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2022.03.17
経理財務トピックス

【電帳法改正 2022】電子帳簿保存法の改正と対応ポイントを元国税庁OBの専門家がわかりやすく解説

電子帳簿保存法(以下、電帳法)の改正が行われ、2022年1月1日に施行されました。電帳法は経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上などを目的としたものであり、今回の改正では帳簿書類を電子保存する際の手続きや要件が大きく緩和されています。しかし、その一方で企業が自主的に取り組まなければならない注意点もあります。そこで今回は、元国税局の情報技術専門官で、電子帳簿保存法のスペシャリストであるSKJ 総合税理士事務所 所長の袖山喜久造氏に話を聞きました。

1. 電帳法改正対応の最新動向

2022電帳法改正の主なトピック

まず、今回の電帳法改正をどのように捉えるべきでしょうか。これに関して袖山氏は「今回の改正では、国税庁の電帳法執行の方向性がやや違ってきたように受け止めています。これまでの法令解釈は、税務調査の効率性を優先した解釈がされがちであり、国税当局の側に重きを置いた内容になっていました。それが今回、業務の効率化など納税者の立場に立った内容になっているのです」と話します。

そして袖山氏は、大きなトピックとして「税務署長の事前承認制度廃止」、「タイムスタンプ要件の緩和」、そして「電子取引データの保存に係る出力書面等での保存措置の廃止」の3点を挙げます。

「電子取引データの保存業務の規定は全ての納税者が対象となり、ほぼすべての会社で電子取引が行われているだけに影響が大きい改正となりました。例えばメールで送られてきた領収書や請求書などは、これまでプリントアウトして保存することも認められていましたが、これからは電磁的記録で保存しておかなければなりません。ただし、電子取引データの保存について対応が遅れている状況を踏まえて、施行直前になって2年間の宥恕期間が設けられることになりました。これまで場当たり的に電子取引のデータのみを保存し、書面処理は継続するという検討をしている会社が多かったのですが、それではデータを保存する手間のみが増えるだけで企業の電子化を促進するという法令改正の趣旨に沿いません。この2年間では、しっかり腰を据えて電子化の方向性を決め、業務効率向上やDXにつながる取り組みをするべきと言えます」(袖山氏)

電帳法改正に対する取り組みの方向性

では、何から始めればよいのでしょうか。袖山氏の顧問先では、電子化したい書類は領収書や請求書が多いとのこと。これらの書類は業務運営の重要な書類であり電子化の優先度は高いと思われるものです。

「請求書は取引の最後に出てくる書類ですので、その前の段階の業務処理の電子化をどうするのかが今後の検討課題でしょう。例えば見積、納品、検収などの業務は依然として書面で処理している企業も少なくないでしょう。請求書や領収書は主に経理だけが関与するので業務への影響は限定的ですが、それ以外の処理は関わってくる社員が多く書類の枚数も膨大になります。また、業務手順を変更するために失敗したときのリスクが高くなります。しっかり時間をかけた検討が必要です」(袖山氏)

2. 電帳法対応のポイント解説

書面の証憑のデータによる保存については電帳法の入力や保存要件を満たす必要がありますが、今回の改正でかなり緩和されました。スキャナ保存の場合は書面の原本を廃棄することになりますが、万が一、電帳法の要件に従って保存ができていない場合には税法上保存が必要な書類が保存されていないことになります。期限内にシステムへ保存されていない場合など、要件に従った保存ができない場合には原本を保管する必要があります。袖山氏は「電帳法の要件に対応したシステムを導入する場合、基本的には電帳法の要件を満たしてデータ保存がされると考えてよいのですが、一方で運用によってカバーしなければならない点もあることに注意が必要です」と呼びかけます。

袖山氏がよく質問を受けるのが、タイムスタンプの対応です。タイムスタンプは一定の要件を満たす場合に不要となりましたが、タイムスタンプが廃止されたわけではありません。原本性を担保するためには、改ざんされていないことの証明が必要です。一定の要件について袖山氏は、次のように解釈するとのことです。

「他社管理のクラウドサーバで保存されるクラウドERPを利用している場合などでは、そのサーバーの時刻情報が公共時刻情報であれば、その時刻が保存日時として記録・確認できればタイムスタンプで証明される時刻情報に代替することができます。また、保存されたデータの訂正・削除履歴がすべて確認できれば、改ざんされたとしても改ざん前のデータが確認できタイムスタンプを付与した際の改ざん検知機能に代替することができ、タイムスタンプが不要になるのです」(袖山氏)

タイムスタンプに対応した証憑管理システムの導入にはコストが増加するのではという懸念もありますが、「タイムスタンプが不要のクラウドサービスなどを導入すれば、イニシャルコストは削減可能ですし、特に中小企業のスキャナ保存は促進されるのではないでしょうか。このタイムスタンプが不要となる要件ですが、ユーザーによる時刻情報やデータの訂正削除などが100%不可能となることが前提です。自社管理のオンプレミスのサーバーなどでは企業が恣意的に時刻情報や履歴を変更できる余地がありますので、要件を満たすとは言い切れません」と袖山氏は説明します。

3. 電帳法対応に加えて意識すべきこと

電帳法対応のためにシステムを新たに導入したり更改したりする企業が少なくないでしょう。袖山氏は、電帳法や税務調査対応だけでなく、その先を視野に入れてデジタルデータを活用することで、例えばテレワーク対応が可能になる業務を増やしたり、業務プロセスの削減にもつなげたりすべきだと呼びかけます。

また、袖山氏がもう1つ強調するのが、内部統制強化の必要性です。
「各種要件が緩和された一方で、これまで要件によって担保されていた不正防止の仕組みが無くなってしまいました。これからは自社の実態に則した仕組みを、自分たちで構築しなければなりません」(袖山氏)

例えば、領収書はおおむね3営業日以内に入力するという要件があったのはそもそも不正防止のためです。適正事務処理要件では2人以上の体制で処理することによって不正に対する牽制効果が期待できました。さらに、定期検査は第三者が行うことにより不正防止体制が構築されていました。これらは電帳法の要件から除外される改正がなされたましたが、逆に言えば企業がコンプライアンスを確保するには、自社で必要な体制を作らなければならないということです。

「デジタル技術を活用すれば、モニタリングしたり自動的にアラートを上げたりすることで内部統制を高めていくことも可能です。国税関係帳簿については、データを訂正や削除した場合に履歴が残ることによる事後検証性の確保や、システム間の確実なデータ連携による相互関連性の要件などが満たされれば、優良電子帳簿として、過少申告加算税が5%軽減できるインセンティブも整備されましたので、ぜひ積極的に取り組んでほしいと考えています」
(袖山氏)

4. 電帳法対応に効果を発揮するクラウドERP「ProActive C4」

袖山氏が指摘するように、企業の電子化には電帳法の要件対応されたシステムの選定が欠かせません。そこで役立つのがSCSKの提供するProActiveです。国産ERPとして、28年間、6,300社、280の企業グループを超える導入実績を持つERPパッケージであり、新シリーズとなる「ProActive C4」は、クラウドサービスとして提供され、これまで多数のERP導入実績で培ってきた業務プロセスのノウハウとSCSKグループの総合力を活かし、企業の成長を支援します。電帳法対応、コンプライアンス強化や業務効率化に検討してみてはいかがでしょうか。

SKJ総合税理士事務所 所長税理士 袖山 喜久造

SKJ総合税理士事務所
所長 税理士
袖山 喜久造

税理士・SKJ総合税理士事務所所長。中央大学商学部会計学科卒業。平成元年東京国税局に国税専門官として採用。都内税務署勤務後、国税庁、国税局調査部において大規模法人の法人税等調査事務などに従事。国税局調査部勤務時に電子帳簿保存法担当情報技術専門官として納税者指導、事務運営などに携わる。平成24年にSKJ総合税理士事務所開業を経て現職。

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