コラム
「テレワーク・在宅勤務時代」通勤手当の実費支給について
検討すべきポイント
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、テレワーク・在宅勤務が急速に浸透してきました。1カ月のうちの多くをテレワークや在宅勤務を行う社員が増加してくると、通勤手当の支給方法が従来のままでよいのか、という問題に直面します。今回は、こうした問題に対するアンケート調査の結果なども踏まえ、新しい時代における通勤手当支給のポイントについて考えてみます。
1. 通勤手当の実費支給を実施・検討している企業は9割
最初に、テレワークや在宅勤務が多くなった際の交通費にかかわる変化について、おさらいしておきましょう。
在宅勤務を行うようになると、従来支給されていた「定期代」などの通勤手当をどうするか、という問題が発生します。オフィスに通勤する交通費として、個々の社員の通勤経路を申請してもらい定期代として支給していたものが、例えば、月の半分以上が在宅勤務で残りの日をオフィスに通勤するとなった場合に、これまでどおり定期代を支給すべきか、という問題に突き当たります。
またテレワークは自宅のみで行うとは限りません。会社が用意したサテライトオフィスで実施するケースもあるでしょう。その場合は、サテライトオフィスまでの交通費がかかります。
経路検索ソフト「駅すぱあと」で有名なヴァル研究所は、最近、企業の人事担当者を対象に「リモートワーク時代の通勤手当に関するアンケート調査」を行い、その結果をまとめました。
それによると、テレワークの常態化により、「出勤日数に応じた通勤手当の実費支給を既に実施している・検討している」という回答が全体の97.1%にのぼりました。さらに実費支給の種別は、81.6%が通勤費・交通費としており、支給対象者の判断は、67.7%が会社側で決定するとしています。また会社以外のサテライトオフィスなどへの通勤経路手当は、交通費で支給するという回答がほとんどでした。
例えば、SCSKでは、2020年10月からオフィス勤務者の通勤手当を廃止しています。また、報道によると※1、富士通、NTTデータ、ヤフー、カルビーなどで「通勤定期代支給廃止(実費精算)」という方針を打ち出しているようです。さらにテレワーク申請日数が10日を超える社員の通勤手当は廃止、2カ月を超えて平均週3日以上通勤経路を往復しない社員は実費精算に変更、といった企業もあるようです。
このようにしてみると、通勤手当は実費支給という流れが一般化してきているとみてよいでしょう。
※1
IT企業の通勤手当が「絶滅寸前」、代わるテレワーク手当の月額相場は?(出典:日経クロステック)
テレワーク下での「通勤手当」と「在宅勤務手当」、どうやって支給する?(2/3)(出典:ITmedia ビジネスオンライン)
2. 通勤費の支給ルール変更と就業規則との関係
通勤定期券代の支給から、「1日あたりにかかった料金(往復乗車賃)×出社日数」という方法で通勤手当が支給されることになると、そうした内容を就業規則に反映しなければならないのか、という疑問がでてきます。
厚生労働省が作成した「テレワーク モデル就業規則 作成の手引き」※2では、「テレワーク勤務を導入する際に就業規則の変更が必要となる場合は、テレワーク勤務に係る定めを就業規則本体に盛り込むのか、あるいは、新たに『テレワーク勤務規程』を作成することになりますが、どちらにするのかは、個々の会社の判断となります」としています。
従業員の中に、テレワークや在宅勤務を行わない人がいる場合には、「テレワーク勤務規程」を別途設けて、通勤手当も含めた規則を定めた方が分かりやすいでしょう。
また、通勤手当は標準報酬月額や雇用保険を算出する際の対象となります。通勤手当を固定的な賃金である定期代から出勤日数に応じた交通費の実費に変更した場合には、社会保険料が下がる可能性があります。
3. 通勤手当の支給ルール変更をシステムでどう対応するか?
多くの企業では、通勤手当や交通費を含めた給与の計算・支給について、システム化しているはずです。しかし、既存の環境では、こうした変更を迅速には行えないケースもあるでしょう。では、その場合どうすればよいのでしょうか。少なくとも、テレワーク勤務者と非テレワーク勤務者というように、異なる通勤手当の計算方法を複数種類設定できる給与システムが必要になります。
例えば、SCSKの「ProActive 給与管理」では、標準機能として従来方式、新方式の両方で通勤手当の算出が可能となっており、通勤手段マスタで通勤手当の算出方法を設定できます。また業務別にナビゲーションメニューを提供しており、これを利用することで、新担当者への業務引継ぎ負荷の軽減や、年末調整・社保改定・労働保険の年次更新といった年1~2回行う業務を行う際にも、正確に処理を遂行できます。
さらに各社員のPCやスマートフォンからセルフエントリーが可能となるため、ペーパーレス化も素早く実現し、業務の負荷も軽減されます。「駅すぱあと」とも連携しており、ルールが変わっても正確な通勤費計算が可能です。
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