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2022.06.16
専門家解説(人事労務編)

【2022年(令和4年)度】算定基礎届について、社労士が解説

健康保険や厚生年金保険などの保険料は標準報酬月額をもとに算定されます。標準報酬月額は年に1回、届出するもので、その届出のことを「算定基礎届」といいます。2022年の提出期間は7月1日(金)から7月11日(月)までです。
今回の記事では、人事労務のエキスパートとして様々なサービスを全国に展開する小林労務が、算定基礎届の基礎知識から、書き方、提出方法まで、詳しく解説します。

1. 算定基礎届に関する基礎知識

(1)算定基礎届とは

健康保険や厚生年金保険などの保険料は標準報酬月額をもとに算定されます。標準報酬月額は、毎月の保険料や保険給付の計算の際に用いるもので、被保険者が事業主から受ける毎月の給料等の報酬月額を区切りのよい幅で区分し決定されます。被保険者が実際に受け取る報酬と標準報酬月額が大きくかけ離れないよう、年に1回、被保険者の報酬月額を届出し、標準報酬月額を決定します。これを「定時決定」といい、その届出を「算定基礎届」といいます。

(2)算定基礎届の対象者

7月1日時点の全ての被保険者および70歳以上被用者(※1)が算定基礎届の対象となります。ただし、以下の①~④のいずれかに該当する方は算定基礎届の提出が不要です。

  • 6月1日以降に資格取得した方
  • 6月30日以前に退職した方
  • 7月改定の月額変更届(定時決定で決まった標準報酬月額を改定する際の届出のことで、「随時改定」といいます。)を提出する方
  • 8月または9月に随時改定の予定があると申し出た方
※1 70歳以上被用者について
70歳以上であっても厚生年金保険の適用事業所に継続して使用される方、または新規に雇用される方で次の全ての条件に該当する人のこと。
70歳以上 / 過去に厚生年金保険の被保険者期間がある / 厚生年金保険適用事業所に使用され、週の所定労働時間及び月の所定労働日数が一般従業員の4分の3以上

2. 算定基礎届の書き方

算定基礎届は、実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように報酬月額を決定し直すことが目的です。届出では、以下の点に注意して、計算の対象となる日数や金額等を記載します。

(1)支払基礎日数

支払基礎日数とは、その報酬の支払い対象となった日数のことをいいます。時給制・日給制の場合は、実際の出勤日数が支払基礎日数となり、月給制・週給制の場合は、出勤日数に関係なく暦日数が支払基礎日数になります。
ただし、欠勤日数分だけ給料が差し引かれる場合は、就業規則、給与規程等に基づき事業所が定めた日数から欠勤日数を控除した日数となります。

(2)報酬月額の算出方法

算定基礎届に記入する報酬は、毎年4・5・6月に実際に支払われた報酬が対象となります。その3カ月の合計額を3で割って平均した額が報酬月額となります。なお、対象月の支払基礎日数が17日以上である必要があります。

(3)一般的な場合の記入例

3カ月とも支払基礎日数が17日以上のときは、下記の図のように計算します。名目にかかわらず報酬となるものはすべて含みますが、臨時に受け取るものや年3回以下支給される賞与は除きます。

※ガイドブックは、2022/6/1時点での掲載情報になります。今後更新の可能性がございますので、最新版は上記リンク先をご参照ください。また、令和4年度の算定基礎届事務説明動画がYouTube厚生労働省チャンネルに掲載されておりますので必要に応じてご確認ください。
参考:日本年金機構 | 令和4年度 算定基礎届事務説明【動画】

(4)パートタイム労働者・短時間労働者の場合

パートタイム労働者(※2)の定時決定は、一般の労働者とは別に、支払基礎日数によって算定の方法が異なります。3カ月間の支払基礎日数に17日以上の月がある場合、その月の報酬を対象に算定しますが、3カ月とも17日未満の場合、15日以上の月の報酬を対象に算定します。 短時間労働者(※3)の定時決定は、一般の労働者・パートタイム労働者とも別で、支払基礎日数によって算定の方法が異なります。支払基礎日数に11日以上の月がある場合は、その月の報酬を対象に算定します。

  
※2 パートタイム労働者について
「一週間の所定労働時間」および「1カ月間の所定労働日数」が同一の事業所に使用される通常の労働者の所定労働時間および所定労働日数の4分の3以上である被保険者のこと。
  
※3 短時間労働者について
パートタイム労働者の基準を満たさない場合であっても、特定適用事業所・任意特定適用事業所に勤務し、次の全ての条件に該当する人のこと。(令和4年5月時点)
週労働時間20時間以上 / 雇用期間1年以上 / 月額賃金8.8万円以上 / 学生でない

ここで、みなさまからよく質問いただく点について紹介します。

(5)よくある質問

  • Q:7月1日に退職した人の算定基礎届は必要?
  • A:7月1日に退職した人の資格喪失日は7月2日のため、必要です。
  • Q:直前の月額変更届による標準報酬月額と等級が同じ場合にも算定基礎届は必要?
  • A:昇給等により随時改定が行われ、その年の定時決定において標準報酬月額に変更がない場合でも、算定基礎届の提出は必要です。
  • Q:算定基礎届の中に記入する支払基礎日数に有給休暇は含まれる?
  • A:有給休暇は労働の対価としての報酬ですので、支払基礎日数に含まれます。有給休暇を含めて、支払った報酬の支払基礎日数が17日以上の月を算定の対象とします。

3. 算定基礎届の提出について

(1)提出物

「届出用紙」で提出する場合

  • 被保険者報酬月額算定基礎届(70歳以上被用者算定基礎届)
  • 被保険者報酬月額変更届(70歳以上被用者月額変更届)
    ※ただし該当者がいる場合に限る

「電子申請」で提出する場合

  • 被保険者報酬月額算定基礎届(70歳以上被用者算定基礎届)<CSV ファイル添付>
  • 被保険者報酬月額変更届(70歳以上被用者月額変更届)<CSV ファイル添付>
    ※ただし該当者がいる場合に限る

(2)提出先

日本年金機構の事務センターまたは管轄の年金事務所

(3)提出方法

電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)、郵送、窓口持参

(4)提出期限

毎年7月10日まで(年によって前後する場合があります。)

4. 算定基礎届の提出における電子申請利用のメリット

電子申請はインターネットを経由して「カンタン・便利に」申請を実施することが可能になりますが、そのメリットは大きく3つ挙げられます。

(1)いつでも、どこでも申請可能

提出先事業所の開所時間にかかわらず、24時間いつでも申請することが可能です。また、インターネット環境さえ整っていれば、職場に限らず遠隔地からの申請も可能なため、新型コロナウイルス感染症拡大により在宅勤務やテレワークが増えた昨今においても、電子申請を活用することで申請業務の効率化を図ることが可能になります。

(2)手書きする手間の削減

申告書や届出書を手書きする場合には大変な手間がかかりますが、電子申請であればその手間を削減することができます。訂正が必要になったとしても、書き直しの手間は発生しません。

(3)時間・お金等のコスト削減

電子申請であればインターネット環境さえあればどこからでも申請が可能なため、提出先事業所へ足を運ぶ必要はありません。したがって、そこへ行くための交通費や郵送費、人件費を削減することができます。

電子申請の導入メリット

図:電子申請の導入メリット

小林労務が提供する、電子申請手続きに特化したシステム「e-asy電子申請.com」はSCSKのERP「ProActive」給与管理システムとの連携が可能なため、算定基礎届の提出に必要なデータをProActiveから出力し、e-asy電子申請.comへ取込むことで、申請が可能です。算定基礎届のようにほとんどの従業員が対象になる手続きにおいては、電子申請を利用することで手間と時間を削減することができ、申請業務において大幅な業務効率を図ることができます。

5. おわりに

「算定基礎届」により決定された標準報酬月額は、原則1年間(9月から翌年8月まで)の各月に適用され、納めていただく保険料の計算や将来受け取る年金額等の計算の基礎となります。2022年の提出期間は7月1日(金)から7月11日(月)までと短くなっていますので、電子申請等を活用しながら、期限までに必ず提出するようにしましょう。

ProActive 給与管理システム

SCSKが提供するProActive 給与管理システムでは、労働保険の年度更新業務資料出力をはじめ、多様化する人事制度や雇用形態に応じ、様々な報酬計算に対応しています。また、法改正や各種申告制度の変更についても随時対応いたします。
2020年からは、社会保険・労働保険の電子申請義務化に伴い、ProActiveとe-asy電子申請.comの電子申請連携ソリューションを提供しています。

電子申請連携ソリューション 連携イメージ図

株式会社小林労務 上村 美由紀氏

株式会社小林労務(https://www.kobayashiroumu.jp/
代表取締役社長 特定社会保険労務士
上村 美由紀

2006年 社会保険労務士登録
2014年 代表取締役社長就任
電子申請を取り入れることにより、業務効率化・残業時間削減を実現。
2016年に、東京ワークライフバランス認定企業の長時間労働削減取組部門に認定される。
社労士ベンダーとして、電子申請を推進していくことを使命としている。

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