コラム
電子申請システムの導入事例について、社労士が解説
2020年4月から特定の法人で始まった電子申請の義務化ですが、その対象の範囲は今後拡大が予想されます。この記事では、毎月10,000件以上の電子申請を行っている“社労士ベンダー”小林労務が、「電子申請」に関連する状況を交えながら、既に導入した企業の声をご紹介します。
1. 今後、義務化対象の拡大が予想される電子申請システム
政府全体で⾏政⼿続コスト(⾏政⼿続に要する事業者の作業時間)を削減するため、電⼦申請の利⽤促進を図っています。当該取組の一環として、2020年4月1日より特定の法人の事業所が社会保険・労働保険に関する一部の手続きについて、電子申請の利用が義務化されました。
義務化の要件に該当しない事業所についても、今後は電子申請への移行を範囲拡大し、今後全ての事業所及び手続きについてオンライン化が加速すると考えられます。
しかし、それまで紙媒体等で届出を行っている企業には、電子申請システムの新たな導入はハードルが高い印象が持たれているのか、未だ電子申請の普及率は2割程度と全体的に低い傾向があります。(※図1:「電子申請普及率」)
2. 電子申請システムの導入事例
既に電子申請システムを導入した企業から3社をピックアップし、導入前後でどのような変化があったか、その一部をご紹介します。
1. 株式会社小林労務の場合(従業員数30名)
弊社では、アウトソーシングをはじめとする人事労務に関するサービスを提供しております。より良いサービスは、職場内においてもより良い職場環境づくりを行うことから生まれると考えます。働きやすい職場を目指す弊社では、社内の環境改善の一環として、2013年より残業ゼロの取組みを実施しています。
生産性を向上させるため、社会保険労働保険手続を従来の紙申請から電子申請に切り替えました。それにより、前年に比べて残業は85%削減されたにもかかわらず、売上は20%増(2014年度実績)を達成しております。(※図2:「生産性向上と残業ゼロ」株式会社小林労務2014年度実績)
これにより2014年度東京ワークライフバランス長時間労働削減取組部門の認定企業にも選ばれ、導入後のメリットを大きく感じています。
図2:「生産性向上と残業ゼロ」株式会社小林労務2014年度実績
2. B社の場合(社会保険労務士法人、従業員数10名)
以前までは、紙の申請で手続きの申請を行っていました。紙の場合、手書きにかかる時間だけではなく、届け出から受付までの移動時間や待ち時間などが発生し、効率的とは言い難い状況でした。
電子申請システム(「e-asy電子申請.com」)を導入したことにより、様々な点で効率化に成功したと感じています。単純な時間数でいうと、50%カットくらい業務時間を短縮できました。また、ペーパーレス化できたことで、紙の削減だけではなく手続きの情報を一元管理できた点も便利です。
3. C社の場合(グループ法人シェアード会社、従業員数20,000名)
以前までは、雇用保険や労災保険などの手続きは社会保険労務士に委託していましたが、電子申請システム(「e-asy電子申請.com」)を導入したことにより、作業の内製化に成功しました。
社会保険労務士への委託には、書類をまとめる、資料を作成して依頼するなどの作業に追われていましたが、そういった煩雑な作業が必要なくなった上に、業務の効率化も実現できました。
3. オンライン化が加速される行政サービス
毎年発行される「行政手続等の棚卸結果等の概要(総務省 内閣官房IT総合戦略室 発行)」においても、下記の様に記されています。
法令等に基づく手続は年間24億件を超えますが、オンラインで実施できる手続は件数ベースで77%です。また、オンラインで実施できる手続のうち、実際にオンラインで実施された手続は件数ベースで60%です。
この内容からも、これまで紙を媒体とした手続きから、オンライン化やペーパーレスといった方法へ移行に向かっていることが伺えます。
システムの整備には、情報セキュリティの確認や電子申請に必要な電子証明書の取得、個人情報の取扱い規定の策定など、準備する項目は多岐にわたります。
組織の規模によっては、導入決定後から準備までに数ヶ月以上かかることもあります。できるだけ早く準備を心がけると、メイン業務への支障なくスムーズに導入が可能となりますので、この機会に一度お考え頂くことをおすすめいたします。
株式会社小林労務(https://www.kobayashiroumu.jp/)
代表取締役社長 特定社会保険労務士
上村 美由紀
2006年 社会保険労務士登録
2014年 代表取締役社長就任
電子申請を取り入れることにより、業務効率化・残業時間削減を実現。
2014年に、東京ワークライフバランス認定企業の長時間労働削減取組部門に認定される。
社労士ベンダーとして、電子申請を推進していくことを使命としている。
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