コラム
データドリブン経営を実現するBIツールとは:活用のメリットや注意点を紹介
現代のビジネスで重要な資源の1つが「データ」です。データを活用した経営アプローチを「データドリブン経営」と呼びます。
この記事では、データドリブン経営の概念、その背景、メリット、進め方、そしてBIツールの活用方法まで詳しく解説します。経営者やマネージャーはこの記事を読むことでデータを活用した戦略的な意思決定の方法について学べるでしょう。データをビジネスに活かすための参考になれば幸いです。
目次
- 1 データドリブン経営とは
- 2 データドリブン経営が求められる背景
- (1)顧客ニーズの多様化
- (2)市場動向や顧客ニーズの変化の加速
- (3)デジタル技術の進化
- 3 データドリブン経営のメリット
- (1)顧客ニーズをより正確にビジネスに反映できる
- (2)自社の強みや課題を発見できる
- (3)精度の高いスピーディーな意思決定が可能になる
- 4 データドリブン経営の進め方
- (1)必要なデータの定義
- (2)データの収集・蓄積
- (3)データの分析・意思決定
- 5 データドリブン経営でBIツールやERPを活用するメリット
- (1)社内に散在しているデータを統合できる
- (2)タイムリーに効率的なデータ分析ができる
- 6 データドリブン経営でBIツールやERPを導入する際の注意点
- (1)導入目的を明確にする
- (2)分析に必要なデータを蓄積できているか確認する
- (3)連携できるシステムを確認する
- 7 まとめ
1. データドリブン経営とは
データドリブン経営とは、企業経営において、データを基に意思決定を行う経営アプローチを指します。
具体的には、市場の動向、顧客の行動パターン、商品の売上など、さまざまなデータを収集・分析し、その結果を基に戦略を立案・実行します。
従来は経験や勘に頼ることが多かった経営判断を、データに基づく客観的な視点で行うことで、より精度の高い経営が可能になるのです。
また、データは経営者だけでなく全社員が共有・活用することで、組織全体でのデータ利活用が進み、経営の効率化や競争力向上が期待できます。
2. データドリブン経営が求められる背景
現代ビジネスにおいて、データドリブン経営が求められる背景には何があるのでしょうか。それは主に以下の3点です。
- 顧客ニーズの多様化
- 市場動向や顧客ニーズの変化の加速
- デジタル技術の進化
(1)顧客ニーズの多様化
近年、消費者のニーズは日々変化し、多様化しています。このような多様な時代には、一律の商品やサービスではなく、個々の消費者のニーズに基づいた商品を提供することが求められます。
消費者の行動を詳細なデータとして捉え、それを分析することで、顧客のニーズをより正確に把握することができるでしょう。具体的には、消費者の購買行動やアンケートなどの膨大なデータを統計的に解析し、消費者ごとの傾向やパターンを見つけ出します。
データドリブン経営では、このような分析結果に基づいて商品開発やサービス提供を行うことで、1人ひとりの消費者のニーズを満たす商品提供ができるのです。従来の経営者やマーケティング担当者の主観や経験に頼る方法とは異なり、より科学的かつ精密なアプローチで消費者のニーズを捉え、それに応えることが可能となります。
(2)市場動向や顧客ニーズの変化の加速
現代のビジネス環境は、市場動向や顧客ニーズが急速に変化しており、そのスピードは日々加速しています。
このような環境下で企業が競争優位性を維持するためには、リアルタイムに市場の動向を把握し、顧客ニーズを理解することが求められます。
テクノロジーを用いて大量のデータを収集・分析することで、市場の変化を即座に察知し、それに応じた戦略を立てることが可能となります。このようにデータドリブン経営は、現代の変化の激しい市場で企業が生き残るための重要な戦略となっています。
(3)デジタル技術の進化
デジタル技術の進化もデータドリブン経営が求められる背景の1つです。
AIや機械学習、ビッグデータ解析などの先進技術が普及し、大量のデータを高速に処理し、深い洞察を得ることが可能になりました。これにより、経営判断を直感や経験に頼るのではなく、客観的なデータに基づいて行うことが可能となったのです。
また、IoTの普及により、事業活動から得られるデータの種類と量が飛躍的に増え、これらを活用しない手はないという状況になっています。
このような先進技術の台頭は、それを導入した企業と導入していない企業で生産性の差が開いていくということでもあります。したがって、テクノロジーを基礎としたデータドリブン経営が現代の経営には求められているのです。
3. データドリブン経営のメリット
データドリブン経営には企業の収益性の向上など多くのメリットがあります。顧客ニーズの反映、自社の強みや課題の発見、高速かつ精度の高い意思決定が可能となるからです。これらの詳細について説明します。
【データドリブン経営のメリット】
- 顧客ニーズをより正確にビジネスに反映できる
- 自社の強みや課題を発見できる
- 精度の高いスピーディーな意思決定が可能になる
(1)顧客ニーズをより正確にビジネスに反映できる
データを活用すれば、購買履歴や顧客の行動パターンなどのデータから顧客のニーズを詳細に把握することが可能となります。これにより、顧客が求めている商品やサービスを的確に提供することが可能となり、顧客満足度の向上につながるのです。
また、顧客ニーズの把握は新たなビジネスチャンスの発見にも役立ちます。例えば、顧客のニーズに基づいた新商品の開発や、顧客が求める価値を提供する新サービスの提案などが可能となります。これらは、企業の競争力を向上させ、収益拡大に寄与する重要な要素となります。
(2)自社の強みや課題を発見できる
データに基づいて、自社の状況を客観的に把握することで自社の強みや課題を発見することにもつながります。
具体的なデータに基づく分析によって、感覚や経験だけでは見えてこなかった問題点や、今まで気づかなかった自社の強みを発見できるでしょう。例えば、販売データや顧客の行動データを分析することで、自社の商品やサービスがどのような顧客に受け入れられているのか、どの部分に改善の余地があるのかを具体的に把握する、などが考えられます。
データに基づいて発見した具体的な強みや課題から経営戦略を立案することが可能となり、競争力の向上につながるのです。
(3)精度の高いスピーディーな意思決定が可能になる
データドリブン経営により、精度の高いスピーディーな意思決定が可能になります。直感や経験に頼るのではなく、データに基づいた科学的な判断が可能となるので、意思決定の精度が高まるからです。
また、リアルタイムのデータ分析により、現状の把握と対策の立案をスピーディーに行うことができます。市場の変化に素早く対応し、競争優位性を保つことが可能となるのです。
適切な意思決定が迅速に行えると、新しい需要や市場の変化を見逃さず、新しいビジネスチャンスを掴めるというメリットもあります。
4. データドリブン経営の進め方
データドリブン経営を実現するための具体的な進め方を解説します。やるべきステップは3つあり、データの定義、データの収集・蓄積、そしてデータの分析・意思決定です。
【データドリブン経営の進め方】
- 必要なデータの定義
- データの収集・蓄積
- データの分析・意思決定
(1)必要なデータの定義
最初のステップは必要なデータの定義です。一言に「データ」と言ってもさまざまなものが考えられ、どのようなデータを集めるかによって得られる情報も違います。
データドリブン経営を進める上では、まずは何を目的とし、どのような問いに対して答えを得たいのかを明確にすることが重要です。これにより、どのようなデータが必要であるかを定義します。
データを無闇に収集しても、それが経営に活かせる情報に変わるわけではありません。まず必要なデータを明確に定義することで、目的に対して適切なデータの収集・分析が可能となります。
(2)データの収集・蓄積
次のステップはデータの収集と蓄積です。データを収集し、蓄積するためにはERP(Enterprise Resource Planning)システムを利用するのが良いでしょう。
ERPは、会計、人事給与、販売管理など、企業の経営資源全体を一元管理し、各部門間のデータの共有を容易にするシステムです。データドリブン経営ではデータが一元的に集約されていることが重要で、ERPはその役割を担います。
ERPを活用することで、組織内の異なる部門からのデータを一元化し、経営の視点からの分析や意思決定に活用できるのです。
(3)データの分析・意思決定
データの収集・蓄積が完了したら、次はデータの分析・意思決定のステップに移ります。
ここでは、データを可視化するツールとしてBIツールの活用が有効です。BIツールとは、Business Intelligenceの略で、大量のデータから有用な情報を見つけ出し、ビジネスに活用するためのツールを指します。
これにより、複雑なデータを簡単に理解できる形に変換し、企業の意思決定をサポートします。例えば、売上データ、顧客データ、市場データなどを分析し、新たなビジネスチャンスを見つけたり、問題点を発見したりすることが可能になります。
5. データドリブン経営でBIツールやERPを活用するメリット
データドリブン経営において、BIツールやERPの活用は大きなメリットをもたらします。データの統合や効率的な分析が可能となり、より具体的な意思決定をサポートできるのです。具体的なメリットについては次のセクションで詳しく解説します。
【データドリブン経営でBIツールやERPを活用するメリット】
- 社内に散在しているデータを統合できる
- タイムリーに効率的なデータ分析ができる
(1)社内に散在しているデータを統合できる
BIツールやERPの活用により、様々な部署や部門に散在しているデータを統合して一元的に管理できます。これにより、全社横断の情報の把握がしにくいという問題を解消し、全体のビジネスパフォーマンスを把握することが可能になります。
また、BIツールを使えば、可視化されたデータにも素早くアクセスできるため、企業全体の現状の把握や、それに基づく意思決定がスピーディーに実行可能です。
また、データの統一性を保つことで、データの重複や不整合を防止できるため、分析結果の信頼性も高まります。これらはデータドリブン経営を推進し、企業の競争力を強化するために重要な要素となるのです。
(2)タイムリーに効率的なデータ分析ができる
BIツールを活用すると、データの抽出、整理、分析が自動化されるため、タイムリーに効率的なデータ分析を行うことが可能になります。
多くのBIツールには強力なデータ処理能力と、リアルタイムでのデータ更新機能があります。これにより、最新の情報に基づいた意思決定を迅速に行うことができます。また、これらのツールはグラフィカルなダッシュボードを提供し、複雑なデータでも直感的な把握を可能にします。
この結果、企業は市場の変動に迅速に対応し、競争優位性を維持できます。タイムリーなデータ分析は、ビジネスの機会を逃さず、リスクを早期に察知するという大きなメリットをもたらすのです。
6. データドリブン経営でBIツールやERPを導入する際の注意点
データドリブン経営を実現するためのBIツールやERPの導入には注意が必要です。以下では、そのポイントを詳しく解説します。
【BIツールやERP導入の注意点】
- 導入目的を明確にする
- 分析に必要なデータを蓄積できているか確認する
- 連携できるシステムを確認する
(1)導入目的を明確にする
BIツールやERPの導入は、企業の経営効率向上や意思決定の精度を高めるために有効な手段ですが、導入の目的が不明確だと効果を最大限に引き出せません。
具体的にどのような課題解決を目指すのか、どの業務プロセスを改善したいのかを明確にすることで、必要な機能やデータの種類を決定しやすくなります。
また、目的が明確であれば、導入後の評価基準も明確になり、導入の成果を可視化しやすくなります。したがって、導入前には目的と目標を明確に設定し、それに基づいたプランニングを行うことが重要なのです。
(2)分析に必要なデータを蓄積できているか確認する
BIツールやERPの導入を考える際に重要なことは、分析に必要なデータが正確に蓄積されているかどうかを確認することです。データドリブン経営を実現するためには、意思決定に必要な情報を提供するための正確なデータが必要です。
しかし、データが不完全だったり、欠落していたりすると、分析結果に誤差が生じ、最終的な意思決定に影響を与える可能性があります。また、データの質も重要で、信頼性の低いデータは誤った結論を導き出す原因となります。したがって、導入前には、必要なデータが適切に蓄積され、その質が確保されているかを慎重に確認することが必要です。
(3)連携できるシステムを確認する
データドリブン経営でBIツールやERPを導入する際には、既存のシステムと連携可能かを確認しましょう。
なぜなら、BIツールやERPを導入すると、まず既存システムからデータの取り込みを行う必要があるからです。システム間の連携が確保されていれば、データの一貫性も保たれ、信頼性の高いデータで分析することができます。
逆に、連携が難しいシステムを導入してしまうと、データの取り込みに手間がかかり、生産性が低下してしまう可能性もあります。したがって、導入前には必ずシステムの連携性を確認しましょう。
7. まとめ
データドリブン経営は、企業の意思決定をデータに基づいて行う経営アプローチであり、顧客ニーズの反映や自社の強みの発見、迅速な意思決定を可能にします。その実施には、必要なデータの定義、収集・蓄積、分析というステップが必要です。BIツールやERPの導入は、データドリブン経営に必要なデータ統合や効率的な分析を支援します。データドリブン経営のファーストステップとして、まずはこれらのツールの導入から始めてみてはいかがでしょうか。
データサイエンティスト(https://direct-d.com/)
吉川 大貴
京都大学理学部卒業。京都大学経営管理大学院でMBAを取得。マーケティングリサーチにおいて同MBA最優秀賞を受賞。
外資系事業会社のマーケティング分析部門を経てディレクトデータを立ち上げ、代表CEO就任。
国内大手の飲食チェーンやエンタメ企業などを顧客として、市場調査やデータベース解析に基づくコンサルティング活動に取り組む。中小企業診断士。
関連ページ
関連コラム
- データドリブン経営とは:必要性やメリット・デメリット・成功事例を紹介
- ビジネスインテリジェンス(BI):データ経営やDXを進めるための大きな武器【知っておきたい経営・ビジネス用語解説】
- CDO(Chief Digital Officer):データ活用やDXを推進する役職として注目されるCDO【知っておきたい経営・ビジネス用語解説】
- 【業種別DXの着眼点】卸売業 デジタル店舗、デジタルオペレーション、動態可視化・分析などに注目
- 【業種別DXの着眼点】製造業 内向きと外向きのDXプロジェクトを、複数バランスよく組み合わせること
- 【業種別DXの着眼点】サービス業 3つのアプローチで、他社が模倣できないモデルをつくる
- 【業種別DXの着眼点】小売/金融/不動産業界の着眼点と、異業種間DX成功のポイント