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2023.03.29
人事労務トピックス

【2023年4月施行】育児休業取得状況の公表義務化について、社労士が解説

労働者が1,000人を超える企業は、育児休業等の取得状況を年に1回公表することが義務付けられます。施行は2023年4月であり、前事業年度の取得率が対象となるため、早めの対応が必要です。
今回の記事では、人事労務のエキスパートとして様々なサービスを全国に展開する小林労務が、育児休業取得状況の公表義務化の、対応リストと算出方法について解説します。

1. 育児休業をめぐる昨今の状況

2021年度の育児休業の取得率は、女性が85.1%、男性が13.97%となっています。男性の取得率は9年連続で上昇しているものの、女性との差は大きく、政府が掲げる2025年に30%という目標には及ばない状況です。2022年4月から段階的に施行されている改正育児・介護休業法により、育児休業はより柔軟な制度になりました。こうした取り組みが、取得率に今後どれほどの影響を与えるのか、注目したいところです。

2. 育児休業とは

ここで育児休業について改めて確認しておきましょう。
育児休業は、子を養育する労働者が、育児・介護休業法に基づき休業できる制度です。

(1)育児休業制度の概要

育児休業は、子が1歳(保育所などに入所できない等の理由がある場合には最長で2歳)になるまで取得可能です。父母がともに育児休業を取得する場合には、子が1歳2か月になるまで取得期間が延長される「パパ・ママ育休プラス」という制度もあります。

さらに、2022年10月には、前述の育児休業とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して休業できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」も創設され、育児休業は取得しやすい制度へと変化しています。

(2)対象者

育児休業の対象者は、原則として1歳に満たない子を養育する労働者で、性別は問いません。パートやアルバイトのような短時間勤務の方でも、期間の定めのない雇用契約であれば育児休業を取得することができます。また、有期雇用であっても、申出時点で、子が1歳6か月に達する日までに雇用期間が満了することが明らかになっていない場合には休業可能になります。

(3)産前産後休業、育児目的休暇との違い

出産・育児に関する法制度として、育児休業以外に産前産後休業や育児目的休暇があります。
産前産後休業は、産前は6週間(双子以上は14週間)以内、産後は8週間以内と、労働基準法に定められています。産前休業は請求を前提にしていますが、産後休業は請求の有無に関わらず、産後6週間は働くことができません。ただし、6週間経過後は、本人が希望し、医師が支障ないと認めた場合、就業可能です。

また、育児目的休暇は、育児・介護休業法に定めがあります。育児目的で利用できる休暇制度のことで、配偶者の出産休暇や、子の入園式などに参加するための休暇等が該当します。この休暇は、後述する今回の公表の対象に含めることが可能です。産前産後休業や育児休業が義務であることに対し、育児目的休暇は努力義務となっているため、会社が自由に設定できる点に大きな違いがあります。

3. 育児休業取得状況の公表と対応方法

2023年4月から、常時雇用される労働者が1,000人を超える会社には、育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられます。

(1)対象となる企業

常時雇用される労働者が1,000人を超える会社が対象となります。「常時雇用する労働者」とは、正社員だけでなく、パート、アルバイトといった名称に関わらず事実上期間の定めなく雇用されている労働者を言います。一定の期間を定めて雇用されていても、雇用期間が反復更新されていて過去1年以上雇用されている人や、1年以上雇用が見込まれる人も該当します。
また、1,000人を下回ることがあっても、一時的なものであれば対象となります。ただし、1,000人を超えた時点から公表が義務付けられますので注意が必要です。

(2)公表内容

公表する内容は、次の①または②のいずれかです。

① 男性の育児休業等の取得割合
② 男性の育児休業等と育児目的休暇の取得割合

取得割合は、次の計算式で算出します。

「育児休業等」には、新設された出生時育児休業(産後パパ育休)を含みます。また、「育児を目的とした休暇制度」には、法律で定められた育児休業や子の看護休暇、労働基準法上の年次有給休暇は含めず、就業規則等で定められた育児を目的とした休暇が該当します。

(3)公表の時期と方法

公表は、「インターネットの利用やその他適切な方法により行うこと」とされています。一般の方が閲覧できるよう、自社のホームページや、厚生労働省が運営するwebサイト「両立支援のひろば」などを通じて行います。

公表の時期は、公表前事業年度の終了後、おおむね3か月以内です。事業年度が4月1日から3月31日であれば、2023年6月末までに公表する必要があります。

4. 算出上の注意点

(1)分割取得した場合

休業や休暇を分割して取得した場合でも、同一の子に対するものであれば1人として数えます。
例えば、産後パパ育休と育児休業のどちらも取得した場合や、育児休業を2回に分割した場合でも、同じ子について取得していれば1人となります。

(2)事業年度をまたいで取得した場合

事業年度をまたいで育児休業を取得した場合、休業を開始した日を含む事業年度の取得とします。
例えば、事業年度が4月1日から3月31日で、2023年3月から2023年5月まで育児休業を取得した場合には、2022年度の取得としてカウントします。

5. おわりに

今後は、男性の育児休業取得率が企業イメージに影響を与える要素となるでしょう。
2022年から段階的に施行されてきた改正育児・介護休業法に対応した取り組みが形骸化しないよう今一度見直し、男女を問わず仕事と育児等が両立できるような環境と社内ルール作りを進めることが重要です。

株式会社小林労務 上村 美由紀氏

株式会社小林労務(https://www.kobayashiroumu.jp/
代表取締役社長 特定社会保険労務士
上村 美由紀

2006年 社会保険労務士登録
2014年 代表取締役社長就任
電子申請を取り入れることにより、業務効率化・残業時間削減を実現。
2016年に、東京ワークライフバランス認定企業の長時間労働削減取組部門に認定される。
社労士ベンダーとして、電子申請を推進していくことを使命としている。

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