近年、人的資本経営への注目が高まる一方で、「健康施策を導入したものの現場に定着しない」「従業員の行動変容に繋がらない」といった課題を抱える企業が増えています。SCSKは、IT業界特有の長時間労働などの課題に対し、10年以上にわたり組織風土の変革に挑戦し、結果として11年連続(※1)で「健康経営銘柄」に選定されるにいたりました。私たちは、こうした自社実践の経験とノウハウを広く社会へ還元し、企業が自律的に健康経営を推進するための支援をしたいという想いから、新規ビジネス(Uwell:健康経営支援サービス)を立ち上げました。 (※1)2015年~2025年実績
これらの活動の一環として、現場で悩む多くの企業・団体の健康経営担当者様や学生の方々に広く学びの機会を提供すべく、明治大学リバティアカデミーにおける健康経営講座へ寄付を行い、受講を支援することといたしました。

本講座の一つとして、SCSKの健康経営およびウェルビーイング経営への発展プロセスについて事例紹介を行い、多くの参加者の皆さんと意見交換を行いましたので、発表内容の一部をご紹介いたします。
目次
1. なぜ今、健康経営が注目されるのか
近年、企業価値を測る指標として「人的資本」が注目されています。
人材不足や働き方の多様化が進む中、企業には単に従業員の労働力を活用するだけではなく、一人ひとりの能力や可能性を最大化する経営が求められるようになりました。
その中で健康経営は、福利厚生施策の一つではなく、企業の持続的成長を支える経営戦略として位置付けられています。しかし、健康経営の本質は健康施策を実施することではありません。
SCSKでは、健康経営を
「社員とその家族の幸せと事業成長の両立を実現するための経営基盤」
と捉えています。


2. 出発点は“健康経営”ではなく“働き方改革”だった
現在では健康経営の先進企業として紹介いただく機会も増えていますが、SCSKが最初に取り組んだのはウォーキングイベントなどの健康施策ではありませんでした。2012年前後のIT業界では、長時間労働や深夜残業が常態化しており、「長く働くこと」「休まず働くこと」が評価される風土も少なくありませんでした。そして、SCSKも同様の課題を抱えていたのです。その中で、SCSKの経営トップが打ち出したのが、
「社員の健康を害して得る売上や利益にどれだけの価値があるのか」
という問いかけでした。この考え方を起点として、SCSKでは働き方改革に着手しました。
月平均残業時間20時間以下
年間有給休暇20日間の取得
フレックス制度の活用
計画的な休暇取得の推進
などを全社で進めることで、まずは社員が健康的に働ける環境づくりに取り組みました。

3. 健康経営で実現した「行動変容」
働く環境を整えた後、次のステップとして導入したのが健康経営です。
SCSKでは「健康わくわくマイレージ」という制度を通じて、
歩く
睡眠を確保する
食生活を見直す
健康診断結果の改善に取り組む
といった行動を支援してきました。特徴は、「健康が大事だからやりましょう」という呼び掛けだけでなく、社員が楽しみながら継続できる仕組みを構築したことです。その結果、健康への意識や実感度は大きく向上し、社員エンゲイジメントの向上にもつながりました。

4. SCSKが考える人的資本経営の順番
講演の中で最もお伝えしたかったことの一つが、「順番が重要である」ということです。
健康経営に取り組む企業は増えていますが、働く環境が整っていない状態で健康施策だけを導入しても、社員から十分な共感を得ることは難しいケースがあります。SCSKではこれまでの経験から、
働き方改革
健康経営
学び・成長支援
挑戦機会の創出
ウェルビーイング向上
人的資本価値の最大化
というステップが重要であると考えています。まず「働く環境」を整え、その上で「健康」、さらに「成長」や「挑戦」へとつなげていく。この積み重ねが結果として人的資本価値の向上につながると考えています。

5. 健康経営からウェルビーイング経営へ
現在、SCSKでは健康経営をさらに進化させ、「ウェルビーイング経営」に取り組んでいます。
健康経営が主に「働きやすさ」の向上を目指すのに対し、ウェルビーイング経営では「働きがい」まで視野に入れています。働きやすく、そして働きがいを感じられる環境を実現することで、一人ひとりが能力を発揮し、自律的に成長できる組織を目指しています。
6. 企業成長と社員の幸せは両立できる
講演では、
残業削減
有給休暇取得促進
健康意識向上
エンゲイジメント向上
採用力向上
といった成果についても紹介しました。これらの成果が示しているのは、「社員のため」と「会社のため」は対立するものではないということです。社員が健康で活き活きと働ける環境を整えることは、結果として企業成長や生産性向上にもつながります。これはSCSKが10年以上にわたり取り組み、実践を通じて得てきた学びです。


7. おわりに
人的資本経営への注目が高まる今、多くの企業が「何から始めればよいのか」という課題を抱えています。SCSKの経験からお伝えできることは、
健康経営はゴールではなく、人と組織の可能性を引き出すためのスタートラインである
ということです。今後もSCSKは、働き方改革・健康経営・ウェルビーイング経営の実践を通じて、人と組織の持続的な成長に貢献してまいります。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。