
近年、多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが加速しており、経理部門もその例外ではありません。むしろ、日々の定型業務が多く、法改正への対応も頻繁に求められる経理部門こそ、DX推進による効果を大きく期待できる領域と言えるでしょう。本記事では、経理DXをどのように進めていけば良いのか、具体的なステップや成功のポイントを分かりやすく解説します。
目次
経理DXが求められる背景とは?
人手不足と業務効率化の必要性
少子高齢化に伴う労働力人口の減少は、多くの企業にとって深刻な問題です。特に経理部門では、専門知識を持つ人材の採用が難しくなっているケースも少なくありません。このような状況下で、従来のやり方を続けていては、限られた人員で増え続ける業務量に対応しきれなくなる可能性があります。 そこで重要になるのが、業務効率化です。経理DXを推進し、手作業が多い業務や時間のかかる処理をデジタル技術で自動化・効率化することで、少ない人数でも質の高い業務を維持し、生産性を向上させることが可能になります。これは、従業員の負担軽減にも繋がり、より創造的な業務へリソースをシフトさせるための鍵となります。
課題 DXによる解決策例 人材採用難 定型業務の自動化による属人化の解消、省人化 業務負荷増大 RPAやAIを活用した業務自動化、ペーパーレス化による効率向上 残業常態化 業務プロセスの見直しとシステム化による時間短縮
法改正への対応(電子帳簿保存法・インボイス制度)
経理業務は、法律や制度の改正による影響を直接的に受ける分野です。近年では、2022年1月に改正された電子帳簿保存法や、2023年10月から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)が大きな話題となりました。これらの法改正は、請求書や領収書といった国税関係帳簿書類の電子データ保存に関する要件緩和や、仕入税額控除の仕組み変更など、経理業務のあり方に大きな変革を迫るものです。 紙ベースでの処理を続けていると、これらの法制度への対応が煩雑になり、業務負荷が増大するだけでなく、法令違反のリスクも高まります。経理DXを通じて、請求書の電子化や会計システムとの連携を進めることは、法改正へスムーズに対応し、コンプライアンスを強化する上で不可欠と言えるでしょう。
(出典:国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイト|国税庁 インボイス制度とは|国税庁)
DXによる経営戦略への貢献
経理DXは、単に日々の業務を効率化するだけに留まりません。収集・蓄積された経理データをリアルタイムに分析・活用することで、経営戦略の策定や意思決定に大きく貢献できる可能性を秘めています。 例えば、正確な月次決算データを早期に把握できれば、より迅速かつ的確な経営判断が可能になります。また、部門別や製品別の収益性を詳細に分析することで、事業ポートフォリオの見直しや新たな成長戦略の立案にも繋がるでしょう。経理部門が持つデータは、企業の「今」を映し出す鏡であり、DXによってその鏡を磨き上げることで、未来を照らす羅針盤としての役割を果たすことが期待されます。
経理DXとは何か?基本を理解する
経理DXという言葉を耳にする機会は増えましたが、具体的に何を指すのか、改めて確認しておきましょう。ここでは、経理DXの定義や目的、そして従来の経理業務と何が違うのかを解説します。
経理DXの定義と目的
経理DXとは、AI、RPA、クラウド、ビッグデータといったデジタル技術を活用して、経理部門の業務プロセスや組織、企業文化に変革をもたらし、新たな価値を創出することを目指す取り組みです。単に既存業務をデジタルツールに置き換えるだけでなく、業務の進め方そのものを見直し、より効率的で質の高い経理業務を実現することを目的としています。 具体的には、手作業による入力作業の自動化、紙ベースの書類管理からの脱却、リアルタイムなデータ収集・分析による経営判断の迅速化などが挙げられます。最終的には、経理部門の生産性向上、コスト削減、そして従業員の働きがい向上に繋げることが大きな目標となります。
【内部リンク】 経理業務をペーパーレス化するメリット・デメリットとは:DXに向けた進め方や事例を解説 | コラム | クラウドERP PROACTIVE-SCSK
従来の経理業務との違い
従来の経理業務は、紙の伝票や帳簿を中心とした手作業が多く、多くの時間と手間を要していました。例えば、請求書の発行や受領、領収書の糊付けやファイリング、仕訳の手入力、銀行振込の手続きなど、一つ一つの作業は単純でも、積み重なると膨大な業務量となります。 一方、経理DXを推進することで、これらの業務は大きく変わります。電子請求書の導入により、印刷や郵送の手間がなくなります。OCR技術やRPAを活用すれば、紙の書類からのデータ入力や仕訳作成を自動化できます。クラウド会計システムを導入すれば、場所を選ばずに業務を行え、リアルタイムで経営数値を把握することも可能です。このように、経理DXは、業務の自動化、ペーパーレス化、そしてデータの可視化・活用という点で、従来の経理業務と大きく異なります。
比較項目 | 従来の経理業務 | 経理DX |
---|---|---|
書類 | 紙の伝票、帳簿が中心 | 電子データが中心、ペーパーレス化 |
作業 | 手入力、手作業による処理が多い | 自動入力、RPAやAIによる自動処理 |
データ連携 | システム間の手動でのデータ入力や転記が多い | API連携などによるシームレスなデータ連携 |
情報共有 | 紙媒体での回覧や報告が中心 | クラウドシステムによるリアルタイムな情報共有 |
意思決定支援 | 月次決算など、データの集計・分析に時間がかかる | リアルタイムなデータ分析による迅速な意思決定支援 |
経理DX導入のメリット

経理DXを推進することは、企業に多くのメリットをもたらします。業務効率の向上やコスト削減といった直接的な効果だけでなく、経営戦略の立案にも貢献するなど、その恩恵は多岐にわたります。
業務効率の大幅な向上
経理DXの最も大きなメリットの一つは、業務効率の大幅な向上です。これまで手作業で行っていた定型業務の多くを、RPA(Robotic Process Automation)やAI(人工知能)、クラウドサービスなどを活用して自動化できます。 例えば、請求書の発行や受領、データ入力、仕訳作成、消込作業といった反復的で時間のかかる業務をシステムに任せることで、担当者はより付加価値の高い分析業務や戦略的な業務に集中できるようになります。これにより、月次決算の早期化や、残業時間の削減にも繋がり、働き方改革の推進にも貢献します。
コスト削減の実現
業務効率の向上は、結果としてコスト削減にも繋がります。手作業が減ることで人件費を抑制できるほか、ペーパーレス化を進めることで、紙代、印刷代、郵送費、保管スペースといった物理的なコストも大幅に削減できます。 また、クラウド型のシステムを導入する場合、自社でサーバーを構築・運用する必要がないため、初期投資やメンテナンス費用を抑えられるケースも多いです。長期的な視点で見れば、経理DXへの投資は、それを上回るコスト削減効果を生み出す可能性が高いと言えるでしょう。
ヒューマンエラーの防止と正確性の向上
人間が手作業で業務を行う以上、入力ミスや計算ミス、確認漏れといったヒューマンエラーを完全になくすことは困難です。しかし、経理業務におけるミスは、月次決算の遅延や誤った経営判断、さらには税務上の問題に発展する可能性もあり、その影響は決して小さくありません。 経理DXによってシステム化を進めることで、これらのヒューマンエラーを大幅に削減し、データの正確性を向上させることが可能です。例えば、AI-OCRで読み取ったデータを自動で会計システムに入力したり、RPAで定型的なチェック作業を行ったりすることで、人為的なミスの介在する余地を減らすことができます。これにより、業務品質の向上と信頼性の確保が期待できます。
リアルタイムな経営状況の可視化
従来の経理業務では、月次決算が締まらないと正確な経営数値を把握できないというケースが多くありました。しかし、市場環境が目まぐるしく変化する現代においては、より迅速な意思決定が求められます。 経理DXを推進し、クラウド会計システムやBI(ビジネスインテリジェンス)ツールなどを活用することで、売上や費用、利益といった経営に関するデータをリアルタイムに集計・分析し、可視化することが可能になります。これにより、経営者は常に最新の経営状況を把握し、変化の兆候を早期に捉え、データに基づいた的確な経営判断を下すことができるようになります。
ペーパーレス化の推進とテレワーク対応
紙ベースの業務が多い経理部門では、書類の印刷、押印、ファイリング、保管といった作業に多くの時間とコストが費やされています。また、オフィスに紙の書類が溢れている状態は、情報共有の妨げになったり、紛失や情報漏洩のリスクを高めたりする要因にもなります。 経理DXは、請求書や契約書などの電子化、ワークフローシステムの導入などを通じて、ペーパーレス化を強力に推進します。これにより、印刷コストや保管スペースの削減はもちろん、書類を探す時間の短縮、情報共有の円滑化、セキュリティの向上といったメリットが得られます。さらに、データがクラウド上で管理されるようになれば、オフィスに出社しなくても業務を行えるため、テレワークや多様な働き方への対応も容易になります。
メリット項目 | 具体的な効果の例 |
---|---|
業務効率の大幅な向上 | 定型業務の自動化、月次決算の早期化、残業時間の削減 |
コスト削減の実現 | 人件費抑制、印刷費・郵送費削減、保管スペース削減 |
ヒューマンエラーの防止と正確性向上 | 入力ミス・計算ミス削減、データ品質向上、コンプライアンス強化 |
リアルタイムな経営状況の可視化 | 迅速な意思決定支援、経営分析の高度化 |
ペーパーレス化とテレワーク対応 | 印刷コスト削減、情報共有円滑化、多様な働き方の実現 |
経理DX導入のデメリットと注意点

経理DXは多くのメリットをもたらしますが、導入にあたってはいくつかのデメリットや注意点も存在します。これらを事前に理解し、対策を講じることが、DXプロジェクトを成功させるための重要なポイントとなります。
導入・運用コストの発生
経理DXを推進するためには、新しいシステムやツールの導入が不可欠であり、それには初期費用や月額利用料といったコストが発生します。また、既存システムとの連携やデータの移行、従業員へのトレーニングなどにも費用や時間が必要となる場合があります。そのため、導入前に費用対効果を十分に検討し、自社の規模や体力に合った無理のない計画を立てることが重要です。補助金や助成金を活用することも一つの選択肢となるでしょう。
システム選定の難しさ
市場には多種多様な経理DX関連のシステムやツールが存在し、それぞれ機能や価格帯、得意とする分野が異なります。自社の業務課題や目指す姿、そして既存システムとの相性などを考慮せずに安易にシステムを選んでしまうと、期待した効果が得られなかったり、かえって業務が煩雑になったりするリスクがあります。 システム選定にあたっては、まず自社の課題を明確にし、必要な機能を洗い出すことが先決です。その上で、複数の製品を比較検討し、可能であれば無料トライアルなどを活用して実際に試用してみることをお勧めします。専門知識を持つ外部コンサルタントに相談することも有効な手段です。
従業員への教育とITリテラシーの課題
新しいシステムや業務プロセスを導入する際には、従業員がそれらをスムーズに使いこなせるようにするための教育やトレーニングが不可欠です。しかし、従業員の中には、新しいツールの操作に抵抗を感じたり、ITリテラシーに不安を抱えていたりする人もいるかもしれません。 このような状況を放置すると、せっかく導入したシステムが十分に活用されず、DXの効果が半減してしまう可能性があります。そのため、導入計画の段階から従業員への丁寧な説明と研修プログラムの準備を進め、変化に対する不安を取り除き、積極的に新しいシステムを活用してもらえるような環境づくりを心掛ける必要があります。
セキュリティリスクへの対策
経理DXによって業務データがデジタル化され、クラウド上で管理されるようになると、情報漏洩やサイバー攻撃といったセキュリティリスクへの対策がより一層重要になります。経理データには企業の機密情報や個人情報が多く含まれているため、万が一これらの情報が外部に流出したり、改ざんされたりした場合の影響は甚大です。 導入するシステムやツールのセキュリティ機能を確認することはもちろん、社内での情報管理規程の整備、アクセス権限の適切な設定、従業員へのセキュリティ教育の徹底など、多層的な対策を講じる必要があります。信頼できるベンダーを選定することも、セキュリティリスクを低減する上で重要なポイントとなります。
デメリット・注意点 | 具体的な対策例 |
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導入・運用コストの発生 |
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システム選定の難しさ |
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従業員への教育と IT リテラシーの課題 |
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セキュリティリスクへの対策 |
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経理DXの進め方:具体的な7つのステップ

経理DXを成功させるためには、計画的かつ段階的に進めていくことが重要です。ここでは、経理DXを推進するための具体的な7つのステップを紹介します。これらのステップを参考に、自社の状況に合わせて進め方を検討してみてください。
【内部リンク】 経理DXを実現するためのステップとは?目指すべき経理部門の姿と有効なソリューションを有識者が解説 | コラム | クラウドERP PROACTIVE-SCSK
ステップ1:現状業務の可視化と課題の洗い出し
経理DXの第一歩は、現在の経理業務全体を正確に把握することから始まります。どのような業務があり、それぞれにどれくらいの時間と人員を要しているのか、どのような手順で行われているのかなどを詳細に可視化します。業務フロー図を作成したり、担当者へのヒアリングを行ったりすることが有効です。 現状を把握した上で、次に「どこに非効率な点があるのか」「どのような課題を抱えているのか」「DXによって改善したい点は何か」を具体的に洗い出します。例えば、「請求書発行に時間がかかりすぎている」「手入力によるミスが多い」「月末に業務が集中し残業が多い」といった課題が明確になるでしょう。この段階で課題を具体的に特定することが、後のステップでの目的設定やツール選定の精度を高めます。
ステップ2:DX化の目的と目標(KPI)設定
現状の課題が明確になったら、次に経理DXを通じて何を達成したいのか、具体的な目的を設定します。目的は、「業務効率を〇〇%向上させる」「月次決算を〇日短縮する」「ペーパーレス化率を〇〇%にする」など、できるだけ具体的に定めることが重要です。 そして、その目的の達成度を測るための指標としてKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定します。
ステップ3:DX化する業務範囲の優先順位付け
経理業務は多岐にわたるため、全ての業務を一度にDX化しようとすると、時間もコストもかかり過ぎ、プロジェクトが頓挫してしまう可能性があります。そこで重要なのが、DX化する業務範囲に優先順位を付けることです。 優先順位を決定する際には、「課題の大きさ(改善効果の高さ)」「実現の容易さ(導入のしやすさ)」「関連部署への影響度」といった観点から検討します。一般的には、効果が出やすく、かつ比較的容易に取り組める業務から着手し、成功体験を積み重ねながら段階的に対象範囲を拡大していく「スモールスタート」が推奨されます。
ステップ4:適切なツール・システムの選定と比較検討
DX化する業務範囲と目的が明確になったら、それを実現するための具体的なツールやシステムを選定します。市場には会計ソフト、経費精算システム、請求書発行システム、RPAツール、AI-OCRなど、様々なソリューションが存在します。 選定にあたっては、まず自社の課題解決に必要な機能をリストアップし、それらの機能を備えた複数の製品を比較検討します。機能だけでなく、導入コスト、運用コスト、操作性、サポート体制、セキュリティ、既存システムとの連携性なども重要な比較ポイントです。
ステップ5:導入計画の策定と社内体制の構築
導入するツールやシステムが決まったら、具体的な導入計画を策定します。導入スケジュール、必要な予算、担当者のアサイン、データの移行方法、既存業務からの切り替え手順などを詳細に計画します。 また、経理DXは経理部門だけでなく、関連する他部署(営業部門、情報システム部門など)との連携も不可欠です。そのため、プロジェクトチームを組成し、各部署の代表者を含めるなど、社内体制を構築することが重要です。経営層の理解と協力を得ることも、プロジェクトを円滑に進める上で欠かせません。
ステップ6:スモールスタートと段階的な導入・運用テスト
いきなり全社的に新しいシステムを導入するのではなく、まずは一部の業務や部門に限定して試験的に導入し(スモールスタート)、その効果や課題点を検証することをお勧めします。この段階で、実際の業務フローに沿ってシステムが問題なく動作するか、従業員がスムーズに操作できるかなどを確認します。 テスト運用を通じて得られたフィードバックを基に、設定の調整や業務プロセスの見直しを行い、本格導入に向けた準備を整えます。この段階的なアプローチにより、大きなトラブルを未然に防ぎ、DXプロジェクトのリスクを低減することができます。
ステップ7:効果測定と継続的な改善
システムを導入して終わりではありません。導入後も定期的に効果測定を行い、設定したKPI(目標値)が達成できているかを確認し続けることが重要です。効果測定の結果、期待した効果が得られていない場合は、その原因を分析し、改善策を講じる必要があります。 また、業務環境の変化や新しい技術の登場に合わせて、システムや業務プロセスを継続的に見直し、改善していく姿勢が求められます。経理DXは一度きりのプロジェクトではなく、企業と共に進化し続ける取り組みであると認識することが大切です。
経理DXを成功させるためのポイント

経理DXは、単に新しいシステムを導入するだけでは成功しません。組織全体で取り組み、継続的に改善していく意識が重要です。ここでは、経理DXを成功に導くための重要なポイントを5つ紹介します。
経営層のコミットメントとリーダーシップ
経理DXは、経理部門だけの問題ではなく、全社的な変革を伴う取り組みです。そのため、経営層がDXの重要性を深く理解し、強力なリーダーシップを発揮してプロジェクトを推進することが不可欠です。 経営層が明確なビジョンを示し、必要なリソース(予算、人材など)を確保することで、現場の担当者は安心してDXに取り組むことができます。また、部門間の壁を越えた協力を促し、DX推進の障壁となるような課題が発生した場合には、トップダウンで解決を図ることも経営層の重要な役割です。
現場担当者の巻き込みと意識改革
実際に日々の経理業務を行っているのは現場の担当者です。彼らの意見やアイデアを吸い上げず、トップダウンだけでDXを進めようとすると、現場の抵抗に遭ったり、導入したシステムが十分に活用されなかったりする可能性があります。 DXの計画段階から現場担当者を巻き込み、現状の課題や改善要望をヒアリングすることが重要です。また、DXの目的やメリットを丁寧に説明し、新しいシステムや業務プロセスに対する不安を取り除き、主体的に取り組んでもらえるような意識改革を促すことも大切です。
自社に合ったツール選びとベンダーとの連携
市場には多種多様な経理DXツールが存在しますが、自社の規模や業種、業務内容、そして解決したい課題に合致したツールを選定することが成功の鍵となります。高機能なツールであっても、自社にとって不要な機能が多かったり、操作が複雑すぎたりすると、かえって非効率になることもあります。 ツールの選定と合わせて、信頼できるベンダーを選ぶことも重要です。導入支援だけでなく、導入後のサポート体制や、将来的な機能拡張のロードマップなどを確認し、長期的なパートナーとして連携できるベンダーを選びましょう。
SCSKでは、AI ネイティブな次世代型 ERPを中核におき、グループのさまざまな知財や業務ノウハウを組み合わせて提供するデジタルオファリングサービス「PROACTIVE」を提供しています。会計をはじめ、人事給与、販売・生産管理まで、各領域の業務課題に解決策を提供する「業務特化型オファリング」と、卸・商社、製造、建設、サービス業向けのベストプラクティスと組み合わせ、各業界が抱える特有の経営課題に対してワンストップで解決策を提供する「業界特化型オファリング」により、「業務効率化・自動化」や「高度な経営判断」を実現します。導入企業数は 7,300 社を超え、多くのお客様にご利用いただいています。
導入して終わりではなく、定着化と改善を続ける意識
新しいシステムを導入しただけで満足してしまい、その後のフォローアップを怠ると、せっかくのDX投資が無駄になってしまうことがあります。システムが現場に定着し、効果を最大限に発揮するためには、導入後の継続的な取り組みが不可欠です。 定期的に利用状況や効果をモニタリングし、課題が見つかれば速やかに改善策を講じます。また、従業員からのフィードバックを収集し、システムの使い勝手向上や業務プロセスの見直しに活かしていくことも重要です。法改正や事業環境の変化にも柔軟に対応できるよう、常に改善を続ける意識を持ちましょう。
セキュリティ対策の徹底
経理DXを進める上で、情報セキュリティ対策は最優先事項の一つです。請求書データや顧客情報、財務情報など、経理部門が扱うデータには機密性の高いものが多く含まれています。これらの情報が漏洩したり、改ざんされたりすると、企業は深刻なダメージを受ける可能性があります。 導入するシステムやツールが十分なセキュリティ機能を備えているかを確認することはもちろん、社内での情報管理ルールの策定、アクセス権限の適切な設定、従業員へのセキュリティ教育の実施など、多角的な対策を講じる必要があります。特にクラウドサービスを利用する場合は、データの保存場所や管理体制についても十分に確認しておきましょう。
経理DXで対象となる主な業務領域
経理DXは、経理部門の様々な業務に適用可能です。ここでは、特にDX化による効果が期待できる主な業務領域と、具体的な取り組み例を紹介します。自社の課題と照らし合わせながら、どの業務からDXに着手すべきか検討する際の参考にしてください。
請求書発行・受領業務のデジタル化
請求書の発行や受領は、多くの企業で依然として紙ベースで行われている業務の一つです。しかし、印刷、封入、郵送といった手作業は時間とコストがかかり、受け取った請求書の処理も同様です。 電子請求書発行システムを導入すれば、請求書データの作成から送付までをオンラインで完結でき、大幅な効率化とコスト削減が実現します。また、受け取る側も、電子データとして請求書を受領することで、その後の会計処理への連携がスムーズになります。インボイス制度への対応という観点からも、請求書業務のデジタル化は急務と言えるでしょう。
経費精算業務の効率化
従業員の経費精算も、申請者、承認者、経理担当者のそれぞれに手間と時間がかかる業務です。領収書の糊付けや申請書の作成、上長による承認、経理部門でのチェックと仕訳入力、そして振込処理といった一連のプロセスは、非効率の温床となりがちです。 経費精算システムを導入することで、スマートフォンアプリからの領収書撮影・申請、ワークフローによるオンライン承認、会計ソフトへの自動仕訳連携などが可能になります。これにより、申請から精算までのリードタイム短縮、入力ミスの削減、ペーパーレス化によるコスト削減といった効果が期待できます。
入金消込・債権管理の自動化
売掛金の入金確認と消込作業は、特に取引件数が多い企業にとっては煩雑で時間のかかる業務です。振込名義の不一致や一部入金など、イレギュラーなケースへの対応も経理担当者の負担となっています。 AIを活用した入金消込システムを導入することで、銀行の入金データと請求データを自動で照合し、消込作業を大幅に効率化できます。これにより、人的ミスの削減や早期の未収金把握が可能となり、債権管理の精度向上にも繋がります。
仕訳入力・会計処理の自動化
日々の取引データを会計ソフトに入力する仕訳作業は、経理業務の基本でありながら、手作業に頼っていると多くの時間を要します。また、入力ミスは決算数値の誤りにも繋がるため、正確性が求められます。 AI-OCR(光学的文字認識)を活用すれば、紙の領収書や請求書から文字情報を読み取り、会計システムに自動で入力することができます。また、銀行口座やクレジットカードの取引明細を自動で取り込み、仕訳候補を提案してくれる会計ソフトも増えています。これらの技術を活用することで、仕訳入力にかかる時間を大幅に削減し、経理担当者はより分析的な業務に注力できるようになります。
決算業務の迅速化と高度化
月次決算や年次決算は、経理部門にとって最も重要な業務の一つですが、多くの企業で資料収集やデータ集計、チェック作業に追われ、早期化が課題となっています。 クラウド型の会計システムや連結決算システムを導入し、各システム間のデータ連携を強化することで、決算業務のプロセスを大幅に効率化し、迅速化を図ることができます。また、BIツールなどを活用してリアルタイムに業績データを分析することで、単に数値をまとめるだけでなく、経営判断に資する質の高い情報提供を行うなど、決算業務の高度化も期待できます。
業務領域 | DX化の具体的な取り組み例 | 期待される効果 |
---|---|---|
請求書発行・受領業務 | 電子請求書発行システムの導入、受領請求書のAI-OCRによるデータ化 | 業務効率化、コスト削減、ペーパーレス化、インボイス制度対応 |
経費精算業務 | 経費精算システムの導入、スマートフォンアプリ連携、ワークフロー承認、会計ソフト連携 | リードタイム短縮、入力ミス削減、ペーパーレス化、内部統制強化 |
入金消込・債権管理 | AI搭載入金消込システムの導入、銀行口座連携 | 消込作業の自動化、人的ミス削減、未収金早期把握、債権管理精度向上 |
仕訳入力・会計処理 | AI-OCRによる証憑読み取り、銀行・カード明細自動取込、会計ソフトの自動仕訳機能活用 | 入力作業時間の大幅削減、ヒューマンエラー防止、月次決算早期化 |
決算業務 | クラウド会計システム導入、連結決算システム導入、BIツール活用によるデータ分析・可視化 | 決算早期化、業務効率化、分析業務の高度化、経営判断への貢献 |
まとめ
本記事では、経理DXの進め方について、その背景から具体的なステップ、成功のポイント、そして対象となる業務領域まで幅広く解説しました。経理DXは、単なる業務効率化に留まらず、企業の競争力強化や持続的成長に不可欠な取り組みです。 ご紹介した内容を参考に、まずは自社の現状課題を洗い出し、小さな一歩からでも経理DXへの取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。未来の経理部門を創造し、企業価値向上に貢献していきましょう。