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2022.09.28
人事労務トピックス

【2023年4月施行】法定割増賃金率の引き上げについて、社労士が解説

働き方改革の一環となる時間外労働の上限規制に伴う法定割増賃金率の引き上げが、2023年4月から中小企業にも適用拡大されます。

今回は、法定割増賃金のあらまし、改正の変更点、企業の対応について、人事労務のエキスパートとして様々なサービスを全国に展開する小林労務が解説します。

1. 法定割増賃金率の引き上げとは

法定割増賃金率とは、労働基準法37条で定められた時間外労働や休日労働、深夜労働をさせた場合に、通常の賃金よりも割増した賃金を従業員に支払う際の割増率のことを言います。

労働基準法が2019年4月施行の働き方改革関連法の一環で改正され、時間外労働の上限規制が設けられました。これは、1947年に制定されてから、時間外労働時間に上限を設けていなかった労働基準法にとって大きな改正となります。

時間外労働時間の上限規制に併せて、1か月に60時間を超える時間外労働に50%の割増賃金率が適用されました。この時間外労働時間の上限規制に伴う割増率50%への引き上げは、企業に大きな影響を与えるため、大企業のみ適用されていました。中小企業への適用は実情も踏まえたうえで猶予されていましたが、2023年4月1日から中小企業にも1か月60時間を超える時間外労働への50%の割増率が適用される事になっています。

2. 2023年4月の改正での変更点

前述したように2023年4月より中小企業への60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が25%から50%に引き上げられます。

例えば、改正後における割増賃金率の計算方法は以下の通りとなります。

【ある会社員の例】

【ある会社員の例】

① 60時間以下の時間外労働に対する賃金(割増率25%)
1時間当たりの単価:240,000円÷160時間=1,500円
1,500円×60時間×1.25=112,500円
② 60時間を超える時間外労働に対する賃金(割増率50%)
1時間当たりの単価:1,500円
1,500円×9時間×1.5=20,250円
③ 休日労働に対する賃金(割増率35%)
1時間当たりの単価:1,500円
1,500円×5時間×1.35=10,125円

このように計算し、合計で142,875円が割増賃金として支払われます。

また、深夜労働が月60時間を超える時間外労働だった場合には、60時間を超えた時の割増率50%と深夜労働に対する割増率25%を合わせた割増賃金率75%の支払が必要となります。単に時間外労働の時間だけでなく、その時間外労働がいつ発生したのかも管理していかなければなりません。

3. 企業に求められる対応

月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引き上げに伴い、企業側にも残業代の計算方法の変更だけでなく、労働環境の整備が求められています。その一つとして、有給休暇を付与する「代替休暇」を設けることが可能となりました。代替休暇とは、引き上げ部分の割増賃金の代わりに有給休暇(代替休暇)を付与することを言います。
代替休暇の時間数については、以下のように算出ができます。

代替休暇の時間数=(1か月の法定時間外労働-60時間)×換算率

※換算率とは、代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率(50%以上)から、代替休暇を取得した際に支払うこととされている割増賃金率(25%以上)を除いた率を言います。

【ある会社員の例】

【ある会社員の例】

① 60時間を超える時間外労働時間
76時間-60時間=16時間
② 換算率
50%-25%=25%
③ 代替休暇の時間数
16時間×25%=4時間

この従業員は、60時間を超える時間外労働時間に係る割増賃金の支給がない代わりに、4時間の代替休暇を取得できます。

代替休暇の制度を導入する際には、労使協定を結ぶことが必要となり、代替休暇の取得については、労働者の意思により決定されるもので、義務付けるものではありません。また、代替休暇は、一定の時間を1日または半日の単位として付与する必要があることから、労使協定に代替休暇を付与できる期間を設けるなど、注意が必要です。

時間外労働時間の上限規制や60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ、上記のように代替休暇が取得可能になった事によって、労働時間の正確な管理は重要になります。リモートワークなど出社をしないことで管理者が労働状況を把握できないケースでは、労働者自身の自己申告により管理をします。実際の労働時間と申告した労働時間に著しい乖離が発生しないよう自己申告をする際のガイドラインの作成や、働き方改革関連法に準拠した管理機能がある勤怠システムの導入などを検討するとよいでしょう。

4. おわりに

これからの企業は従業員の適正な労働時間の把握や、不要な労働時間の削減を目的とした業務の見直しなど効率化に取り組み、必要に応じて就業規則の改定、労使協定の締結について確認が必要です。2023年に向け、ワークライフバランスの取れた労働環境を目指していきましょう。

株式会社小林労務 上村 美由紀氏

株式会社小林労務(https://www.kobayashiroumu.jp/
代表取締役社長 特定社会保険労務士
上村 美由紀

2006年 社会保険労務士登録
2014年 代表取締役社長就任
電子申請を取り入れることにより、業務効率化・残業時間削減を実現。
2014年に、東京ワークライフバランス認定企業の長時間労働削減取組部門に認定される。
社労士ベンダーとして、電子申請を推進していくことを使命としている。

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