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2024.12.23
人事労務トピックス

健康保険証の電子化について、社労士が解説

2024年12月2日より、従来の健康保険証の発行が廃止され、新たにマイナンバーカードを健康保険証として利用するマイナ保険証へ本格的に移行されます。
政府や医療機関・薬局、保険者が一体となって国民にマイナ保険証の利用を促しているものの、2024年9月時点でその利用率は2割未満に留まっています。マイナンバーカードを保有していない人が多いだけでなく、保有していても従来の健康保険証を利用する人が多数を占めているのが現状です。
今回の記事では、人事労務のエキスパートとして様々なサービスを全国に展開する小林労務が、マイナ保険証について解説します。

1. マイナンバーカードの健康保険証利用とは

2024年12月2日より健康保険証が廃止され、マイナ保険証による医療機関等の受診を基本とした仕組みに変わることになりました。
マイナ保険証で受診をすることで、これまでの診療情報をマイナ保険証1枚で共有できるようになり、重複検査や重複投薬のリスクを下げることができるほか、就職や転職に伴う保険証の更新が不要になる等、多くのメリットがあります。

なお、マイナンバーカードを持っていればすぐにマイナ保険証として利用できるものではなく、マイナ保険証として利用できるようにするための登録を行う必要があります。
マイナンバーカードを取得している場合は、以下の方法で利用登録をすることができます。

  • 医療機関窓口のカードリーダー
  • セブン銀行ATM
  • マイナポータル

2. マイナ保険証移行へのスケジュール

マイナ保険証に移行した直後に従来の健康保険証が使えなくなると、マイナンバーカードを取得していない人は保険適用が受けられなくなる可能性があります。そのような事態を防ぐため、従来の健康保険証は2025年12月1日まで使用可能とされ、経過措置が設けられています。

マイナンバーカードを持っていない人やマイナ保険証としての利用登録をしていない人は、代わりとして資格確認書の交付がされることになっています。「資格確認書」という名前から、紙の書類のようなものをイメージしやすいですが、加入している健康保険組合によって例外は考えられるものの、実際は従来の健康保険証と同じようなプラスチック製のカードとして発行されることが多いようです。
しかしながら、資格確認書を利用して受診をする場合はマイナ保険証のようなメリットを受けることはできません。

新しく入社される人については、2024年12月2日以降に資格取得届などにより本人から申請があった場合に、事業所を通じて本人に発行されることになります。
新しくなった資格取得届の書式には、マイナ保険証を利用できない人に向けた「資格確認書の発行を希望する」旨のチェックボックスが新しく追加されています。

扶養異動届など他の保険証の発行が伴う届出書式においても同様の改定がなされています。
資格確認書の発行が必要な場合、資格取得届や扶養異動届の提出時にその旨を申請しなかった場合でも、自動的に資格確認書は発行されます。しかし、できるだけ届出の段階で資格確認書が必要かどうかを確認しておくことが望ましいでしょう。
また、従来の健康保険書とは異なり資格確認書についてはマイナ保険証の代替としての機能を持つことから、2025年12月1日以降であっても引き続き使用することができます。

3. マイナ保険証移行による人事労務担当者にとってのメリットについて

入社時に、人事・労務担当者が健康保険資格の取得手続きを実施し、日本年金機構に「資格取得届」等が到着してから約3~5営業日で協会けんぽにおいて登録が完了し、情報が反映された後に従業員はマイナ保険証を利用できるようになります。
また、退社時は健康保険証の回収・紛失などへの対応や、限度額適用認定証の交付、高額療養費の手続きも必要ありません。これらの手続きや従業員への案内がなくなるため、担当者の工数が削減され、業務を効率化できます。
従来の健康保険証とマイナ保険証のどちらも、入社時に労務担当者が健康保険の資格取得届を提出することで保険証が利用できるようになるという流れに変更はありません。
しかし新しいマイナ保険証の場合は協会けんぽや健康保険組合から健康保険証が郵送されるという行程を省略できるため、保険証が利用できるまでの時間を短縮できます。
また、退社時においても健康保険証の回収、紛失などへの対応や、限度額適用認定証の交付、高額療養費の手続きなど、従来の健康保険証で必要だった実務の一部をする必要がなくなるため、業務の効率化につながると予想されます。

4. 健康保険証廃止(マイナ保険証統一)による主な業務フローの変更点

マイナ保険証へ移行するにあたり、労務担当者は制度について理解するとともに、これから入社する従業員にはもちろん、すでに在籍している社員に対しても説明ができるようにしておく必要があります。具体的には以下の変更点を押さえておくとよいでしょう。

(1)新入社員への周知

新入社員が入社する場合、事前に以下の項目を確認し、必要な手続きを案内することが求められます。

  • • マイナンバーカードを持っているか
  • • マイナンバーカードを持っている場合は、マイナ保険証として利用できる状態であるか

マイナンバーカードを持っていない場合は資格確認書の発行が必要です。また、所持していても利用登録が済んでいない場合は手続きが必要となります。従業員には、利用登録の手続き方法を案内してください。

(2)資格確認書の管理

資格確認書を利用していた従業員が、マイナンバーカードの交付を受けマイナ保険証を利用可能になった場合、労務担当者は資格確認書を回収する必要があります。また、資格確認書には有効期限があるため、更新時には新しい資格確認書を従業員に交付してください。
マイナンバーカードを取得したことにより資格確認書が不要になった場合は、労務担当者が保険者(協会けんぽ及び健康保険組合)に返却する必要があるのに対し、有効期限が満了したことにより使用ができなくなった資格確認書は被保険者自身で破棄しても問題ないことになっています。
このように、ケースによって取り扱いが異なることや、従来の健康保険証と違い資格確認書については持っている従業員と持っていない従業員がいるため、管理が複雑化することが予想されます。

(3)被保険者資格の確認

従業員の医療保険の資格情報はマイナポータルから確認することができ、また、PDFで保存することもできます。また、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録している方には、加入している保険者からご自身の医療保険の資格情報を通知するお知らせが送付されます。
オンライン資格確認の義務化対象外施設を受診する場合や、何らかの事情でマイナンバーカードでの利用ができないなどの場合においては、こうしたマイナポータルの画面(ダウンロードしたPDF媒体を含む)や資格情報のお知らせをマイナンバーカードとともに提示することで医療機関・薬局の職員の方々が資格確認することができます。

(4)手続きにおける変更点の確認

前述のとおり、マイナ保険証移行後から資格確認書の発行要否についての申請が必要となったため、届出書類には新しいチェックボックスが追加されています。

(5)マイナ保険証移行に伴う変更点についての周知

マイナ保険証に移行されたことによる変更点を従業員に周知しましょう。

  • • 高額な医療費が発生する場合でもマイナ保険証の場合は従業員自身で医療費を自己負担したり、役所で限度額適用認定証の書類申請手続きをする必要がなくなること
  • • マイナポータルから受診履歴を確認できるため、領収書を保管することなく医療費控除申請の手続きができること
  • • 転職をした場合でも同じ保険証を引き続き利用できること

5. まとめ

マイナ保険証の普及が今日までなかなか進まなかった原因として、マイナ保険証のメリットが日常生活の中では実感しづらい部分があると考えています。
高額療養費など実際には利用する機会が少なそうなメリットもあるものの、医療費控除の申請が簡略化されることや保険証発行までの時間が短縮されることは従業員にとって便利であることは間違いありません。
他方で労務担当者からの視点では従業員の周知や手続きにおける変更点の確認など、対応が必要になる部分が多いため、情報収集をしっかりと行う必要があるでしょう。

株式会社小林労務 上村 美由紀氏

株式会社小林労務(https://www.kobayashiroumu.jp/
代表取締役社長 特定社会保険労務士
上村 美由紀

2006年 社会保険労務士登録
2014年 代表取締役社長就任
電子申請を取り入れることにより、業務効率化・残業時間削減を実現。
2014年に、東京ワークライフバランス認定企業の長時間労働削減取組部門に認定される。
社労士ベンダーとして、電子申請を推進していくことを使命としている。

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