コラム
クラウドERPコラム(第5回)– クラウドERPを導入・成功に導くステップとは?
クラウドERPには、初期投資や運用などにかかる費用がオンプレミスに比べて低く済むことや法令改正への対応をベンダーに任せられること、ハードウェアの購入が不要であるなど、様々なメリットが存在します。しかし、導入して自社の業務を円滑化していくためには、業務の標準化や運用体制の適正化、システム障害への対応、また投資対効果が確保できているかなど、さまざまな準備をしておく必要があります。成功に導くために企業はどのようなプロセスを踏んでいくべきでしょうか。
目次
- 1 業務分析から製品選択
- 2 業務標準化の可能性を模索
- 3 導入体制への移行
- 4 導入したシステムのチェック
- 5 運用フェーズ
1. 業務分析から製品選択
クラウドERPを導入する際の最初の関門は、自社の業務分析をすることです。海外子会社とのシステム統合、決算の早期化、働き方改革への対応のために勤怠管理の最適化など、クラウドERP導入の目的と現状の業務をすり合わせた上で、業務要件との差異が小さい製品を絞り込んでいきます。
製品が決まったら、導入計画や導入プロジェクトの立ち上げ、該当するメンバーへの教育を実施します。既にオンプレミスのERPに慣れ親しんでいる場合は、カスタマイズを前提にしない点などクラウドERPの特性を事前に頭に入れておく必要があるでしょう。
2. 業務標準化の可能性を模索
導入するクラウドERP製品が決まったら、次はその製品と自社業務とのギャップを明らかにしていくことが、混乱を生じさせないための重要な一手となります。オンプレミスとの違いは、クラウドERPではカスタマイズを前提にできないことであるため、導入後の業務をいかにクラウドERPが提供する標準的な機能へと移していけるかが鍵になってきます。
・標準化の実践
標準化の道筋が見えてきたら、次はより具体的に、それを実践するためのポイントを押さえていきます。
具体的には、ERPとしての機能、帳票、組織面、業務のスコープなどの側面を考慮しながら、標準化を実践していきます。前述の通り、オンプレミスのようにアドオンやカスタマイズがしにくいことを前提に考え、標準機能に業務を合わせる発想が必要になってきます。
3. 導入体制への移行
実際にクラウドERPを導入するフェーズにおいて、要件定義からの機能開発、結合テストまでを実践します。ERPなど現行システムがある場合、マスターデータやトランザクションデータを適切に移行する準備もしていきたいところです。特に、マスターデータについては、既存システムで運用している時点で、同じ部品に複数の名前がつけられているために部品の正確な個数を把握できない状況だったなど、これまで明確化されていなかったような重大な不具合が思わぬ形で見つかったりすることがあります。
そうなると、部品の調達体制全体の非効率性など様々な事柄が経営課題として見つかり、その解決に奔走することになり、新たなクラウドERP導入どころではなくなってしまうといった事態も考えられます。その意味で、クラウドERP導入における1つの大きなチェックポイントとも言えるかもしれません。
4. 導入したシステムのチェック
様々な課題をクリアし、クラウドERPの導入までこぎ着けました。実際に利用するためには、導入後のシステムと自社業務がうまく適合しているかを確認し、問題があればそれぞれに対応していかなくてはなりません。新たなクラウドERPを適合するようにマスターデータを作り直したり、データベース設計の見直し、ユーザーの範囲の再定義などが必要になったりするかもしれません。その上で、ユーザー全体に新システムを披露し、使いこなしてもらうように、教育していくことも重要になってきます。
5. 運用フェーズ
システムが業務要件を満たし、ユーザーにも定着すれば、導入作業はいったん完了となります。その後の運用フェーズへの準備に、できるだけ早い段階で着手します。システム障害発生時の対応フローの確立や、バックアップ体制の確認、バグ発生時の修正とテストなど、用意しておくべきことは様々あります。
ここまで、クラウドERPを導入する際に踏むべき手順を見てきました。あまりソフトウェアを変更できないクラウドERPを採用することにより、結果として現状の業務プロセスありきでつくる傾向にあるオンプレミスシステムよりも、業務の標準化が可能になります。
業務要件に事細かく対応してくれるようなシステムではなくなるとも考えられ、一時的に、ユーザーの満足度が下がるなど痛みを伴うかもしれません。しかし、それを乗り越えれば、クラウドERPの長所である、様々なシステムとの連携の容易さや、法制度への迅速な対応、海外展開のしやすさ、導入スピードといった機能面の優位性を最大限活用できるようになります。
ユーザーの理解を得ることで、クラウドERPを中核にして、人事会計のみならず、生産管理、顧客管理などさまざまな側面を横断する形で、企業として業務の全体最適化を目指せるのです。
クラウドERPコラム
- 第1回 改めて考える、ERP導入のメリット
- 第2回 進むERPのクラウドシフト
- 第3回 「働き方改革」に不可欠な経費精算や勤怠管理を、ERPで実現するメリット
- 第4回 バージョンアップでは限界!? ERPのリプレースを成功させるには?
- 第5回 クラウドERPを導入・成功に導くステップとは?