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2022.05.11
ERPノート

ERPについて知っておきたい基礎知識を解説【ERPノート】

経営環境が激変するなか、先行き不透明な時代となっています。こうした状況下では、自社の経営状況を正しく把握し、変化に対応するための方針をスピーディーに策定することが求められます。そうしたニーズから生まれたソリューションがERP(Enterprise Resource Planning)です。今回は、ERPの基本的事項について再確認していきます。

1. ERPとは何か?

ERPとは

ERPは、Enterprise Resource Planningの略で、日本語では「企業資源計画」「統合基幹業務システム」などと訳されます。企業資源とは、すなわち「ヒト・モノ・カネ」のことで、これらに関わる各システムをシームレスに連携し、一元管理できるのがERPシステムです。これにより、企業経営の「全体の姿」が数字として明らかになります。

ERPが提供する機能

ERPシステムは、さまざまな機能によって構成されます。具体的には、会計機能、販売管理機能、人事給与管理機能、生産管理機能、物流管理機能、在庫管理機能などに関わるもので、業種によっても必要とされる機能は異なります。ただし、会計、人事給与、債権債務に関連する機能は、どんな業種においても企業活動をする上で必要になる機能と言えます。

図:ERPを構成する機能

図:ERPを構成する機能

2. ERPと基幹システムの違い

基幹システムとは、その名のとおり「社内の基幹業務を扱うシステム」のことです。では基幹業務とは、どんな業務を指すのでしょうか。基幹業務とは、前述したような、会計、販売、人事、給与、生産、物流、在庫など、企業活動の根幹をなす各業務のことです。

ERPシステムは、こうした各基幹業務を統合・連携したシステムであるため、ERPシステムのことを基幹システムと呼ぶことも一般的になっています。ちなみに、こうした基幹系のシステム以外には、メール、グループウェア、SFAシステム、CRMシステムなどの情報系システムがあります。

3. ERP導入のメリット・デメリット

メリット

ERPシステムの大きなメリットは、組織内の基幹系の情報を統合管理することで「会社の現在の状況を迅速に可視化できる」という点です。「いまのままで良いのか」「何を改善しなければならないのか」を意思決定するための根拠の数字を容易に算出できるようになります。

例えば、製造業であれば、どれだけ製造して、何をどれだけ販売し、どれだけ利益がでたのか、そのときにどれだけのお金と人の労力がかかったのかを関連付けて把握することができるようになります。その状況から、より多くの利益をだすためには、どの製品に設備投資をし、どのくらい人を増員すればよいかを予測することもできるようになります。

このように、ERPによる情報の一元化を行うことで、最新データを基にした意思決定がスピーディーに行えるようになります。ERPシステムがなければ、分析に必要な各種のデータをさまざまな部門から取り寄せて整理していくだけで時間を要してしまい、ビジネス環境の変化に対して、俊敏な判断が下せません。

デメリット

逆に、ERPシステムのデメリットはどんなことでしょうか。あるとすれば、一部の部門が利用するシステムやツールを導入するのとは異なり、導入準備から稼働までに時間がかかり、社内の人的リソースもそれ相応に割かなければならなく、一般的なシステム導入に比べて大がかりで費用がかかるという点でしょう。ERPシステムの導入は、業務プロセスに密接に影響するため外部のベンダー任せで実施できるものではありません。お金の面でも人の面でも、経営トップの決断が必要になるプロジェクトです。

(参考)
基幹システムをERPに刷新するメリット

基幹システムを再構築(リプレイス)するメリット

4. ERPの種類

SaaS型(クラウド型)

数年前までERPシステムは、セキュリティ上の懸念からクラウドで利用しづらい傾向にありました。しかし、各クラウド事業者が企業の納得できる安全な環境づくりを行ってきたことなどから、現在ではSaaSで提供されるクラウドERPを、サービスとして利用する企業が増えてきました。

SaaS型のERPシステムの特徴は、導入のための初期費用が抑えられ、ハードウェアOSなどのITインフラの運用負荷がかからないことです。反面、自社の仕組みに応じたカスタマイズがほとんどできない、障害が発生した際にSaaS事業者任せになり自分たちで対応できないといったことが、マイナスポイントです。

カスタマイズができないという観点では、会計、給与、勤怠管理、経費精算などのシステムは、企業ごとに業務内容が大きく変わるわけではなく、カスタマイズがあまり必要ありせん。従来の業務プロセスに合わない部分はシステムに合わせることで、かえって業務プロセスの効率が図られるということも珍しくありません。

また、会計システム、給与システムなどは税制改正などで頻繁なシステム改修を必要としますが、SaaS事業者側でバージョンアップしてくれるのもメリットです。オンプレミスで運用している場合は、法令対応のための改修コストがかかることも気にしておく必要があります。法令対応に限らず、利便性を高めるための機能向上がつねに図られるということがSaaS型の大きなメリットです。

オンプレミス型

オンプレミスでのERP導入には、フルスクラッチで自社オリジナルのERPシステムを構築する、市販されているERPパッケージをカスタマイズして利用する、といったパターンが考えられます。自社のニーズに合わせて自由に機能を実装できるのが大きなメリットです。例えば、販売管理や生産管理、物流倉庫といったシステムは、自社ならではのビジネスモデルやノウハウなどを盛り込むことが可能になるので、企業競争力を高めることにつながるでしょう。

逆に、デメリットとしては、ハードウェアの調達、設置場所から、ソフトウェアのカスタマイズ費用など導入費用が高くなることです。導入期間も長期にわたります。機器の選定、設置、ソフトウェアの設定などが必要で、カスタマイズや機能拡張によるシステム開発の期間も必要となります。最低でも、半年から1年間は準備が必要になるでしょう。

また、システム監視、セキュリティ対策、データのバックアップ、障害対応など運用のための人的負荷もかかります。ハードウェアやソフトウェアの保守費用、設置スペースにかかる費用、光熱費などの維持費用も発生します。さらに、ハードウェア更改やソフトウェアのバージョンアップも数年ごとに必要になるため、SaaS型のようにコストを平準化することができません。

図:SaaS型とオンプレミス型のERPの違い

図:SaaS型とオンプレミス型のERPの違い

5. ERP導入を検討する上でのポイント

ポイント1:自社が抱えている課題を明確にする

ERPを導入すると業務が円滑になるという漠然としたイメージではなく、業務や経営上、どのような課題があるのかを明確にしましょう。これが明確になっていないと、その後の導入がうまくいかない可能性が高くなります。課題が明確になれば、ERPを導入することで、課題がどう解決できるのかも見えてきます。

ポイント2:業務プロセスの改革に取り組む

課題を明確化した後に、まず業務プロセスの改革に取り組むことも重要です。ERPシステムを導入する段階になって、個々の業務の棚卸をして具体的な改善策を練っていては、すべての作業が遅れていきます。また、顧客番号、製品番号、業績関連の数字の定義やデータ形式を全社で統一しておかなければなりません。ERPシステムの導入検討の初期段階で、「業務の標準化」を念頭にいれた対応が必要です。

ポイント3:全員参加の導入体制を構築する

業務の棚卸、見直しは、ベンダーやシステムインテグレーター任せにはできません。こうした外部の専門家のサポートももちろん有用ですが、主体は導入企業そのものであり、個々の従業員です。

ERP導入後は、さまざまなデータ入力の方法やデータの取り扱い方などが変わることになります。さらには細かな業務プロセスも変更していく必要がでてきます。例えば、導入プロジェクトの事務局を経営トップの直下に置いて、全社の機運を盛り上げるといったことも1つの方策でしょう。

(参考)
コンサルタントコラム①
基幹システム刷新前にIT部門が合意しておくべき3つのポイント

6. ERP導入失敗パターン

パターン1:社内の意見調整ができない

ERPの導入にはさまざまな部署が絡んできます。例えば、いくつかの製品を候補として選んで比較していくにしても、部署ごとに良いと感じる製品が異なることがよくあります。プロジェクトのメンバーが、個別の利害をこえたところで大局的に考え、それをとりまとめることができる強いリーダーシップが求められます。

パターン2:導入したのに利用が進まない

せっかく導入したのに利用が進まないというケースもあります。例えば、販売会社において欠品や在庫過剰を防ぐためにERPを導入したとしても、ERPを活用しないで従来どおり経験や勘に頼った発注を行うといった場合です。導入後の利用を定着させるために教育・研修の仕組みまで考えておくことが重要です。

7. 導入のステップと気をつけること

RFI(Request for Information)

RFIは、「情報提供依頼書」と呼ばれるもので、ベンダーから製品やサービスの概要などの情報を収集するためのものです。その回答としては、製品カタログ、パンフレット、事例集などが挙げられます。ベンダーの比較検討を行う際に、どのような観点から評価を実施するかを見極めるのが大きな役割です。

RFP(Request for Proposal)

RFPとは、ベンダーに対して具体的な提案作成を依頼するための「提案依頼書」のことです。一般的な情報提供を求めるRFIと異なり、RFPは企業が求めている要件について書かれており、個別具体的な提案依頼のほか、見積金額、導入スケジュールなども明記されています。RFP作成時に、自社の要件を明確に記載しておくことが必要です。それによってより現実性のある提案をベンダーから受領できるようになります。

提案・デモ

提案が出された際は、自分たちにとっての重要ポイントがすべてフォローされているか、導入期間やコストが明確で、了解できる範囲のものかをチェックします。もしここで曖昧なままにしておくと、後から誤解が幾重にも重なっていくことになります。

また豊富な導入実績があるベンダーやシステムインテグレーターであれば、自社が求めている機能や使い方を、その製品でどのように実現するか、簡単なデモを行ってくれるでしょう。細かな機能の説明も、デモを交えて説明してもらうことで、実際の利用イメージが伝わってきます。

契約

ケースによっては、いざ契約という段階で、社内から承認が出ていないということもあります。その理由としては、最終的に投資対効果を経営陣に説明できないなど、事前の社内での準備不足に起因することが多いようです。ERP導入では、事前の社内検討、業務の棚卸、業務標準化プランなどを徹底させておくことが重要です。

稼働後

ERP導入後にスムーズに使えるようにするためには、エンドユーザーとなる社員のトレーニングや研修を行い、すぐにERPの環境に馴染めるようにしておくことが大切です。また、アクセス方法や業務フロー、セキュリティ面のこと、トラブルの際の対処方法などをマニュアル化しておくことが大切です。

図:ERP導入のステップ

図:ERP導入のステップ

(参考)
会計システム導入の成否を分けるRFP ベンダーから適した提案を受けるコツ
~プロジェクトを成功に導くRFP記述のポイントを解説~

8. ERP導入のトレンド

トレンド1:AIや機械学習の搭載

近年のERPのトレンドの1つとして、AIや機械学習などの最新技術を機能として取り入れるという動きが挙げられます。ERPシステム内で蓄えられる業務データの分析などに役立てることで、従来よりも正確かつ素早い意思決定の手助けをする役割を担おうとしています。このような機能は、これまでBIツールが担ってきましたが、ERPシステム自体がこうしたBIやAIの機能を積極的に搭載していくことで、よりユーザーに役立つシステムへと進化しようとしています。

トレンド2:他システムとのAPI連携

もう1つのトレンドは、ERPシステム以外のサービスやシステムとのAPI(Application Programming Interface)連携です。APIとは、ソフトウェアやプログラム同士をつなぐインターフェースのことです。例えばECサイトで、カード払いで買物をする場合、そのカード情報(氏名、カード番号、有効期限、暗証番号、セキュリティコード、使える金額など)はECサイトに存在するのではなく、カード会社のシステムにあります。つまり、ECサイトがカード会社のシステムを参照しているわけです。このときにデータ連携に使われるのがAPIです。従来は、こうしたシステム間、サービス間を連携させるには、多大な開発工数や費用が必要とされましたが、API連携によってそれが簡便化されます。

企業経営のベースとなるデータは、ほとんどERPシステムで管理されています。ここに蓄積された正確な情報をAPI連携で簡単に使えるようになれば、他のシステムで二重にデータをもつこともなくなり、新しいサービスを短期間で開発することも容易になります。

9. ERPの導入事例

株式会社クボタ

農業や水環境ソリューション、環境ソリューションなど幅広い事業を展開する株式会社クボタは、変化する国内農機ビジネスの状況を踏まえて、販社グループ13社約6,500名が利用する共通基幹業務システムをSCSKのERP「ProActive」で構築しました。

導入前の課題としては、各社基幹システムのブラックボックス化が進行し、業務プロセスの変革に柔軟な対応ができないことや、企業・業務ごとに個別のシステムのため、在庫状況のリアルタイムな把握が困難だったことが挙げられます。

ProActiveを選択したポイントは3つあります。1つ目は、受発注業務や在庫管理の標準機能が豊富であったこと、2つ目はパッケージの保守期限がないProActive独自のサポートポリシーでした。バージョンアップ時の労力が不要になれば、その時間を新たな企画の検討、推進の時間に充てられるようになります。3つ目は周辺システムとの連携を含めたソリューション提案と、豊富な導入実績を有するSCSKの総合力です。ProActiveはグループ導入実績が多く、導入手法も確立されており、導入の成功をイメージできたといいます。また、ERP周辺のシステムとの連携も、SCSKの持つ高い技術力とシステム構築実績、プロジェクト品質を保つ開発標準など、安心して任せられました。

株式会社パソナグループ

総合人材サービスの株式会社パソナグループは、グループ各社の人事給与システムを「ProActive for SaaS 人事・給与」に一本化し、外販するBPOサービスの核となるシステムとしても採用しています。

導入前の課題として、グループ各社の人事・給与業務のシェアード化推進と業務運営の効率化・属人化脱却がありました。また給与計算業務のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供する新会社での新たなシステム検討の必要もありました。

ProActive for SaaS 人事・給与を選んだ理由は、クラウド型の初期費用や運用負担が少ないという特徴が、BPOサービスとセットで提供するために不可欠だったことです。また、理想とする業務フローに照らして検討したところ、ほぼカスタマイズせずに使い始められることがわかり、自社グループ各社や多くの企業が業務の基準とするのにふさわしい設計だったことが決め手になりました。

株式会社サンケイビル

ビル事業・住宅事業・シニア事業・ホテルリゾート事業を事業の柱とする株式会社サンケイビルでは、「ProActive E²」を採用し、環境変化に強い新グループ会計システムを構築しました。これにより全利用者の満足度向上と決算期の残業時間16%削減に成功しました。

同社は20年以上にわたり利用してきたオフコン上で構築した旧会計システムの老朽化に伴い、システムの入替の検討を開始しました。導入前の課題は、税法改正や会計基準へのシステム対応ができないことにより、業務プロセスが煩雑となり、負荷が高まっていたことです。また登録データを活用する機能が少なく、経営者が意思決定に資するシステムとして十分に活用できないこともありました。さらに業務システムと連携していないため二重入力をしなければならず、確認の負荷が高く、入力ミスも発生しやすい状況でした。

「ProActive E²」の導入により、「激しい環境変化に対応する柔軟なシステム」「業界特有の経営管理指標を活用した経営管理環境の整備」「情報管理の一元化と共有化による業務全体の効率化」という目的を達成。減損会計をはじめ、手作業で対応していた会計基準がシステム化されたことにより、業務効率の改善と属人化の解消を図ることができました。

(参考)
ProActive 導入事例一覧

10. まとめ

グローバル化が進む今日のビジネスは、他国の自然災害・パンデミック・紛争などにも大きな影響を受けてしまいます。また、日本における労働環境に目を向けると、人材確保の難しさ、人材の流動化、働き方改革の推進など、大きく変化しつつあります。

こうした先行き不透明なビジネス環境のもとでは、自社の「ヒト・モノ・カネ」が現状どのような状況にあるのかを正しく把握することが、まず重要になります。従来のようにデータを個別最適で管理するのではなく、企業の基幹業務をすべて統合して、ERPシステムで管理することで、俊敏かつ的確な意思決定をすることが可能になります。

11. よくある質問

どのようなタイミングでERPを検討すべきでしょうか?

例えば、会計システムはほとんどの企業で導入しています。しかし、企業規模が大きくなり取引先や取引量が増えてくると、今までは必要なかった機能が必要になり、人事給与・販売などの各システムと連携することで作業効率を高めたいというニーズも生まれます。企業規模の拡大や、企業の合併などの際はERPシステムへの移行の大きなきっかけになります。また、従来のシステムがオンプレミスで稼働している場合、使用しているハードウェアやOSの更改、DXを推進する上でのクラウド化などもERP導入の契機になります。

段階的な導入は可能でしょうか?

モジュールタイプのERPシステムの場合、導入時の負荷を軽減するために、まずは会計のみ導入し、次のステップで人事・給与を導入するといった段階的な導入などが可能です。段階的に展開しても、データベースやデータは全て一元管理されているので、全モジュールを同時に導入した場合と同様に利用できます。

嶋田秀光氏

嶋田秀光(青山システムコンサルティング)
https://www.asckk.co.jp/

医療システムのSEを経て、2007年青山システムコンサルティングに入社。医療システムのみならず、小売業、製造業、サービス業など多種多様な業界でのIT戦略コンサルティングに従事。青山システムコンサルティングは、特定の製品・サービスに縛られず「公正中立」な立場から提案をすることをモットーとする独立系コンサルティングファーム。

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