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「BIツールはいらない」は間違い?Excelとの違いや失敗しない導入のステップを紹介

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進が求められる中、データに基づいた迅速な意思決定を実現する「BIツール」の重要性が高まっています。しかし、その一方で「BIツールを導入したものの活用しきれていない」「Excelで十分なのではないか」といった声も聞かれ、BIツール導入の必要性に疑問を感じる方も少なくありません。この記事では、BIツールが不要だと言われる背景にある理由を深掘りし、導入で失敗しないための具体的なステップを解説します。自社のデータ活用に課題を感じている方は、ぜひご一読ください。

BIツールが「いらない」と言われる主な理由

多くの企業がデータ活用の重要性を認識し、BIツールの導入を進める一方で、「自社には必要ないのではないか」と感じるケースも見受けられます。なぜそのように受け止められてしまうのでしょうか。そこには、いくつかの共通した背景や要因があります。ここでは、BIツールが「不要だと感じられてしまう」主な理由について解説します。

導入目的が明確になっていない

BIツールが「いらない」「導入したが不要だった」と感じる最も大きな原因の一つは、導入目的が曖昧なまま進めてしまうことです。 「データを活用して経営判断を迅速化したい」といった漠然とした目的だけでは、具体的にどのデータをどのように分析し、どのようなアクションに繋げたいのかが見えません。目的が不明確なままツールを導入しても、現場の担当者は何をすれば良いのか分からず、結果的に「使われないツール」として放置されてしまうのです。

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現場のニーズと機能が合っていない

BIツールには、高度な分析機能を備えたものから、専門知識がなくても直感的に操作できるものまで様々な種類があります。 現場の従業員が求めているのは、日々の業務に直結するシンプルなデータの可視化やレポート作成機能であるにもかかわらず、情報システム部門が主導して多機能で複雑なツールを選んでしまうケースが散見されます。結果として、現場の担当者にとっては使いこなすのが難しく、「BIツールは難しいからいらない」という結論に至ってしまいます。

データが整備されておらず活用できない

BIツールは、あくまでも社内に蓄積されたデータを分析・可視化するための道具です。そのため、分析の元となるデータが整備されていなければ、その能力を十分に発揮することはできません。 例えば、部署ごとに異なる形式でデータが管理されていたり、入力データに不備が多かったりすると、BIツールに取り込む前のデータクレンジングや整理に膨大な手間がかかります。このような状態では、ツールを導入しても思うように活用できず、宝の持ち腐れとなってしまいます。

Excelで十分だと感じている

多くのビジネスパーソンにとって、Excelは非常に馴染み深いツールです。簡単なデータ集計やグラフ作成であれば、Excelでも十分に対応できるため、「高価なBIツールを導入する必要はない」と考える企業は少なくありません。 特に、扱うデータ量がそれほど多くなく、定型的なレポート作成が中心の業務であれば、Excelの機能で事足りる場合もあります。しかし、データ量が増え、より多角的でリアルタイムな分析が求められるようになると、Excelでの対応には限界が見え始めます。

コストに見合う効果を実感できない

BIツールの導入には、ライセンス費用や導入支援のコンサルティング費用など、少なくないコストが発生します。 しかし、前述のような理由でツールが十分に活用されなければ、投資したコストに見合うだけの効果を得ることはできません。経営層から見れば、具体的な成果に繋がらない投資は不要と判断されるのも当然であり、これが「BIツールはいらない」という意見に繋がるのです。

それでもBIツールが必要とされる企業の共通点

「BIツールはいらない」という意見がある一方で、多くの企業がBIツールを導入し、データ活用を推進しているのも事実です。では、BIツールを真に必要としている企業には、どのような共通点があるのでしょうか。ここでは、BIツールの導入が有効な企業の典型的な特徴を解説します。

複数のシステムにデータが散在している

多くの企業では、販売管理システム、顧客管理システム(CRM)、会計システムなどが部門ごとに分断され、データが各所に散在しています。このような環境では、情報を横断的に把握しようとすると、システムごとにデータを抽出・加工する必要があり、迅速な意思決定の妨げとなります。

こうした課題を抱える企業ほど、BIツールによる可視化・分析のニーズが高まります。さらに、ERPなどによって業務データのルールや形式が整理され、共通の基盤として整備されている場合、BIツールの効果をより高いレベルで引き出すことができます。ERPでデータの土台を整え、その上でBIツールを活用することで、部門を越えたデータ活用が可能となり、経営状況をより的確に把握できるようになります。

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リアルタイムでの経営状況の把握が求められる

市場の変化が激しい現代において、迅速な意思決定は企業の競争力を左右する重要な要素です。 しかし、手作業でのデータ集計やレポート作成には時間がかかり、経営会議で報告される数字が数週間前のもの、というケースも珍しくありません。BIツールを活用すれば、最新のデータを自動で集計・可視化し、リアルタイムに近い形で経営状況を把握できます。これにより、常に最新の情報に基づいた、的確な意思決定が可能となるのです。

データ集計やレポート作成に時間がかかりすぎている

各部門の担当者が、日次や週次、月次のレポートを作成するために、多くの時間をデータ集計作業に費やしているケースは非常に多いです。 このような定型的な作業は、本来であればより付加価値の高い業務に時間を割くべき従業員の生産性を低下させる原因となります。BIツールを導入し、レポート作成を自動化することで、担当者は単純作業から解放され、データの分析や改善策の検討といった、より創造的な業務に集中できるようになります。

属人的なデータ分析から脱却したい

特定のスキルを持った担当者だけがデータ分析を行い、その担当者が異動や退職をすると、データ活用が停滞してしまうという問題は多くの企業が抱える課題です。 このような属人化は、組織としてのデータ活用文化の醸成を妨げます。専門知識がない現場の担当者でも直感的に操作できるBIツールを導入することで、データ分析の民主化が進み、組織全体でデータを活用する文化を育てることができます。

課題 BIツールによる解決策
データが複数のシステムに散在 各システムからデータを自動で集約し、一元管理を実現する
経営状況の把握に時間がかかる 最新データをダッシュボードでリアルタイムに可視化する
レポート作成の工数が大きい 定型レポートの作成を自動化し、業務効率を大幅に向上させる
データ分析が属人化している 専門家でなくても扱えるツールで、現場レベルでのデータ分析を可能にする

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ExcelとBIツールの違いを徹底比較

BIツールの導入を検討する際に、必ず比較対象となるのがExcelです。Excelでもデータ分析は可能ですが、BIツールとはその目的や機能において大きな違いがあります。ここでは、両者の違いを3つの観点から比較し、それぞれのツールの得意な領域を明確にします。

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データ処理能力と扱える量の違い

Excelは個人のPC上で動作するアプリケーションであり、扱えるデータ量には物理的な限界があります。一般的に、数万行を超えるデータを扱うと動作が著しく遅くなったり、ファイルが破損したりするリスクが高まります。一方、BIツールは大量のデータを高速に処理することを前提に設計されており、サーバー上でデータを処理するため、数百万、数千万行といった大規模なデータも安定して扱うことが可能です。

リアルタイム性とデータ共有のスムーズさ

Excelでデータを共有する場合、ファイルをメールに添付したり、共有サーバーに保存したりする方法が一般的です。 この方法では、データの更新があるたびにファイルを再共有する必要があり、バージョン管理が煩雑になりがちです。 一方のBIツールでは、データソースと直接連携し、ダッシュボードが自動で更新されるため、関係者はいつでも最新のデータにアクセスできます。URLを共有するだけで情報共有が完了し、スムーズなコミュニケーションを実現します。

多角的な分析機能と可視化の表現力

Excelのグラフ機能も充実していますが、基本的には二次元の表データを元にした静的なグラフ作成が中心です。対してBIツールは、データを様々な角度から深掘りするための多角的な分析機能を備えています。例えば、全体の数値から特定の項目へドリルダウンしたり、複数のデータを組み合わせて新たなインサイトを発見したりできます。また、地図データと連携した可視化や、インタラクティブに操作できるダッシュボードなど、表現力の豊かさもBIツールの大きな特長です。

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BIツール導入で失敗しないための5つのステップ

BIツールは強力な武器になり得ますが、導入を成功させるためには、計画的なアプローチが不可欠です。ここでは、BIツールの導入で失敗しないための具体的な5つのステップを紹介します。自社にとって最適な形でデータ活用を推進しましょう。

ステップ(1):解決したい経営課題を特定する

BIツール導入の第一歩は、「何のためにデータを活用するのか」という目的を明確にすることです。 「売上が伸び悩んでいる」「業務効率が悪い」といった漠然とした問題ではなく、「どの商品の売上が、どの地域で落ち込んでいるのかを特定し、販促策を考えたい」「レポート作成にかかる時間を月20時間削減したい」のように、具体的で測定可能な課題の設定が重要です。この課題が、ツール選定や分析の方向性を決める上での羅針盤となります。

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ステップ(2):必要なデータを定義し収集体制を整える

課題が明確になったら、その課題を解決するためにどのようなデータが必要かを定義します。売上データ、顧客データ、Webアクセスログなど、必要なデータがどこに、どのような形式で存在しているかを確認します。データが複数のシステムに散在している場合は、それらをどのように収集・統合するのか、データの品質を担保するためのルール作りなど、データ活用の基盤となる体制を整えることが不可欠です。

ステップ(3):スモールスタートで効果を検証する

最初から全社的に大規模な導入を目指すのではなく、特定の部門や課題に絞ってスモールスタートを切ることをお勧めします。例えば、営業部門の売上分析や、マーケティング部門の広告効果測定など、成果が見えやすい領域から始めることで、成功体験を積み重ねることができます。小さな成功の積み上げがBIツールの有効性を社内に示されることで、全社展開への理解と協力を得やすくなります。

ステップ(4):全社的な協力体制を構築する

BIツールの導入は、情報システム部門だけでは成功しません。実際にツールを利用する現場の業務部門、そしてデータ活用の方向性を決める経営層の協力が不可欠です。 プロジェクトの初期段階から各部門の代表者を巻き込み、現場のニーズをヒアリングしたり、導入目的を共有したりすることで、全社的な協力体制を構築します。データ活用を推進する文化を醸成することが、BIツール導入を成功に導く鍵となります。

ステップ(5):導入後のサポート体制を確認する

ツールを導入して終わりではありません。現場の従業員がツールを使いこなし、自律的にデータを活用できるようになるまでには、継続的なサポートが必要です。 ツールの使い方に関する研修会の実施や、気軽に質問できるヘルプデスクの設置など、導入後のサポート体制を事前に確認しておきましょう。ベンダーが提供するサポートサービスを活用することも有効な選択肢の一つです。

まとめ

「BIツールはいらない」という意見は、導入目的が不明確であったり、現場のニーズと合致していなかったりするなど、ツールの導入プロセスに課題がある場合に生じやすいものです。しかし、販売管理や会計、顧客管理などの複数のシステムにデータが散在している企業や、迅速な意思決定が求められる現代のビジネス環境においては、BIツールは非常に有用な手段となります。

BIツールを効果的に活用するためには、ERPなどを通じてデータを一元的に管理・整備しておくことが前提です。データの形式やルールが統一され、正確で一貫性のある状態が整って初めて、部門を越えた分析や可視化が可能になり、経営判断に活かすことができます。

この記事で紹介した導入失敗の原因と成功へのステップを参考にしながら、自社にとってBIツールが本当に必要か、またどのように導入を進めるべきかを検討してみてください。

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