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2025.04.21
ERPノート

ビジネスアプリケーションとは:種類や業務における活用例、選び方のポイントを解説

企業の規模拡大とともに、業務プロセスの複雑化や人材管理の負担が増大しています。多くの企業が抱えている現状として、経営判断に必要なデータが散在し迅速な判断が難しくなることや、属人化した単純作業に追われて本来の業務が滞ることなどが問題視されています。

ビジネスアプリケーションの活用は、業務の効率化や人手不足の解消など、企業が抱えるあらゆる問題解決に役立ちます。この記事では、ビジネスアプリケーションの種類や業務における活用例、企業に最適なアプリケーションの選び方のポイントについて解説します。

1. 企業におけるビジネスアプリケーションの必要性

企業が抱えるあらゆる課題の解決に、ビジネスアプリケーションは欠かせないものとなっています。

ビジネスアプリケーションにはERPやBIツールなどさまざまなものがあり、活用することで次のような効果が期待されます。

• 人手不足の解消
ビジネスアプリケーションで業務の自動化と効率化が可能です。受発注システムを導入すると、注文処理時間は大幅に減少します。これにより、少ない人員でも業務を円滑に進められます。
• コストの管理・削減
リアルタイムでの経費管理や予算追跡が実現可能です。クラウド会計ソフトを活用することで、経理担当者の作業時間が短縮され、経営者は財務状況をいつでも確認できるようになります。結果として、支出を適切に管理し、コスト削減ができるようになります。
• データ活用の促進
ビジネスアプリケーションで収集したデータを分析し、経営判断に生かすことが可能です。顧客管理システム(CRM)のデータ分析により、効果的な営業戦略を立案し、顧客満足度向上を実現することもできるでしょう。

激変するビジネスシーンに対応していくためにも、ビジネスアプリケーションの必要性はますます高まっていくと予想されます。

2. ビジネスアプリケーションとは

ビジネスアプリケーションとは、企業の業務を効率化し、生産性を向上させるために開発されたソフトウェアの総称です。さまざまな業務プロセスをサポートし、企業がより効果的に運営できるように設計されています。

ビジネスアプリケーションの主な役割は次のとおりです。

業務効率化
  • 手作業や非効率なプロセスを自動化することで、業務の効率を大幅に向上させる
情報共有
  • クラウドベースのプラットフォームやコラボレーションツールを使用することで、リアルタイムでデータやドキュメントなどの情報共有が可能になる
データ管理
  • アプリケーションを活用し顧客情報や販売データなどを一元管理することで、意思決定に必要な情報を迅速に取得できるようになる
顧客対応
  • 顧客からの問い合わせやフィードバックを一元管理し、効率的に処理することで、顧客満足度向上が期待できる

このように、ビジネスアプリケーションにはさまざまな役割があります。企業に適したビジネスアプリケーションを効率よく活用することで、企業全体の業務プロセスの最適化や顧客サービスの向上を図り、持続的な成長が期待できます。

ビジネスアプリケーションは企業が競争力を維持し、激変するビジネスシーンで成功するための重要なツールとなっているのです。

3.ビジネスアプリケーションの種類と活用例

主な4つのビジネスアプリケーションを活用例とともに紹介します。

ERP
  • 企業の基幹業務を統合的に管理するアプリケーション
BIツール
  • 企業が保有する膨大なデータを収集・分析し、可視化することで、経営判断をより的確に行うためのアプリケーション
CRM
  • 顧客情報を一元管理し、営業活動の効率化を図るアプリケーション
HRM
  • 企業の人事にかかわるさまざまな業務を、コンピュータシステムで効率的に管理するためのアプリケーション

(1)ERP

ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業の基幹業務を統合的に管理するソフトウェアです。財務・人事・生産・販売・在庫など、企業の主要な業務プロセスを一元管理し、リアルタイムでデータを共有・分析できます。

ERP(Enterprise Resource Planning)の役割

ERPの主な役割は次のとおりです。

一元管理
  • 企業のあらゆるデータを一つのシステムに集約し、統一的に管理する
業務効率化
  • 複数の部門間の連携を強化し、業務プロセスを自動化することで、業務効率を大幅に改善する

また、近年注目されているクラウドERPは、業務効率化やコスト軽減・システムの運用および保守の負担軽減にも役立ちます。

(2)BIツール

BIツール(Business Intelligence Tool)は、企業が保有する膨大なデータを収集・分析し、可視化するためのソフトウェアです。経営者や意思決定者に対して、データに基づいた的確な判断材料を提供するのがBIツールの役割です。

BIツールの主な役割は次のとおりです。

データの分析
  • 集めたデータをさまざまな角度から分析することで、売上の変動要因や顧客の行動パターンなど、さまざまなデータの詳細を把握できるようになる
意思決定の支援
  • 分析結果に基づいて、どの施策を実行すべきか、どの製品に力を入れるべきかなど、具体的な意思決定をサポートし、経営の効率化や収益の向上をサポートする
データの可視化
  • 複雑なデータをグラフやチャートで可視化することで、経営層や現場でも直感的に状況を把握しやすくなります。
    これにより、経営状況を迅速に把握し、問題点や改善点を特定できるようになる

BIツールは、ERPシステムと連携させると、企業全体のデータに基づいたより正確かつ迅速な意思決定が可能になります。ERPで一元管理されたデータをBIツールで分析することで、経営状況の可視化やボトルネックの特定が可能となり、より実効性の高い経営戦略の立案に役立ちます。

BIツール(Business Intelligence Tool)の役割

(3)CRM

CRM(Customer Relationship Management)は、顧客情報を一元管理し、顧客との関係性を強化するためのソフトウェアです。

CRMの主な役割は次のとおりです。

顧客情報の一元管理
  • 顧客情報を一元管理することで、関係部門でリアルタイムに情報を共有できるようになる
営業活動の効率化
  • 顧客データを活用し的確なアプローチが可能になる
顧客満足度の向上
  • 顧客の要望や問い合わせに迅速かつ適切に対応できる
優良顧客の育成
  • 既存顧客へのフォローアップが確実に行えるようになり、長期的な関係構築につながる
データ分析による戦略立案
  • 蓄積されたデータを分析し、効果的なマーケティング戦略を立てられるようになる

これらにより、CRMは企業の顧客中心のアプローチを支援し、売上向上と業務効率化に貢献します。

(4)HRM

HRM(Human Resource Management)は、企業の人的資源を効率的に管理・活用するための包括的なソフトウェアです。従業員を単なる労働力ではなく、企業の成長と競争力を支える重要な資産として捉えます。

HRMの主な役割は次のとおりです。

人材の戦略的活用
  • 企業目標に沿った人材の採用・育成・配置を実施する
従業員の能力開発
  • 研修やキャリア支援を通じて、個々の能力を最大限に引き出す
公平な評価と報酬
  • 成果や貢献度に基づいた評価・報酬制度を構築する
組織文化の醸成
  • 従業員のモチベーション向上と組織への帰属意識を高める
効率的な人事管理
  • 採用から退職までの一連のプロセスを体系的に管理する

このようなことから、HRMを導入すると、従業員の生産性向上や優秀な人材の確保・定着、組織全体の競争力強化が期待されます。

4. ビジネスアプリケーションを選ぶときのポイント

ビジネスアプリケーションの選び方のポイントを4つ説明します。

  • • 自社の課題を明確にする
  • • 必要な機能を確認する
  • • ベンダーを比較する
  • • 導入コストと運用コストを考慮する

(1)自社の課題を明確にする

ビジネスアプリケーションを選ぶ際には、まず自社の課題を明確にすることが重要です。

一例として、次のようなことが挙げられます。

【現在の業務でどのような問題を抱えているか】

  • • データ入力の二重作業による時間の無駄
  • • 国際拠点間の情報共有の遅延
  • • 顧客データの管理不足による機会損失
  • • 多言語対応の不足によるコミュニケーション障壁

【どのように課題を解決したいのか】

  • • グローバルな業務プロセスの標準化と効率化
  • • リアルタイムでのデータ分析と意思決定支援
  • • 顧客満足度の向上と顧客体験の一貫性確保
  • • 多言語・多通貨対応によるグローバル展開の促進

このように「現在の業務でどのような問題を抱えているか?」「どのように課題を解決したいのか?」の2つの視点から明確にしていくと、自社に最適なビジネスアプリケーションを理解し、効率よく導入できるようになります。

(2)必要な機能を確認する

ビジネスアプリケーションを選ぶためには、洗い出した自社の課題を元にして必要な機能を確認することも重要なポイントです。

【自社の業務に必要な機能(一例)】

  • 顧客管理
  • 顧客情報の一元管理・履歴追跡
  • プロジェクト管理
  • タスク割り当て・進捗管理
  • 経費精算
  • 申請、承認フロー・レポート作成
  • 在庫管理
  • 在庫数の把握・入出庫管理
  • 財務管理
  • 仕訳の自動生成・帳簿管理

【あれば便利な機能(一例)】

  • AIによる予測分析
  • 売上予測・需要予測
  • モバイル対応
  • 外出先からのアクセス・リアルタイム更新
  • 多言語対応
  • グローバル展開のサポート
  • 自動レポート生成
  • 定期的なレポートの自動作成
  • 他システムとの連携
  • データの一元管理・業務の効率化

「自社の業務に必要な機能」と「あれば便利な機能」を明確にすることで、最適なアプリケーションを無駄なく選択できるようになります。ビジネスアプリケーションは、現在の利便性のほかに将来の拡張性も考慮に入れ、成長に合わせて機能を追加できるシステムを選ぶことが重要です。

(3)ベンダーを比較する

ビジネスアプリケーションを導入する際には、自社のニーズに適したベンダーを選ぶことも重要なポイントです。ベンダーの選定を失敗してしまうと、期待どおりのシステムが導入できない・想定以上のコストがかかるなどのトラブルの原因になるおそれがあります。

ベンダーを比較するときは、次の観点に注目しましょう。

導入実績と業界評価
  • • 同業他社での導入実績を確認し、成功事例や課題を把握する
  • • 業界専門誌やレビューサイトなどで、ベンダーの評判や信頼性を調査する
サポート体制
  • • 導入後のトレーニングや技術サポートの内容を確認する
  • • 問い合わせ対応の迅速さや、カスタマイズの柔軟性などを評価する
コスト
  • • 初期導入費用と月額費用の内訳を詳細に確認する
  • • 隠れたコスト(追加費用やアップグレード費用など)がないか確認する
  • • 自社の予算内に収まるか、費用対効果を検討する
セキュリティ対策
  • • データ暗号化やアクセス制御などのセキュリティ機能を確認する
  • • 法令遵守(GDPR、個人情報保護法など)への対応状況を確認する
  • • セキュリティ認証(ISO 27001など)の取得状況を確認する

ベンダーを比較する際には、デモや試用期間を活用して、実際の使用感を確認することも重要です。

(4)導入コストと運用コストを考慮する

ビジネスアプリケーションを活用していくためには、初期コストや運用コストがかかります。ビジネスアプリケーションを選ぶ際には、初期コストや運用コストはもちろん、トラブル時に発生するおそれがある費用まで考慮し、比較検討しましょう。

考えられる費用の一例として、次のようなものがあります。

【初期費用】

  • システム導入費用
  • 基本的なセットアップ費用
  • カスタマイズ費用
  • 自社の業務に合わせた調整にかかる費用
  • 導入支援費用
  • コンサルティングや従業員トレーニングにかかる費用
  • データ移行費用
  • 既存システムからのデータ移行にかかる費用

【運用コスト(クラウド型の場合)】

  • 月額利用料
    (クラウド型の場合)
  • 基本料金
  • 基本機能の利用に対する料金
  • ユーザー数に応じた料金
  • 利用人数によって変動する費用
  • 追加機能の料金
  • オプション機能の利用に対する追加費用
  • ストレージ容量に応じた料金
  • データ保存容量による追加費用
  • システムアップデート
    費用
  • 定期的なバージョンアップにかかる費用
  • セキュリティ対策費用
  • セキュリティパッチの適用や監視にかかる費用

【トラブル発生時や緊急時にかかる可能性のあるコスト】

  • トラブル対応費用
  • システム障害やサイバー攻撃。その他の不具合対応にかかる費用

これらの費用を総合的に考慮し、短期的な導入コストだけでなく、長期的な運用コストやトラブル時に発生するおそれのあるコストも含めて検討することが重要です。

また、ROI(投資対効果)を計算し、システム導入による業務効率化や生産性向上などのメリットと比較した上で、自社に適したアプリケーションを導入しましょう。

5. ビジネスアプリケーションERP導入の成功事例

三重県信用農業協同組合連合会の事例

三重県信用農業協同組合連合会は、クラウドERP「ProActive C4」を導入し、業務効率化とコスト削減を実現しました。

従来のシステムでは、個別開発によるデータのサイロ化や複雑化が課題でした。そこでProActive C4を導入したところ、人事給与・勤怠管理、・固定資産管理などのシステムが一元化し、データ連携が改善されました。また、クラウド化によって、法改正へのシステム対応が自動化され、運用負荷軽減につながっています。
さらに、ワークフロー機能を活用し、ペーパーレス化や承認プロセスの効率化を進めています。

導入の効果として、人事部門の業務効率が向上し、残業時間が約30%削減されました。固定資産管理では、データ入力や集計作業の手間が大幅に軽減されています。さらに、システム保守や運用にかかるコスト削減も実現しました。
三重県信用農業協同組合連合会は、ProActive C4を活用して働き方改革を推進し、業務効率化の文化を根付かせていこうとしています。今後は、経費精算や購買管理などの機能も順次導入していく予定です。

参考:導入事例|三重県信用農業協同組合連合会

6. まとめ

ビジネスアプリケーションは、企業の業務を効率化し、生産性を向上させるため欠かせないソフトウェアの総称です。

企業の規模拡大や業務の多様化に伴い、ERPやBIツール、CRMなどのアプリケーションが注目を集めています。導入の際は、現状の業務フローを分析し、必要な機能を明確にすることが肝心です。ベンダー選びでは、サポート体制や将来的な拡張性も重要な判断材料となるでしょう。

ビジネスアプリケーション導入による業務効率化を成功させるには、運用コストや社内の受け入れ体制も含めた総合的な検討が欠かせません。経営戦略に沿った適切なアプリケーションを選び、段階的に導入していきましょう。

青井 真吾

AOIS Consulting株式会社
代表取締役
青井 真吾

大学卒業後はIT企業に入社。システムエンジニアとして大手企業向けのERPシステム開発を経験。
その後は、フリーのITコンサルタントとして、人材派遣会社の基幹システムの開発およびERPシステムの導入、不動産会社の商業施設での販促システムの導入、自動車メーカーでコネクティッドカー開発のプロジェクト管理、SIerでのSalesforceの導入、ファッション業界の企業でSalesforceと連携する周辺システムの導入を経験。
現在は法人化し主に企業のシステム開発プロジェクトを支援。

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