コラム
ワークフローシステム:テレワークで改めて注目される文書の電子化と承認【知っておきたい経営・ビジネス用語解説】
ワークフローシステムとは、電子化された申請書、稟議書などの書類をあらかじめ決められていた決裁ルートに従って配信・承認する仕組みのことです。テレワークをはじめ新しい働き方が求められ、従来の紙文書による承認作業の見直しが進む中、これまで以上に重要度を増しています。
1. ワークフローシステムとは
ワークフローシステムとは、組織で発生する稟議書、経費精算申請書、休暇届などの文書を電子化し、より効率的に閲覧・承認作業ができるようするための仕組みのことです。
従来のように紙文書を直接回覧したりメールで回したりしていると、「どの申請書を使えばよいのかわからない」「次に誰の承認を得ればよいのかわかない」「多忙で承認が滞る」「申請がどこまで回っているかわからない」「書類の整理に時間がかかる」などの弊害が起こります。
ワークフローシステムはこれらの課題を解決し、承認業務のスピードアップ、柔軟なワークスタイルの実現、内部統制の強化、書類紛失の防止など、さまざまなメリットが生まれます。
2. ワークフローシステムをめぐる最近の動き
最近のワークフローの動きには、重要な2つのトピックがあります。ビジネスのデジタル化の一環としての「ペーパーレス化」と、コロナ禍によって急速に定着しつつある「テレワーク」です。
ペーパーレス化
近年ペーパーレスに関わる法整備が進められています。1998年には国税関係の帳簿類などの電子保存を認める電子帳簿保存法が、2004年には商法や税法で保管が義務付けられている文書の電子保存を認めるe-文書法が施行されました。2019年4月施行の働き方改革関連法でも、ペーパーレス化が重要施策になっています。
テレワーク
意図せぬコロナ禍によってテレワークが急速に普及したことが、ワークフロー市場に大きな追い風になっています。出社が抑制され、ウェブ会議が増加することで、従来の押印手続きの実施自体が難しくなり、テレワークの阻害要因と指摘されています。「ハンコ出社」といった言葉が生まれ、押印による申請業務自体への批判が高まりました。
調査会社ITRが2020年4月に調査した「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」の結果※1でも、「社内文書(申請書など)の電子化対象拡大」が、実施中または3ヵ月以内に実施予定(11%)、2020年度内に実施予定(10%)、時期は未定だが実施予定(15%)と喫緊の課題として捉えられています。
3. ワークフローシステムの導入メリット
ここで、ワークフローシステム導入の主なメリットを整理しておきましょう。
業務効率化
ワークフローにおける印刷、検索、回覧を実施する際に、申請内容を定めたフォーマットが用意されるため、ミスや差し戻しが減り、申請に不慣れな人でも進めやすくなります。
承認時間の短縮
承認者は社内でなくても出張先や自宅などでも承認できるため、承認にかかる時間が短縮されます。また、現時点でどこまで承認が進んでいるのかを把握できるようになります。
柔軟なワークスタイルの実現
ワークフローの申請者と承認者がともに、会社に縛られず自宅や出張先でも処理を進められます。ワーケーションなど自由なワークスタイルを実施する際の障害になりがちな手続きから、従業員を解放します。
内部統制強化
ワークフローシステムにより、承認すべき人が不在のため代理承認する、文書を改ざんするといった不正を防止できます。また、複雑な承認フローの場合のミスを抑制し、申請中・申請後の書類の紛失もなくなります。
データの活用
関連する過去の業務データや他システムのデータを連携することで、必要な情報の大部分が自動入力されるなど、データ入力作業を効率化でき、人為的なミスを減らす効果も期待できます。また、蓄積されたデータを分析することで、新たな洞察を得ることも可能になるでしょう。
4. ERPとワークフローシステム
とはいえ、ワークフローシステムにも課題があります。それは、例えば勤怠管理、経費精算、販売管理といったアプリケーションごとに別々のワークフローが存在している、同じ機能なのにプラットフォームが違うことで共通化できない、最終的にERPや基幹システムに入力するため二重入力が発生するといったことです。これを改善するには、ワークフロー機能を共通基盤へ集約することです。
SCSKが自社開発しているERP「ProActive E²」では、社内の多様な申請業務をプログラミングレスで自由に作成できるワークフロー機能を提供しており、社内におけるすべての申請業務を集約し一元管理できます。さまざまな種類の申請画面をパラメータ設定により自動生成できるため、項目、レイアウト、制御のいずれについても、プログラム開発の必要がありません。これにより、申請画面作成の作業工数が通常のアドオン開発に比べて、5分の1に抑えることができます。
ERPを検討する際には、ワークフロー機能にも注目するとよいでしょう。
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