コラム

2020.11.30
クラウドERP

2020.11.30

基幹システムを再構築(リプレイス)するメリット

企業の業務を支える生産、販売、在庫などの管理システム、人事給与システム、財務会計システムを、一般的に基幹システムと呼びます。現在、多くの企業が基幹システムの再構築(リプレイス)を検討している背景にはどんな事情があり、再構築することにどんなメリットがあるのでしょうか。また、再構築するに当たり、どうすれば失敗せずにうまく進められるか、考えていきましょう。

1. 基幹系システムとは

前回のコラムでも少し紹介しましたが、基幹システムは企業の業務を支えるシステムで、生産、販売、在庫などの管理システム、人事給与システム、財務会計システムのことを指します。一方、基幹システムと分けてとらえられているのが、情報系システムです。情報系システムは、社内外とのコミュニケーションや意思決定を支援するものです。

かつて基幹系システムと言えばメインフレームと呼ぶ大型コンピュータを指すことが多かったのですが、今日では基幹システムとして、UNIXやLinux、Windows Serverなどの基盤上に、各業界のベストプラクティスを収録したERPパッケージを導入する形態も増えてきています。

ERPは、企業を構成する各部門のシステムを1つのデータベースで集約して管理する仕組みです。企業が持つヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源を全体最適の視点で管理するのです。

2. 基幹システムを再構築する必要性・理由

現在、多くの企業で基幹システムの再構築の機運が高まっています。その背景にはどんな事情があるのでしょうか。

きっかけの1つは、経済産業省が2019年3月に発表した「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」※1で、「2025年の崖」が指摘されたことです。2025年の崖は、複雑化、老朽化したレガシーシステムが残った場合に想定される国際競争の喪失や経済の停滞などのリスクを示しています。このDXレポートでは、古い基幹システムをレガシー(遺産)と呼び、特にDXの実施の観点で基幹システムの再構築を促しています。

DXレポートにおいて、「レガシーシステムを(DXの)足かせと感じる理由」を聞いたアンケートが紹介されています。回答は多い順に、「ドキュメントが整備されていないため調査に時間を要する」「レガシーシステムとのデータ連携が困難」「影響が多岐にわたるため試験に時間を要する」「技術的な制約や性能の限界がある」「有識者がいない、ブラックボックス化しているため触れたくない」となっています。

上記の問題の多くについて、根本的な原因は既存システムのブラックボックス化にあると指摘しています。結果として「ユーザ企業において、自社システムの中身が不可視になり、自分の手で修正できない状況に陥った」ことがレガシー化の本質だと指摘しているのです。長年の蓄積によって技術の老朽化、システムの肥大化や複雑化を招いている上で、それが把握できないのでは、柔軟な情報連携を必要とするDXの実行は難しくなってしまうでしょう。

基幹システムを再構築するもう1つの大きな理由は人材不足です。特に、メインフレームのアプリケーションを開発する言語であるCOBOLなどの知識を持つ技術者は少なくなっており、今後時間が経つにつれて対応できるエンジニアはますます減っていく見込みです。

こうした状況に関連して、「IT 関連費用のうち8割以上が既存システムの運用・保守に充てられている」ことも経産省は課題として挙げています。

※1 経済産業省:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(2019年3月)

3. 基幹システムを再構築するメリット

では基幹システムを再構築することにはどんなメリットがあるのでしょうか。一言で説明すれば、時代にあった思想で構築した仕組みとそれを可視化できる環境により、その時点でのビジネスの可能性を最大限に引き出せること、となるでしょう。再構築によりシステムの複雑化とブラックボックス化を回避できるわけです。

また、財務会計や管理会計、販売・購買、人事・給与、資産管理などの業務領域を個別の業務システムとして支援する一方で、各業務に分散するデータを集約して一元管理できるようになります。よって、自社の経営状況を的確にとらえ、迅速な意思決定が可能になります。また、外部も含めて、多数のシステムと連携できるようになります。

DXレポートには、以下のような事例が紹介されています。ある電気通信事業者は、3~5年で基幹システムを刷新することで、まずはITコストに占める運用費用を以前の80%強から50%ほどに削減しました。さらに、データが契約単位で管理されていたため、顧客ごとに、複数のサービスに関するデータを活用して新たなサービスを提供するといった施策が打てなかったことが分かりました。新システムでは、テーブル構造を契約単位の管理から顧客単位の管理に変更し、またバッチ処理などの改善により、スマホから契約情報を変更すると即座に反映される機能などを実装し、顧客ごとのサービス向上を実現したのです。

今後のビジネスを見据えると、データのリアルタイム活用やAPIによる外部連携の準備をすることで、その時々のビジネス機会に応じて柔軟なアプリケーションを構築できるようにしたいところです。DXにおける最近のキーワードとして、AIや機械学習、IoTだけでなく、ロボット、遠隔医療、スマートシティ、異常の予兆検出などあらゆる業界のさまざまなものが挙がってきます。「どんなシステムともデータ連携し、アプリケーション開発につなげられる」ことが求められていると言えるでしょう。

また、できれば一定周期で基幹システムの再構築は検討すべきでしょう。時代に合わせた検討することが大切です。検討の結果、再構築せず、延命する結論もあるはずです。

4. 将来失敗したと感じない基幹システム再構築の進め方

では、基幹システムを再構築するに当たり、どうすれば将来失敗したと感じないようになるでしょう。

再構築を進める際には、経営層、CIO(最高情報責任者)や情報システム部門、業務部門の役割を明確にしておく必要があります。基幹システムの再構築の際に、業務自体の見直しも必要になることが多く、その場合、現場からの抵抗が大きくなります。それを乗り越えるためには、経営層が変化への旗を振る必要があります。

一方、CIOを中心とする情報システム部門は、ベンダー企業の優劣を評価する能力が求められます。ここで、日本特有とも言える懸念材料が、「有名なベンダーに投げたので大丈夫」といった安心感を持つ可能性がある点です。これは、米国にはシステムを内製する企業が多い一方で、日本はベンダーへの委託がシステム構築の主流になっていることが背景にあります。

もう1つの重要なステークホルダーである事業部門は、プロジェクトのオーナーシップを持ち、当事者意識を持って、仕様決定、受入テストなどを実施していく必要があります。全社最適を実現する観点から、事業部門がシステムに合わせて業務を変えなくてはならない場面も出てくるでしょう。現在、なかなか実現できていない課題ともいわれています。

DXレポートに掲載されている「レガシーシステムが存在することによるリスク・課題」には、「保守・運用が属人的となり継承が難しい」「事業の環境変化や新たに事業に対応できない」「保守・運用においてコスト高の原因になる」が挙げられています。こうした指摘を踏まえて、ベンダーの選定や稼働環境の検討も必要です。
処理能力の確認などのサイジングや、OS、アプリケーション、データベースの更新など、保守や運用の手間を外部に委託することを検討しましょう。法令の改正など、詳細を自社で細かくチェックすることなく、自動的にアップデートされる点など、外部に委託することのメリットは計り知れません。

また、できるだけカスタマイズするべきではありません。カスタマイズすることにより、開発費用や保守費用の増加に結びつき、まだ見えていない将来の「事業の環境変化」に柔軟に対応するための基盤が失われます。ベンダーを変更しない前提ですが、標準パッケージであれば、必要時にバージョンアップされ最先端のパッケージソフトが提供されます。

昨今の市場の流れでは、クラウドERPの採用も一つの選択肢として上がってくるでしょう。

多くの企業の基幹システムは、「DXに対応できるのか」「保守業務にかかる比率が高い」など、将来のビジネスへの対応を見据えた課題があります。一方で、再構築するのも決して簡単ではありません。失敗しない基幹システムの再構築をするためには、慎重に計画・検討しながら、経営層、CIOと情報システム部門、事業部門がバラバラに動くのではなく、全社一体となって再構築に臨む必要があり、時代にあった基幹システムのあり方の検討が非常に大切になります。

(監修:青山システムコンサルティング シニアマネージャ 嶋田秀光)

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