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更新日:2024.11.11
公開日:2021.09.27
経営・ビジネス用語解説

ワークフローシステムとは:導入メリットやERP連携による業務改善の効果を解説

現代のビジネス環境では、業務効率化が不可欠です。しかし、手作業や紙ベースのプロセスは、ミスや遅延を招きやすいという課題があります。こうしたストレスや不便を解消する手段として、ワークフローシステムの導入が注目されています。

この記事では、ワークフローシステムの基本から導入のメリット・デメリット、ERP連携のポイントなどを詳しく解説します。

1. ワークフローとは簡単に言うと「仕事の流れ」のこと

ワークフローとは、仕事における一連の作業や手続き、またそれに伴う承認行為の流れのことを指します。代表的なものには、各種稟議、発注申請や支払依頼といった経理系、名刺発注や入館申請などの総務系、契約審査などの法務系のワークフローなどがあります。

たとえば、人事業務における従業員の育児休暇取得に関連するワークフローを見てみましょう。まず、従業員が育児休暇申請書を作成し、次にその申請書を上司に承認してもらいます。その後、承認された申請書を人事部に提出し、人事部で最終的な処理が行われます。

このように、仕事を行う際に誰が何をどのように行うのか、その一連の流れがワークフローなのです。

【例:育児休暇取得のワークフロー】

1.従業員が育児休暇申請書を作成する
2.上司に承認をもらう
3.人事部に提出する
4.人事部にて処理される

ワークフローをあらかじめ定めておくことで、作業の抜け漏れを防ぎ、効率的に業務を進めることができます。

2. ワークフローシステムとは

ワークフローシステムとは、社内の各種申請・承認手続きを電子化するためのシステムです。

人事給与業務における活用の例

ワークフローシステムを使えば、紙やExcelベースの申請書を電子フォームに置き換え、承認や稟議をオンラインで処理できます。その結果、業務の効率化、ミスの削減、コンプライアンスの強化が期待できるのです。たとえば、紙の申請書を回す際に発生する時間のロスや、手書きによる誤記入のリスクを大幅に低減できます。

また、適切な承認プロセスが遂行され、承認履歴が残るため、内部統制の強化にも有効です。データがデジタル化されることで、検索や分析が容易になり、業務全体のパフォーマンスが向上します。

ワークフローシステムは現代のビジネス環境において非常に重要なツールとなっているのです。

3. ワークフローシステムの導入メリット

ワークフローシステムの導入には、以下のようなメリットがあります。

  • • 申請・承認業務の効率化
  • • 申請ミスに伴う修正・差し戻し回数の削減
  • • 内部統制の強化

ここからは、上記のメリットについて具体的に見ていきましょう。

(1)申請・承認業務の効率化

ワークフローシステムのメリットとして、まず業務の効率化が挙げられます。

電子化とペーパーレス化により、以下のような一連の作業を効率化できるためです。

  • • 申請・承認作業
  • • タスク管理
  • • 履歴管理
  • • 文書作成
  • • データ集計

たとえば代表的なワークフローとしてよく挙げられる「稟議」について議論を深めましょう。従来は、申請書の作成や承認プロセスを紙の稟議書で行っている会社が大半でした。紙ベースのワークフローは、書類の作成に時間がかかり、現在そのフローがどのような状態にあるのか、どこで止まっているのか、なぜ止まっているのかが把握しにくく、フロー全体に時間がかかってしまいがちです。

また、稟議書を紛失してしまったり、破損してしまったりするリスクもあります。さらに、テレワークの社員からの申請や、支店から本店に稟議を上げる場合などには紙を郵送しなければならず、時間がかかってしまう場合もあるでしょう。

その点、電子化されたワークフローシステムであれば、現在承認プロセスがどこまで進んでいるのかが可視化されます。書類作成や承認作業も簡単にでき、リモートからも申請・承認作業ができるためフロー全体のスピードアップに繋がるのです。

(2)申請ミスに伴う修正・差し戻し回数の削減

ワークフローシステムの中には、ミスを削減するためのさまざまな機能が搭載されているものもあります。

たとえば、以下のような機能です。

  • • 自動計算機能
  • • 承認ルール設定機能

まず自動計算機能とは、経費精算や支払依頼などの際に、合計値や税込金額などの計算をシステムが自動で行い、手動での計算ミスを大幅に減らすものです。

さらに、承認ルール設定機能とは、事前に設定した承認フローに従って、自動的に上司や関係者に承認依頼を送信し、承認漏れや不正な手続きを防ぐものです。

これらの機能により、ミスが発生するリスクを大幅に低減できます。結果として、業務の信頼性が向上し、社員のストレスも軽減されるため、全体的な生産性も高まるのです。

(3)内部統制の強化

ワークフローシステムを導入すると、以下のような機能により、内部統制の強化が期待できます。

  • • 監査ログ機能
  • • アクセス権限管理機能

監査ログ機能とは、誰がいつどのような操作を行ったのかを記録する機能で、不正行為を防ぐのに役立ちます。たとえば、重要な書類の改ざんや不正なアクセスがあった場合、その履歴を追跡できるため、問題の早期発見と対策が可能です。

アクセス権限管理機能は、各ユーザーが利用できる機能や閲覧できる情報を適切なレベルに制限する機能です。適切なレベルの情報のみを提供でき、情報漏洩のリスクを減少させられます。

ワークフローシステムに搭載されたこれらの機能を活用することで、コンプライアンスと内部統制の強化を実現可能です。

4. ワークフローシステムの導入デメリット

ワークフローシステムの導入には多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。

  • • 導入コストがかかる
  • • 運用負荷がかかる
  • • 単体のワークフローシステムを複数併用すると運用が複雑になる

(1)導入コストがかかる

導入する際に初期費用とランニングコストがかかることが、ワークフローシステムのデメリットの一つです。

初期費用にはソフトウェアライセンス料、導入コンサルティング料、そしてシステム開発費などが含まれます。

また、システム導入後にもランニング費用が発生します。ランニング費用はシステムの保守管理費や運用費も含まれ、定期的に支払う必要があるものです。さらに、システムのアップデートや機能追加が必要な場合、その都度追加費用が発生することもあります。

これらのコストを考慮し、事前に十分な計画と予算の確保を行うことが重要です。

(2)運用負荷がかかる

ワークフローシステムを導入すると、運用負荷が発生します。

具体的には、以下のような作業が生じます。

  • • システムの設定・変更
  • • ユーザーの管理
  • • トラブル対応

まず、システムの初期設定やカスタマイズは専門知識が必要で、これに時間と手間がかかります。また、業務の要件が変わるたびにシステムの設定を変更する必要があり、その度に新たな調整が求められます。

さらに、ユーザーの増減や役職の変更に伴うアカウント管理も定期的に行わなければなりません。トラブルが発生した場合には、迅速に対応するための体制も整えておく必要があります。

これらの作業は、専任のIT担当者を配置するほか、外部の専門業者に委託することでも対応が可能です。システムの効果を十分に引き出すためにも、事前にしっかりとした計画と準備が必要です。

(3)単体のワークフローシステムを複数併用すると運用が複雑になる

単体のワークフローシステムを複数併用すると、運用が複雑になるデメリットがあります。それぞれのシステムで別々のデータが管理されるため、情報の一元管理が難しくなるからです。

システム間での連携機能が提供されていれば良いですが、連携が難しい場合はデータの整合性を保つため、手動でデータ連携を行わなければなりません。データの規模にもよりますが、通常、手動でのデータ連携はあまり現実的ではない場合が多いです。

さらに、将来的に新たな機能を追加したり、業務を変更したりする場合、複数のシステムを連携させる必要が出てくるでしょう。このようなケースでは、システム間の連携が複雑になり、結果として拡張性や柔軟性が低下する可能性があります。

これらのデメリットを考慮すると、単体のワークフローシステムを複数併用する際には、慎重な計画と管理が求められます。

5. ワークフローシステムはERP連携することで導入効果を最大化できる!

単体のワークフローシステムを複数併用することで生じる運用の複雑さや情報の一元管理の難しさといったデメリットに対して、効果的な解決策の一つとしてERPとの連携が挙げられます。

  • • ERPを導入し、その標準ワークフロー機能を活用する方法
  • • ERPと別のワークフローシステムとを連携させて活用する方法

ERPとワークフローシステムの連携方法と、そのメリットについて詳しく見ていきましょう。

(1)ERPを導入し、その標準ワークフロー機能を活用する方法

ERPは会計、人事、給与、販売管理などの業務プロセスを一つのシステムで統合し、データを一元管理するものです。ERPを導入することで、基幹業務の管理に標準ワークフロー機能を活用できるようになります。

ERPシステム ERPシステム

ERPシステムに備わる標準ワークフロー機能を活用することで得られるメリットとして、以下が挙げられます。

• 業務の見える化

各タスクの進捗状況や担当者が一目で把握でき、ボトルネックの早期発見と改善に繋がります。

• データの一元管理

すべての業務データを一元管理することで、情報共有が円滑になり、意思決定のスピードアップが期待できます。

• 人件費の削減

複数のシステムの二重入力や転記作業など、ルーティンワークにかかる人件費を削減できます。

以上のように、ERPのワークフロー機能を活用することで情報の一貫性を保て、またリアルタイム更新によって最新の情報に基づいた意思決定を行うことができます。

(2)ERPと別のワークフローシステムを連携させて活用する方法

ERPとワークフローシステムを連携することで、単体のワークフローシステムを複数併用する必要がなくなり、導入効果が最大化されます。そのため、手動でのデータ入力や複数システム間のデータ整合性の確保が不要になり、データ連携の自動化を図ることができます。

さらにERPは業務プロセスを統合し、標準化されたプロセスを提供するため、業務効率の改善が見込めます。新しい機能の追加や業務変更にも柔軟に対応できるため、システム間の連携がシンプルになり、拡張性と柔軟性が向上するのです。結果として、企業全体の生産性が向上し、スムーズな業務運営が可能になるでしょう。

また、以下のようなメリットも得られます。

• カスタマイズ

標準的なワークフロー機能だけでなく、外部のシステム特有の処理や承認ルートをカスタマイズすることで、より効率的なプロセスを実現できます。

• 例外処理

標準的なワークフローでは対応できない例外的なケースも考慮し、柔軟な対応ができるよう設計できます。

• 多様なシステムとの連携

CRM、SFA、会計システムなど、さまざまな外部システムとの連携を検討することで、より自社の業務に最適なワークフローを採用できます。

以上のように、ERPのワークフロー機能を活用することで情報の一貫性を保て、またリアルタイム更新によって最新の情報に基づいた意思決定を行うことができます。

6. ワークフローシステムをERP連携で導入するときのポイント

ワークフローシステムをERP連携で導入する際には、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

  • • 自社の業務内容やニーズに合ったシステムかどうか
  • • ワークフローシステムとERPシステムをシームレスかつ正確に連携可能か

まず、業務内容によって必要な機能は異なるため、自社のニーズに合ったシステムを選択する必要があります。

また、システム間の連携がスムーズであれば、業務の効率化や情報の一元管理が実現しやすくなります。特に、ワークフローシステムとERPシステムの間でデータを正確に連携させることは不可欠です。なぜなら、データの不整合が発生すると、業務の混乱やミスの原因となり、そのたびにリカバリーのための手間や時間がかかるためです。

これらのポイントを押さえることで、ワークフローシステムとERPシステムの連携による導入効果を最大化し、業務の効率化や内部統制の強化を図れるでしょう。

7. ワークフローシステムをERP連携した導入事例

実際に、ワークフローシステムをERP連携した事例を紹介します。ほけんの窓口グループ株式会社は、かつてシステムの複雑化や属人化、手作業による負担などの課題を抱えていました。これを解決するためにERPシステム「ProActive」を導入し、会計、販売、購買業務を統合しました。

その結果、業務標準化とマスターデータの自動連携が実現し、以下のような成果が上がっています。

  • • マスター統一による業務標準化
  • • 入力自動化による管理工数の削減
  • • 入力自動化による人的ミスの削減
  • • 管理会計の予実集計の時間が8分の1に短縮

特にマスターの統一による業務標準化の効果が大きく、どの部署でも同じ業務のやり方に統一されたため、会社全体の生産性向上に効果があったとのことです。

参考:導入事例|ほけんの窓口グループ株式会社

8. まとめ

ワークフローシステムの導入は、業務の効率化やミスの削減、内部統制の強化、データの活用など、多くのメリットをもたらします。しかし、導入コストや運用負荷、複数システムの併用による複雑さといったデメリットも存在します。

これらの課題を克服し、導入効果を最大化するためには、ERPとの連携が効果的です。ERP連携により、システム全体の統合管理が可能となり、業務の一元化やデータの一貫性が保たれるため、さらなる効率化が期待できます。ワークフローシステムの導入を検討する際は、これらのポイントを踏まえて、最適なソリューションを選びましょう。

井領 明広

井領 明広

早稲田大学 商学部卒。NTTデータイントラマート、freee株式会社を経て2017年つづく株式会社を創業。官公庁・行政・企業に対しデジタル戦略の助言、クラウドサービスの導入支援を行う。富山県 DX・働き方改革推進副補佐官。会社経営をしながら、現在は株式会社kickflowにてクラウドワークフローシステムのパートナーセールスにも従事。

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