コラム
プロジェクトマネジメント:計画を立案し、品質、納期、コストをコントロール【知っておきたい経営・ビジネス用語解説】
新システムの構築にあたってカギとなるのが、プロジェクトマネジメント(PM)です。プロジェクトマネジメントは、予算や期限などさまざまな制約がある中で、決めたスケジュールに沿ってプロジェクトを完了させるために、計画立案し進行をコントロールすることを指します。DXを目的としたプロジェクトが多くなる中、これからのプロジェクトマネジメントについて考えます。
1. プロジェクトマネジメントとは
プロジェクトマネジメントとは、予算や期限の制約がある中で、求められる品質のものを納めるために必要な管理を行うことを指します。プロジェクトには「始まり」と「終わり」が明確に存在し、その過程を管理していくコントロール力や調整力が必要になります。こうしたプロジェクトマネジメントに責任を持つのがプロジェクトマネージャー(PM)です。
2. なぜプロジェクトマネジメントが必要なのか?
プロジェクトは通常、数多くのメンバーやチームが参加し、それぞれが与えられたタスクに取り組んでいます。タスクが自分のチームだけで完結するのなら問題はないでしょうが、多くの場合タスクは互いに関連しています。あるタスクの遅れは次工程のタスクのスケジュールに影響し、その遅れがコストに跳ね返ってくる場合も少なくありません。だからこそ、プロジェクトの進捗段階において全体を見渡して、スケジュール、コスト、品質をコントロールするプロジェクトマネジメントが必要になるわけです。
3. プロジェクトマネジメントの進め方
プロジェクトを進めるうえでは、大きく2つの「型」があります。ウォーターフォール型とアジャイル型です。
ウォーターフォール型
ウォーターフォール型では、滝のように上から下に向かって順番に、戻ることなくプロジェクトを進めるのが特徴です。定めたいくつかのフェーズがあり、前のフェーズが無事に完了しない限り、次のフェーズには移行しません。また、各フェーズは完了時点で終了し、前のフェーズには戻りません。
ウォーターフォール型のメリットは、全体の計画を立てやすいことです。プロジェクト開始とともに要件定義し、基本設計から詳細設計へと順に進めるため、早い段階で実施すべきことの全体を把握できます。また、工程ごとに担当者をアサインできるため、プロジェクトの進捗を管理しやすくなります。
デメリットは、進行中に問題が起きた場合に手間がかかることです。要件定義はプロジェクト開始時のみであるため、プロジェクト進行中などに仕様変更の要望が挙がった際に、対応が難しくなります。そうなると、納品にも大幅な遅延が生じてしまうことになります。
また、テストのプロセスにならないとシステムを確認できないため、その時点で仕様変更の要望が出てくる可能性もあります。手戻りが発生した際に、その工程までさかのぼらなくてはならないのは、納期の面でもコストの面でも大きな痛手となります。
アジャイル型
アジャイル型は、要望に沿ったシステムをスピーディに提供したいという考えに基づいた開発手法です。機能ごとに順次、設計・開発・テストを短期間で行い、リリースを繰り返していくイメージです。変化への柔軟な対応を特徴としているため、開発中に仕様が変わることがある、または、新機能が追加されることが予想される開発に適しています。
デメリットとしては、柔軟な手法であることにより元々の方針がぶれてしまうリスクがあることです。それを避けるためには、最初に設定した方針と実際の開発の状況に差異がないかといった方向性を定期的に確認することが求められます。
図:滝のイメージで順序立てて進めるウォーターフォール型(左)と、変更を前提に進めるアジャイル型(右)
4. DXプロジェクトのプロジェクトマネジメントのポイント
今日、多くの企業がDXへの取り組みを加速しています。では、DXプロジェクトには、どのようなプロジェクト管理が適しているのでしょうか。
基幹システムとDXプロジェクトの違い
DXプロジェクトの成功が難しい理由の1つに、プロジェクトマネジメントが従来の基幹系システムの開発プロジェクトとは異なっていることが挙げられます。基幹系システムの構築では、システム要件が確定しており、採用する技術は実績のあるもの、構築を担当するのはIT部門と業務部門です。
一方、DXのプロジェクトは、既存の延長線上ではない新たな価値の創出を目指しているため、基本的に要件が定まっていません。AIやIoTなど過去の実績が少ないものや、構築を担当するのが企画やマーケティング、商品開発など、IT部門や業務部門に限らず、社内のさまざまな部門が関係してくることが多いことです。
典型的な例では、社長や各ビジネス担当役員がトップに就き、各部門から担当人材を選出して、横断的なプロジェクトチームを組織して、DXプロジェクトを推進していきます。企画部門は新たなサービスの企画や戦略の立案などを実施し、マーケティング部門はプロモーション施策などを考えます。事業部門から選ばれた者は運用設計を担い、システム部門はデータ提供やシステム間連携などに従事します。
ここで、特に重要なポイントは、DXプロジェクトは要件が、最初の時点では明確に定まっていないという点です。作りながら考えるために変更を前提に進める必要がある、つまり、要件定義・設計・開発・テストというプロセスを順序立てて進めるウォーターフォール型の開発は適していないということになります。
DXプロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントのポイント
DXプロジェクトは、既存の自社のビジネスやシステムとは根本的に異なる、「付加価値のある何か」の獲得を目指しています。つまり、その何かを見つけることを含めてプロジェクトが存在します。
DXプロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントでは、要件定義が難しい中でも、自社のビジネスの方向性を理解した上で、DXに向けた要件をまとめる必要があります。その上で、「計画」フェーズでスコープを明確にし、工数を見積もり、計画を立て、役割分担を決めます。また、リスクを認識し、計画をプロジェクト全体で共有します。
次のフェーズは「状況の可視化」です。さらに「コンサルティング」フェーズでは、課題を見つけ、優先順位を付けます。関係者とともに解決策をまとめ、意思決定フローを明確化します。さらに、全体を通じた「リスクマネジメント」も大切で、それまでの活動から教訓を抽出し、将来のリスクを認識して予防に努める必要があります。
ここまで見てきたように、DXの実施を前提にした時のプロジェクトマネジメントは、容易ではありません。要件自体が明確ではないという不確実性を解決しながら、プロジェクトを実行していく必要があります。従来のウォーターフォール型との進め方の違いを理解して、自社にとって適切な進め方を模索しましょう。
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