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健康経営に取り組む企業がよく直面する課題と解決の糸口【その②】

健康経営に取り組む企業がよく直面する課題と解決の糸口【その②】

※本ブログは、2025年7月14日に旧ブログ(note:SCSK健康経営)にて掲載したものを、内容はそのままに当サイトへ移設・再掲載しております。ご参考までに、掲載内容は、当時の情報となりますことをご了承ください。

はじめに

健康経営に取り組む多くの企業においては、本社と地方拠点・工場間で取り組みの浸透度に差が生じやすいことが課題のひとつとなっています。

今回のブログでは、この課題に対する解決策となり得るアプローチについて、SCSKの事例や他社の人事担当者との情報交換にて得た情報を参考にしながら解説します。

課題へのアプローチはトップの意識改革から

この課題に対して、私から言えることは2点です。

1. 拠点ごとの健康経営への取り組みを任せるのではなく、ある程度本社からの指示で実行
2. 一定の成果をもとに、事業所ごとに自走を促す

ここでは、全国に多数の工場を持つ会社を想定して考えていきたいと思います。

この場合の健康経営の推進において重要なのは、工場長(事業所責任者)が主体的に取り組む意欲を持ち、それを率先垂範することです。まず、工場長の責任には生産管理や安全の確保だけでなく、社員の健康管理も含まれるという認識を持つ必要があります。なぜなら、社員の健康は工場の生産性や安全性に直結するためです。

この点についてSCSKでは、「社員一人ひとりの健康は、個々人やその家族の幸せと事業の発展の礎である」という健康経営の理念を就業規則に明記し、社員の健康、家族の幸福、企業の持続的成長を包括的に捉える姿勢を示しています。

成果の可視化とインセンティブの活用

健康経営を効果的に推進するには、各工場での取り組み成果を可視化することをお薦めします。
具体的には、各工場の安全行動の取り組みデータの可視化(これはこれまでも実施してきているケースもあると思います)に加えて、健康診断予約状況、健康診断受診状況、従業員満足度、残業時間、有給休暇取得状況などの指標を工場ごとに比較可能な形で示すのです。
単なる別の事業所(工場)との比較だけでも競争意識は高まり、経営サイドからのコメントとして「うまくいっているケース」と「うまくいかないケースにおける阻害要因の確認」などのコミュニケーションが発生することで、自ずと気づきと学びにつながるのです。実際、社員エンゲイジメントを役員の評価軸の一つに組み入れている企業もありますし、ある企業健保様では、各事業所の健康診断結果から将来の医療費のインパクトを算出してフィードバックする方法を取っているケースもあります。
これらは、現在行っていることが事業所の各社員の皆さんにどのように受け止められているのか、また事業経営上どのように将来リスクへ影響を与えうるのかを可視化しているのです。

SCSKの場合は、役員会で月々の残業時間・有給休暇の取得情報の他、健康診断の予約・受診状況などを本部レベルで一覧化し、報告していました。また、健康増進施策として「健康わくわくマイレージ」を導入し、健康増進行動にポイントを付与、健診結果の改善度に応じてインセンティブを提供することで、社員の健康意識向上と行動変容を促しています。

健康経営担当者の役割と拠点間の好事例共有

「拠点ごとの健康経営への取り組みの自走を促進し、成果を競争させる」アプローチにおける本社の健康経営担当者の重要な役割は、拠点間で触発し合える環境・制度作りと、健全な対抗意識の醸成です。各工場長や社員たちが、自らの生産性やパフォーマンス向上に向けて新しいルーティンを積極的に取り入れ、日々のオペレーションの無駄や偏りを見直すよう促すことが求められます。特に、タイムマネジメントなどの基本的なマネジメント手法を健康経営の視点から再評価し、各拠点での工夫を引き出すことが重要です。

この役割を効果的に果たすため、SCSKでは各拠点の成功事例を具体的に共有し、他拠点での取り組みの参考にできる仕組みを整えています。

SCSKにおける健康診断100%受診のこだわり

ここでSCSKでの事例として、健康診断の100%受診に向けた取り組みをご紹介します。
健康診断は受診することがゴールではありません。
SCSKは健康診断受診率100%を維持することはもちろんのこと、必要な際の事後措置を確実に実施することを目指しています。これは、健康管理において中心に置いている考え方です。

  • 1. 8月末までに健康診断の予約を実施してもらう
  • 2. 11月末までに健康診断を受診してもらう

なぜ、このようなスケジュールにしているのか。
それは健康診断の結果をもととする産業医による判定を年度内の3月末までに実施し、必要に応じた対応(再検査、治療)に迅速に対応してもらうとともに、産業保健スタッフとして支援するためです。
ここは本題ではありませんが、健康診断結果が迅速に手元に届き、就業判定ができることが好ましいのですが、手元に届くまでに時間がかかることも社会的な課題でもあります。
上記2つの項目を促進するため、SCSKでは「健康わくわくマイレージ」における達成基準に加えました。これにより、確実に実行する意識を付けることにも寄与したのです。

企業文化に即したコミュニケーション

健康経営の推進において重要なのは、単なる拠点間の競争ではなく、各拠点が健全な危機感を持ち、自発的な改善に取り組むマインドセットを育むことです。そのためには、企業固有の文化や価値観に根ざした言葉やメッセージを用いることが効果的です

例えば、自社が健康につながる製品やサービスを保持している場合は、わかりやすいです。自社製品を理解し、活用し、自身が健康になる。その実感を営業や製品開発に活かしていくサイクルは、社員の皆さんの健康経営への関与度は自ずと高まっていきます。
その他にも、研究職が多い会社においては、「探究」「分析」といったキーワードを用い、自身の健康のメカニズムを調べるきっかけを設けてみることも一つの方法です。健康経営を通じた自己の新たな可能性の追求・分析という文脈で訴求することで、「やってみよう」という前向きな反応を引き出せる可能性が高まるのです。

SCSKでは、「夢ある未来を、共に創る」という経営理念のもと、社員の健康を経営の重要課題として位置づけています。こうした理念に基づくメッセージングによって、各職場での自発的な試行錯誤を促し、包括的な健康経営を展開することに成功しているのです。

まとめ

多拠点企業における健康経営の浸透格差という課題に対し、拠点ごとの自走と競争の促進は有効な解決策となり得ます。SCSKの事例が示すように、経営層のコミットメント、従業員の主体的参加、データに基づく効果測定を自社の状況に合わせて導入することで、より効果的な健康経営の実現が可能となるのです。

次回は、SCSKが、健康経営の最終的な目的である「社員一人ひとりが心身ともに健康で、仕事にやりがいを感じ、会社に貢献できる組織」を見据えて、健康経営の次のステージの施策として手掛けてきた、仕事のモチベーション向上やリスキリングに関する施策について、ご紹介したいと思います。

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

今日の健康経営あるある

本ブログを読んでいただいている方々の中にも、健康診断(人間ドック)の結果により、メタボ(特定保健指導)判定を受けたことのある方もいるのではないでしょうか。
ある時期、当社にてメタボ該当者にあるキャンペーンを実施しました。

  • ①マンツーマントレーニング
  • ②健康食品宅配
  • ③体組成計
  • ④活動量計「fitbit」

これは、健康セミナーへの出席を必須とし、上記4つのサポートによる3ヶ月間のチャレンジです。(目標:体重の3~5%の減少)
そして、これらを実践した方々には詳細なアンケートを実施させてもらいました。
そのアンケートにおいて、一番成果を感じることができたメニューは「③体組成計」「④fitbit」との大変興味深い結果が出たのです。
なぜ体組成計とfitbitだったのか?
それは、他のどのメニューよりも「見える化」が実現できたからだと言えます。日々の記録がグラフになり、その変化に一喜一憂する日々において、少しずつ工夫や振り返りが効果を発揮したのです。
本日のブログにも出てきた「可視化」にも通ずるのではないでしょうか。

SCSK株式会社 PROACTIVE事業本部 Uwellビジネス部 部長(兼)人事本部 Well-Being推進部

杉岡孝祐

住商情報システム株式会社(現SCSK株式会社)入社。 人事(採用、育成、人事企画)11年、広報(社内外情報発信、メディア対応など)10年経験。 広報部時代の2011年に経営統合(現在のSCSKに)を経験し、その後の「働き方改革」「健康経営」を広報の責任者として、社内外へ発信。各種メディア対応を通じ、社内外へのPRを実現。 2019年4月より人事に異動し、健康経営の企画・推進責任者。 2023年4月、健康経営の新規事業化を目的に異動。(人事兼務)

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