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2023.04.25
ERPノート

基幹システムとは:導入のメリットやERP・情報系システムとの違いを解説

企業は、それぞれの業種に応じた業務を行い、利益を得ることを目的としています。その業務を行うために役立つ、あるいは必須となるシステムが「基幹システム」です。近年、多くの企業で新規導入や刷新が進んでいますが、失敗したという例も聞かれます。この記事では、基幹システムとはどのようなものか、ほかの似たシステムとの違い、導入や刷新の大まかな流れについてまとめます。導入や刷新をご検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

1. 【わかりやすく解説】基幹システムとは

「基幹システム」は、企業の主要な業務を管理・効率化するためのシステムです。基幹システムの導入により、多くの業務を半自動化したり省力化したりできます。業種によって主となる業務は異なりますが、受発注管理や販売管理、会計など、業務ごとに専用の基幹システムがあります。
しかしながら、「2025年の崖問題」やブラックボックス化など、古い基幹システム(レガシーシステム)の問題点が指摘されています。DXの推進のためには、基幹システムの導入や刷新が必須だと言えるでしょう。

2. 基幹システムの主な種類・機能

基幹システムは基幹業務と同じだけの種類があり、システムによって目的・機能が異なります。主な基幹システムの種類は以下です。

• 受発注管理システム
• 生産管理システム
• 販売管理システム
• 在庫管理システム
• 財務会計・管理会計システム
• 人事給与システム

同じ種類のシステムでも、ベンダーによって機能に多少違いがあります。実際に選定する際は個々の機能を比較する必要がありますが、ここでは基本的な内容についてまとめます。それぞれについて概略を確認していきましょう。

(1)受発注管理システム

「受発注管理システム」は、企業がビジネス上で行う受注と発注に関する一連の業務のためのシステムです。
受発注に関する情報を一元化し、紙ベースの手作業での管理業務を削減できます。受注時の在庫管理や注文の進捗管理、請求書発行なども自動化され、業務の効率化や人的ミスの削減につながります。また、受発注に関する情報の可視化により、業務の進捗状況を把握しやすくなるため、迅速な対応や効果的な意思決定が可能となります。

(2)生産管理システム

「生産管理システム」は、生産に関わる一連の業務を一括管理するシステムです。
生産に関する計画、進捗、実績、原価などを管理できるほか、管理されたデータをもとに生産や出荷の適切な量の分析や予測を実現します。また、生産能力や生産量の最適化、余剰在庫やコストの削減、業務効率の改善、リードタイムの短縮などを図ることができます。

(3)販売管理システム

「販売管理システム」は、販売に関わる一連の業務を管理するシステムです。
販売・在庫・購買状況などのデータを蓄積できるほか、データの分析や可視化、管理を行うことができます。発注漏れや納品忘れの防止、見積もりや請求書の入力ミスの削減に役立ちます。また、販売戦略の決定や売上の予測も行いやすくなります。

(4)在庫管理システム

「在庫管理システム」は、資材や商品の在庫状況を管理・把握するためのシステムです。
商品や資材の受発注履歴や在庫状況をリアルタイムで把握し、在庫不足や過剰在庫を回避できます。また、在庫管理によって生産ラインの滞りを防ぎ、迅速な納品や受注対応を実現します。その他、商品の品目や数量、納期などを管理することができ、在庫の最適化やコスト削減にもつながります。

(5)財務会計・管理会計システム

会計システムには、社外向けにデータをまとめる「財務会計システム」と社内向けにまとめる「管理会計システム」があります。

「財務会計システム」は、財務状況や経営状況を報告するために必要となる財務諸表の作成などを担うシステムです。日常的に行う仕訳入力のサポート、決算書の自動作成から帳票出力などの機能が財務会計システムには備わっており、会計業務の効率化や不正行為の発見や予防に役立ちます。

「管理会計システム」は、企業内部での意思決定や業績評価に役立つ情報を収集・分析するためのシステムです。財務会計システムが企業の財務状況を監査機関や税務署、金融機関などの第三者に提供するのに対し、管理会計システムは企業内部での意思決定や業績評価に必要な情報を提供します。
具体的には、製品ごとの原価や利益、販売動向など、企業内部での意思決定に必要な情報を提供します。また、予算策定や業績目標の設定・管理、コスト管理などの業務にも役立ちます。その他、データの分析やレポーティング機能を備え、効率的かつ迅速に必要な情報を取得できます。

(6)人事給与システム

「人事給与システム」は、採用、人事評価、勤怠管理、給与計算など、一連の人事業務を効率化するためのシステムです。給与計算や労務管理、勤怠管理に加えて、人事評価やタレントマネジメントなど、それぞれの業務に特化したシステムもあります。例えば、給与計算はミスの許されない業務ですが、人事給与システムを導入することで半自動化が可能となり、ヒューマンエラーを防止できます。また、タレントマネジメント機能は、最適な人材配置や戦略人事にも役立ちます。

3. 基幹システムとその他のシステムの違い

企業が導入するシステムには、基幹システム以外にも類似したシステムが存在します。例えば、次のようなものが挙げられます。

• 業務システム
• 情報系システム
• ERP

自社の目的に合致するものを選ぶためには、それぞれのシステムの特徴を理解しておく必要があります。以下では、基幹システムとその他のシステムとの違いについて、1つずつ解説します。

(1)業務システムとの違い

「業務システム」とは、特定の業務を行うために使用されるシステムの総称であり、勤怠管理システムやワークフローシステムなどが含まれます。基幹システムも業務システムに含まれますが、以下(2)で述べる「情報系システム」のことを業務システムと呼んでいることもあります。
区別する場合、会社の業務を行うのに「役立つ」のが業務システムで、会社の業務を行うのに「必須」なのが基幹システムだと言えます。あるいは、会社の中心的な業務に使われるのが基幹システムであるとも言えます。
例えば、製造業における生産管理システムなどが該当します。業務の効率化という点では共通していますが、業務の内容やシステムの重要度が異なっています。

それほど意味の違いを意識する必要はありませんが、ベンダーなどとのやり取りにおいては、どのような意味で「業務システム」という表現を使っているか注意が必要です。

(2)情報系システムとの違い

「情報系システム」とは、社内や社外とのコミュニケーションの円滑化や情報共有などを効率的に行うためのシステムのことです。代表的なものとして、メールソフト、グループウェア、スケジュール管理システム、社内SNSやビジネスチャットなどがあります。先述したように、この情報系システムを業務システムと呼ぶ場合もあります。

(3)ERPとの違い

「ERP」とは、業務ごとに個別に点在している情報を統合して一括で管理・運用できるシステムです。もともとは「Enterprise Resource Planning(企業資源計画)」を略した語です。
ERPは、社内の様々な種類の情報を正確かつタイムリーに管理し、シームレスかつ包括的に活用できる点が最大のメリットです。情報を一括管理することで、経営戦略の構築やリアルタイムの状況の可視化が容易になります。さらに、受発注管理や販売管理、在庫管理などの、関連するシステム間を連携させて業務を効率化することができます。
基幹システムが個別の業務を行ったり、効率化したりするためのシステムであるのに対し、ERPはより大局的な経営基盤の強化が目的となっている点が大きく異なる点です。自社が解決したい課題や、実現させたい戦略に応じて使い分けましょう。

4. 基幹システムを導入するメリット

基幹システムを導入することで、次のようなメリットを得ることができます。

• 業務の効率化、標準化
• 経営情報の管理、可視化

いずれもDXの目指すものに合致していると言えます。1つずつ具体的に見ていきましょう。

(1)業務の効率化、標準化

基幹システムの導入は、業務の効率化、標準化につなげられるというメリットがあります。基幹システムでは、外部からのデータ取り込みや入力により、それ以降の計算や処理は自動的に行うことができます。手作業が不要になり、時間を大幅に短縮することができるほか、人的ミスも削減できます。また、担当者しか手順を知らないというような属人的な弱点をなくすことで、生産性の向上やリスクヘッジにもつなげることができます。

(2)経営情報の管理、可視化

もう一つのメリットは、経営情報の管理や可視化が可能になるという点です。売上などの各種データがシステム上ですぐに確認できるため、経営層はリアルタイムで状況を把握し、素早い経営判断ができるようになります。また、課題やトラブルの早期発見により、問題が深刻化する前に対処できるようになります。現代のビジネスは状況の変化が早いため、リアルタイムの状況把握は大きなアドバンテージになります。

5. 基幹システムを導入するデメリット

基幹システムの導入には、次のようなデメリットもあります。

• システム停止のリスク
• 業務フローの変更

それぞれについて確認していきましょう。

(1)システム停止のリスク

基幹システムは業務に必要不可欠なシステムであり、万が一システムが停止した場合、自社のビジネスにとって深刻な打撃となってしまいます。
システム停止を防ぐためには、確実な監視体制を築くこと、影響のないタイミングでのメンテナンスを実施することなど、セキュリティ対策を講じておくことなどが必要です。

(2)業務フローの変更

基幹システムを導入する場合、既存の業務フローを変更してシステムに合わせる場合があります。特に、クラウドサービスなど、カスタマイズが難しいシステムではその可能性が高くなります。
また、業務フローの変更は、現場での混乱やトラブルの原因となるケースや、現場が変更に反対して不満を持つ場合もあります。そのため、必要性を事前に説明して現場に理解を得ておくこと、導入後の作業方法を周知・確認しておくこと、マニュアルを準備しておくこと、など事前対応しておく必要があります。

6. 基幹システムを導入する方法

ここでは、基幹システムを導入するための手順や方法についてまとめます。導入の手順と導入時に留意すべきポイントに分けて解説します。

(1)基幹システム導入の流れ

基幹システム導入は、以下の流れ・手順で行います。

① 導入目的の明確化
② 要件の整理
③ システム選定
④ 導入・運用と保守

まず初めに、導入の目的を明確にします。経営方針や戦略に基づき、どのような課題を解決したいのか、何をもってゴールとするのか、どの業務にシステムを導入するのか、などを検討しましょう。ここをしっかり考えておかないと、導入そのものが目的となってしまいます。
次に、目的に合わせて要件を整理します。より具体的に課題を洗い出し、ゴールを達成するために必要な機能をピックアップします。現場の意見のヒアリングも重要です。
最後に、整理した要件を満たすシステムを選定します。候補を絞り込んで、見積もりや資料を比較検討し、機能や費用、スケジュール、サポート内容などを確認しましょう。
また、事前に動作確認をしっかり行い、導入後の不具合やミスの対策をしておくことが重要です。その他、定期的なPDCAも行い、システムの改善、保守に取り組みましょう。

(2)基幹システム導入のポイント

基幹システムを導入する際には、失敗しないよう守るべきポイントがあります。以下の事項を確認しましょう。

• 目的に適した形態・機能のシステム選定
• 安定稼働・セキュリティを確認しての選定
• 社内の理解を得る
• ベンダーに任せきりにしない

まず、自社の目的に合ったシステムを選びましょう。また、稼働の安定性やセキュリティも欠かせません。基幹システムは安定して使い続けられることが大前提です。
加えて、社内の理解を得ることも大切です。新しいことを始めるときは、不安から反対を受けることが少なくありません。システムを活用して業務を行うのは現場ですので、繰り返しになりますが、導入の意義を伝え、事前準備を欠かさず行いましょう。

7. 基幹システムを刷新する方法

使用中の基幹システムを刷新したい場合もポイントがあります。

長期的にシステム活用するためには、現在ではなく将来を基準にする必要があります。新規導入時と同様に、経営方針や経営戦略に合わせてシステムを選ぶことがポイントです。また、現場の短期的な課題解決より、むしろシステムに現場の業務を合わせるという視点を持ちましょう。特にレガシーシステムからの脱却やDXの推進が目的の場合、現在の延長では抜本的な改善になりません。

刷新の流れは次の通りです。

① 現状把握
② 導入後のゴール設定
③ 方針の決定
④ ベンダー・システム選定

刷新の方針は、既存システムをベースにシステムを変更・刷新する「リビルド」、現在のデータを流用する「マイグレーション」、新機能追加や機能向上などで新バージョンに入れ替える「バージョンアップ」があります。自社に合わせて決定しましょう。また、システム選定はクラウド化なども排除せず検討しましょう。

8. まとめ

基幹システムは、個別の業務の効率化に大きく役立ちます。自社の目的に適したシステムを導入すれば、大きなアドバンテージを得ることができます。
また、現在すでに基幹システムを導入している場合でも、部分的な修正を繰り返している場合は危険です。長期的な視点から考えると、何らかの形での変更や刷新が必要となります。
課題の解決や業績の向上のために、ぜひ基幹システムを活用しましょう。

青井 真吾

AOIS Consulting株式会社
代表取締役
青井 真吾

大学卒業後はIT企業に入社。システムエンジニアとして大手企業向けのERPシステム開発を経験。
その後は、フリーのITコンサルタントとして、人材派遣会社の基幹システムの開発およびERPシステムの導入、不動産会社の商業施設での販促システムの導入、自動車メーカーでコネクティッドカー開発のプロジェクト管理、SIerでのSalesforceの導入、ファッション業界の企業でSalesforceと連携する周辺システムの導入を経験。
現在は法人化し主に企業のシステム開発プロジェクトを支援。

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