コラム
GビズIDと電子申請について、社労士が解説
2020年4月から特定法人で始まった電子申請の義務化。既に電子申請を導入している、あるいは検討している企業でも新たに「GビズID」のワードを聞き、どのようなものなのだろうか?今までと何か違いはあるの?等、疑問点や不安があるのではないでしょうか。
この記事では、2020年4月より開始された「GビズIDと電子申請」について解説します。
1. 電子申請の簡便化
2020年4月より始まった社会保険・労働保険手続の電子申請義務化。政府は電子申請をさらに普及させるため、従来の電子証明書を利用した申請に加え、法人共通認証基盤のID/パスワード方式を新たに実施しました。
2. GビズIDとは?
法人番号を活用して、企業が一つのID/パスワードで複数の行政サービスにアクセスできる認証システムのことです。社会保険労働保険手続の他にも、次のような行政システムを利用することができます。
(2020年6月時点)
また、GビズIDには、3種類のアカウントがあります。
- gBizIDエントリー
- gBizIDプライム
- gBizIDメンバー
gBizIDエントリーは、オンラインで即日作成可能なアカウントですが、社会保険労働保険の電子申請を行う際には、gBizIDプライムが必要となります。gBizIDプライムは印鑑証明書と登録印で代表者であることの確認を行ってからの発行となります。通常、申請から2週間ほどでID/パスワードが発行されます。
また、使用する際にも、ID/パスワードに加え、所有物認証による二要素認証を行ってセキュリティを担保しています。gBizIDメンバーも組織の従業員用アカウントとして、gBizIDプライム同様にID/パスワードに加え、所有物認証による二要素認証を行います。
所有物認証には、「スマートフォンアプリ認証」と「ワンタイムパスワード認証」の2種類があります。
詳細については、アカウントの種類ごとにマニュアルが展開されているのでご参考にしてください。
3. GビズIDが利用できる社会保険・労働保険手続
現在、GビズIDを用いた社会保険・労働保険の電子申請対象予定となる手続は次のとおりです。
社会保険 | 資格取得届・70歳以上被用者該当 |
資格喪失届・70歳以上被用者不該当 | |
算定基礎届・70歳以上被用者算定基礎届 | |
月額変更届・70歳以上被用者月額変更届 | |
賞与支払届・70歳以上被用者賞与支払届 | |
被扶養者(異動)届 | |
国民年金第3号被保険者関係届 | |
雇用保険 | 雇用保険被保険者資格取得届 |
雇用保険被保険者資格喪失届 | |
雇用保険被保険者転勤届 | |
個人番号登録届 |
GビズIDを用いた社会保険労働保険の電子申請の対象一覧
日本年金機構が提供する届書作成プログラム、チェックプログラムを利用することでも電子申請が可能となります。
4. GビズIDのメリット・デメリット
メリットとデメリットは以下になります。
【メリット】
- 電子証明書と違い、現状は無料で使用可能
- 他の行政サービスでも利用可能
- 行政における手続きにかかる時間やコストの削除
【デメリット】
- 管理体制の強化が必要
- すべての手続に対応していない
- GビズIDを利用するための準備に手間がかかる
5. まとめ
GビズIDは、電子証明書がなくても電子申請ができるとされていますが、義務化対象とされている社会保険・労働保険手続のすべてには対応されていません。労働保険年度更新、雇用保険高年齢雇用継続給付申請、育児休業給付申請に関しては「GビズID」では未対応のため、これらについては引き続き「e-Gov電子申請」が必須となります。したがって、電子証明書はやはり必要となります。
また、電子申請を行うにあたっての民間システムは、電子証明書を用いた電子申請を想定してシステム構築し、提供を行っているため、オンライン化はますます加速化していくことが予想されます。自社に合ったやり方やシステムを検討、構築し、電子申請義務化対応を業務効率化や残業削減、企業価値のアップにつなげて欲しいと考えます。
株式会社小林労務(https://www.kobayashiroumu.jp/)
代表取締役社長 特定社会保険労務士
上村 美由紀
2006年 社会保険労務士登録
2014年 代表取締役社長就任
電子申請を取り入れることにより、業務効率化・残業時間削減を実現。
2014年に、東京ワークライフバランス認定企業の長時間労働削減取組部門に認定される。
社労士ベンダーとして、電子申請を推進していくことを使命としている。
おすすめソリューション
社労士コラム
- 社会保険・労働保険の電子申請義務化の対応方法について、社労士が解説
- 電子申請義務化に関するよくある質問について、社労士が解説
- 電子申請システムの導入事例について、社労士が解説
- GビズIDと電子申請について、社労士が解説
- 電子申請義務化に向けた対応 リニューアルしたe-Govについて、社労士が解説
- 高年齢者就業確保措置について、社労士が解説
- デジタル・ガバメント実行計画について、社労士が解説
- 健康保険組合の電子申請について、社労士が解説
- 育児介護休業法の法改正について、社労士が解説
- 社会保険の法改正について、社労士が解説
- 労働保険の法改正について、社労士が解説
- ジョブ型雇用について、社労士が解説
- 女性活躍推進法【2022年4月改正】について、社労士が解説
- 【令和4年10月1日施行】産後パパ育休(出生時育児休業)について、社労士が解説
- 労働安全衛生法とテレワークにおける作業環境のポイントについて、社労士が解説
- 【2023年4月施行】法定割増賃金率の引き上げについて、社労士が解説
- ISO30414について、社労士が解説
- 労働時間管理について、社労士が解説
- デジタル社会の実現に向けた政府と企業の動きについて、社労士が解説
- 【2023年4月施行】育児休業取得状況の公表義務化について、社労士が解説
- 「男女の賃金差異」公表義務化について、社労士が解説
- 給与計算の基本的な流れ:複雑化した給与計算を効率よく正確に進めるためのポイント
- デジタル給与払いとは:導入のメリット・デメリットや導入までの流れについて、社労士が解説
- 年次有給休暇の取得促進について、社労士が解説
- 賞与の計算方法:モデルケースを用いて分かりやすく解説
- 離職票の発行について、社労士が解説
- 【2023年(令和5年)度】職場のハラスメントについて、社労士が解説
- 【2024年(令和6年)4月施行】労働条件明示のルール変更について、社労士が解説
- 【2024年(令和6年)4月施行】裁量労働制の変更について、社労士が解説
- 人事労務担当者必見!2024年(令和6年)度法改正について、社労士が解説
- 【2024年(令和6年)度】労働保険の年度更新について、社労士が解説
- 【2024年(令和6年)度】算定基礎届について、社労士が解説
- 【2024年10月施行】社会保険適用拡大について、社労士が解説
- 改善基準告示 改正と影響について、社労士が解説
- 【2024年(令和6年)度】年末調整の変更点と定額減税の実施について、社労士が詳しく解説