コラム
働き方改革に効果を発揮するERP活用法 ~経理業務編~
「働き方改革関連法」が2018年6月に成立し、2019年4月から施行された。同一労働同一賃金や高度プロフェッショナル制度、時間外労働の上限を月45時間、年360時間にするなど、規制を強化する内容だ。少子高齢化による人材不足という今後の経営環境の変化を加えると、人的資源の効果的な配分について、慎重に考えるべき機会となりそうだ。また、経理業務においてもさまざまな変更に対応する必要が出てくる。今回は、働き方改革に効果を発揮するERP活用法について考える。
目次
1. 煩雑さを極める現場業務
企業は経理業務においてさまざまな変更に対応する必要が出てくる。現状において残業による業務処理が常態化しているような場合、繁忙期となる月末や決算業務がある期末に業務がさらに集中することが想定される。
現場社員が直面する経費申請や精算業務の煩雑さを解消する一方で、経理担当者には業務改善の提案や分析など、より高度なタスクを課すことで「働きがい」をもってもらうことが求められてくる。こうした課題は、ヒト、モノ、カネの経営資源の全社最適を目指すERP(Enterprise Resource Planning)、AI(人工知能)やRPA (Robotic Process Automation)といった新たな技術をうまく導入していくことで、解決への糸口が見えてくる。
多くの企業において、従業員の多くが売上の向上やコスト削減につながるコア業務に追われる一方で、交通費や出張費の生産や、接待費の仮払い申請といったノンコア業務が重荷になっている。
社内のおける決済ルートの違いなどにより申請に手間取り、また承認する上司や経理部門では記載ミスなどで時間を取られ、特に経費精算業務が集中する月末になると領収書や会見伝票の処理で経理部門に負荷がかかるなど、全社的な生産性の課題といえるまで状況が深刻化しているケースも見られる。こうした定型業務の効率化を図るべく、経理業務の改革に乗り出す企業も多い。
2. 対応するべき具体的な事柄
では、具体的にはどんな課題を解決すればいいのか。その1つとして、出張や接待会合経費における承認業務、つまり決裁ルートのワークフローが挙げられる。
役職に応じて日当や宿泊費などをマスター化し、入力作業やミスを軽減すること、スマートフォンからの経費申請業務、出納予定管理での状況照会、経費精算結果と財務会計の連携自動化によるデータの一元管理などさまざま機能の改善が考えられる。
3. クラウドERP+RPAで課題が解決する
重要性を増すのが、人、モノ、カネといった経営資源の適正配分を実施するERP、特にネットワーク経由で導入しやすく、法令の改正にもすぐに対応できる「クラウドERP」の存在だ。経費申請や精算業務の手間によるロスは、オンラインで経費や仮払いを申請し、精算できる仕組みを取り入れれば軽減につながる。出張旅費の仮払いといった定型業務は、ルール下で自動処理すれば社員のミスを防止し、チェックの負荷も抑えられる。経費申請、承認、精算のワークフローを会計システムと連携すれば精算と同時に自動仕訳ができるため、経理部門の負担を軽くできるからだ。
また、最近特に注目を集めている技術がRPA(Robotic Process Automation)である。SCSKのクラウドERP「ProActive for SaaS」は、RPAのエンジンを標準搭載している。Excelなど各現場で独自につくられた業務アプリケーションを、RPAエンジンが簡単に再作成して一元的に管理したり、資料作成を自動化したりできる。
この仕組みにより、取引先が指定するフォーマットを用いた見積書や、集計表の作成といったノンコア業務は、省力化されることで従業員の労働時間を短縮する利点があり、属人的な作業によるミスの発生も抑えられる。何よりも、新たな仕組みを大がかりに導入するのではなく、既存の仕事のやり方をそのまま生かして自動化できるRPAは、 働き方改革との親和性が非常に高い。
4. SCSKの働き方改革
SCSKは自ら「ProActive」の人事・給与システムを活用して、長時間労働からの脱却などを含めた改革を実践した。
働きやすい職場作りに向け意識改革と改善を進めた結果、2017年度の平均残業時間は16.4時間と5年前よりも10時間減少、年次有給休暇の取得日数は18.8時間となり3.5日も増えた。
ここまで見てきたように、経理の面から働き方改革を推進する上で、クラウドERPは力強い味方になる。特に、鍵となるのはモバイル端末からも勤怠管理や経費精算の入力が可能になるシステムの導入、承認フローの確立だ。外出先からの勤務時間の打刻や休暇申請を可能にすることで、場所にしばられない働き方が可能になる。
働き方改革への万全な対応をした上で、財務会計との連動などを進めるなどさらなる改革を推進することで、決算の早期化など企業全体としての競争力強化につなげられるはずだ。
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