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コラム

2020.06.16 ♦会計♦

コンサルタントコラム③
経理部が押さえておきたい管理会計の勘所

優れた管理会計はリスクを検知する

経営を飛行機操縦に例えて、管理会計レポートを速度計や燃料計といった計器が並ぶ「ダッシュボード」に見立てることがある。各事業の状態を手に取るように把握でき、打つべき施策が自然と見えてくるダッシュボードが経営には不可欠だ。

経営環境が追い風のときも向かい風のときも、常に企業はリスクに曝されている。事業継続の観点では、事業がどのようなリスクにどれだけ曝されているかをきちんと識別できるダッシュボードを備えておきたいものだ。ダッシュボードが備えるべき指標はなにか。それは、最悪な状態である倒産のメカニズムを理解すれば自ずと明らかになる。

倒産に至る3つのパターンから説明したい。

適応失敗型の倒産

一つ目のパターンは、市場の縮小、競合の攻勢、代替技術の出現などにより粗利益が縮小し、販管費及び一般管理費、借入金の利払いといった経費を賄えなくなり倒産や事業譲渡に至るというものだ。カメラフィルムで一世を風靡したコダック社、通信機器の雄であったモトローラ社などがこの例だ。新しいニーズや技術の波に乗り遅れれば、世界的な大企業であっても生き残ることは難しい。

過剰投資型の倒産

二つ目のパターンは、積極的な商品仕入れや工場の設備投資を行なったが、見込みが外れて少ししか売れず、仕入れや設備などへの過剰な投資代金を支払えなくなるというものである。創業後の数年で事業譲渡するベンチャー企業はこのパターンである。

連鎖倒産

三つ目のパターンは、売上があって利益もあるが、取引先が倒産して売上債権を回収できず、仕入債務等の支払いができなくなるというものである。倒産が新たな倒産を引き起こす状態は連鎖倒産と呼ばれる。倒産の危機に瀕した大企業は、公的資金投入や日銀特融などによって延命策が講じられるが、その理由は連鎖倒産を回避するためである。

倒産リスクを検知する管理会計とは?

管理会計では、売上高、売上原価、粗利、経費、営業利益をモニタリングすることが多いと思う。これらだけでも適応失敗型倒産の予兆は検知できるが、過剰投資型の倒産や連鎖倒産の予兆を検知することは難しい。倒産リスクを幅広く検知するためには、在庫残高、売上債権残高、仕入債務残高もモニタリング対象に加える必要がある。

分析のヒントを次に示すので、活用してみてほしい。

1. 売上高と粗利の推移 売上高や粗利の減少傾向が続く場合、自社の競争力もしくは業界全体の成長力が低下している可能性が高い。マーケットやプロダクトの見直しを含めた大胆な施策を用意しておくことが望ましい。また、売上高を従業員数で割った「一人当たり売上高」の推移をみることも重要だ。売上高が伸びていても一人当たり売上高が減少傾向にある場合、その理由を調べたうえで今後の見通しを立てる必要がある。
2. 粗利と経費の推移 粗利が減少傾向だが経費が高止まりしている場合、経費規程を厳しく見直すことも一考であろう。粗利よりも経費の方が大きい状況ならば、聖域なくコストカットを断行すべきだ。もちろん、経営者の経費支出も。
3. 売上高と在庫残高の推移 売上高に比べ在庫残高が突出して積み上がる場合、販売見込みの確度について現場に確認をするべきだ。受注分の在庫発注であっても、取引条件によっては返品のリスクがある。額が大きいならば、事業責任者や経理部は、その取引条件まで把握しておくことが望まれる。逆に、在庫残高が少なすぎる場合は、機会損失が発生している可能性を疑うべきだ。
4. 売上高と売上債権残高の推移 売上高に比べて売上債権残高が突出して積み上がる場合、その取引先の信用情報を確認するべきだ。さらに、支払いまでの期間が異常に長い取引については、取引先の与信リスクだけでなく、取引の実在性を含めての確認が必要だ。なお、売上高と売上債権残高の推移には、季節性の変動がみられる事業もあるので、各事業の特性を意識しながら異常値を検出するのが望ましい。
5. 売上債権残高と仕入債務残高の推移 仕入債務残高が取り崩される(現預金が出ていく)タイミングと売上債権残高が積み上がる(現預金が入ってこない)タイミングが同じとき、資金ショートは起こりやすい。支払条件や入金条件の見直しにより、入金があってから支払を迎えられるように資金繰りを改善させたい。

上述の指標は、買う、作る、売るといった営業循環を把握する目的で選定したものである。これらの指標は経営分析の一例にすぎないので、工夫しながら自社に適したダッシュボードを構築していただきたい。

経理部は会社のためにどう変革するべきか?

自社の経営環境や財務状況を鑑み、自社に適したダッシュボードを構築するのが経理部の本来の仕事であるはずだ。とはいえ、仕訳伝票入力や残高照合等の日々の業務が忙しく、ダッシュボード構築や計数分析に時間を割くことができないという経理部も多いだろう。その場合は、「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)導入によって定例業務の負荷を下げる」という足元の課題にも目を向けつつ、「価値ある情報を経営に提供する」という目標にも挑むことをお勧めしたい。

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
マネージャー
小山善隆

日本証券アナリスト協会 検定会員(CMA)、公認情報システム監査人(CISA)、経済産業省認定 ITストラテジスト。証券会社、シンクタンクを経て、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングに2015年入社。事業戦略立案、財務データ分析、IT導入を専門に活動。基幹システム刷新や業務変革といった組織を横断する課題に対し、政府系機関や金融機関にも助言している。

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