを授受するシステムが多くなっていますが、このようなシステムを使用する場合に、システムの機能として訂正や削除データが保存される場合には、本要件が満たされることとなります。また授受された電子取引データを、変更することなくほかの文書管理システムなどで保存することも可能となります。利用するサービスにおいて、システムがこの要件を満たすかどうか、またデータ保存をほかのシステムで行う場合には、データ連携方法等の検討が必要となります。

④ 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け及び運用

授受された電子取引データについて、正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用と規程の備え付けておく措置です。当該規程は、社内規程として備付け及び運用することが必要ですが、社内で発生する電子取引データ全体を包括的に定める社内規程を整備する方法、電子取引の態様別に使用するシステム等に応じて社内規程を整備する方法のどちらかで対応することとなります。上記①から③のいずれかの措置で対応できない場合には、④の社内規程の整備により電子取引データを保存することになります。
社内規程の作成に当たっては、国税庁ホームページに掲載されている電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)に掲載されている規程例を参考に作成することができます。
なお、電子取引で使用するサービスの利用約款等において、授受する電子取引データを訂正および削除できない旨が規定されている場合には、当該サービスで授受された電子取引データについては本規程が備付け、運用されていることとなります。

3. 関係書類の備付け

電子取引データの授受するシステムが自社開発のEDIシステムやクラウドシステムなどの場合には、そのシステム開発に当たり作成された開発関係書類の備付けと保存及び、システムの概要が記載された書類の備付けを行うことが必要となります。
電子取引データの保存や操作を行うためのマニュアル等を備付け、閲覧できることも必要です。

4. 見読性の確保

保存されている電子取引に係るデータの内容を見読するために、納税地若しくは税務調査を受ける場所にパソコンやソフトウエア、プリンターなどの機器やこれらの操作説明書を備え付け、データをディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力することができるようにしておくことが必要です。

5. 検索機能の確保

データを保存する場合には、それぞれの電子取引の態様に応じて、記録事項を以下の項目等で検索できる機能を確保しておくことが必要です。

  •  取引年月日、その他の日付、取引金額、その他主要な項目(請求年月日等、請求金額、取引先名称、登録番号等)を検索の条件として設定することができること。
  •  日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
  •  二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。

電子取引に係るデータの保存形態は様々ですが、検索要件の満たすには、電子取引で使用するシステムにおいて取引データを保存する場合には、当該使用するシステムにおいて検索可能であること、電子取引で使用するシステム以外で取引データを保存する場合には、保存システムで検索機能の要件を満たすことが必要です。

SKJ総合税理士事務所 所長税理士 袖山 喜久造

SKJ総合税理士事務所
所長 税理士
袖山 喜久造

税理士・SKJ総合税理士事務所所長。中央大学商学部会計学科卒業。平成元年東京国税局に国税専門官として採用。都内税務署勤務後、国税庁、国税局調査部において大規模法人の法人税等調査事務などに従事。国税局調査部勤務時に電子帳簿保存法担当情報技術専門官として納税者指導、事務運営などに携わる。平成24年にSKJ総合税理士事務所開業を経て現職。

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